2010年10月8日金曜日

中国、新南群島にも進出

◆膨張国家 中国の怨念6

   中国が武力占拠している南シナ海の島々の一つに新南群島があります。別名南沙諸島(なんさしょとう)、スプラトリー諸島ともいい、南シナ海に浮かぶ約100の小さな島々からなっています。フィリピンから最も近く、ベトナム、カリマンタン島(マレーシア、ブルネイ)からほぼ等距離にあります。諸島全体は大変小さな島々で構成され、互いの距離は十数キロメートルから数十キロメートル程度で位置しています。一般の人が普通に居住できる環境ではなく、島そのものにはほとんど価値がありませんが、海洋・海底資源が見込めることから周辺各国が領有権を主張、分割占領の形が続いています。


   もともと仏領インドシナとしてインドシナ半島を植民地としていたフランスが1930年からいくつかの島々を実効支配していましたが、白人の進出を嫌った日本が1938年に領有を宣言し、以降太平洋戦争終結まで支配していました。行政区分は台湾の高雄市の一部としていました。日本はリン鉱石を採取、同諸島初の産業となり従事者が住んでいましたが戦火の拡大により昭和20年までに撤退しました。

   終戦後、連合国は日本に領有権放棄を強制。1951年のサンフランシスコ講和条約で日本はやむなく放棄を認めてしまいます。しかし、連合国側は帰属先を明確にしなかったため、同諸島にもっとも近いにフィリピンがそれに先立ち1949年、領有を宣言しました。これに対し1956年以降、南ベトナムがたびたび上陸。南ベトナム政府が1973年9月に同国フォクトイ省への編入を宣言しました。ところが1500キロも離れている中華人民共和国が翌年1月に抗議声明を出して領有権を主張。相次いで軍を上陸させるなど実効支配に乗り出し、現在、中華民国(台湾)、中華人民共和国(中国)、フィリピン、ベトナム、マレーシアが諸島を分割占領しています。実効支配はしていないもののブルネイも領有権を主張しています。

   問題は無人島だったこれらの島々を領有するのはどこが最も正当か、ということです。フィリピン、ベトナム、カリマンタンの遭難漁民が一時的に島に上陸したことは間違いありません。距離的にはフィリピンが約300キロと最も近く、ベトナム、カリマンタンは約500キロに存在します。台湾は日本の領土だったことから権利を主張する資格があるように見えますが、もともと同諸島を開発したのは日本人で、便宜的に高雄市の行政区分に入れたのに過ぎません。中国にいたっては漁民が漂着したことも無く、本土から約1500キロも離れています。同諸島への実績はなんらないのです。

    中国がこのように無茶ともいえる遠隔地の武力占拠に乗り出したのは1970年代後半に海底油田の存在が確認され、広大な排他的経済水域内の海底資源や漁業権の獲得出来るため、とは各国共通の見方です。また広大な地域に広がる島々は軍事的にも価値があります。紛争を拡大させないため中華人民共和国を含めたASEANでの会議で軍事介入はせず現状維持の取り決めが結ばれましたが、最近中華人民共和国の人民解放軍が建物を勝手に建設し、マレーシアなどから非難を浴びているのが現状です。

   中国の海への野心、海軍力増強とともにますます膨れ上がる気配が濃厚です。

   

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