2010年10月28日木曜日

利用される孔子ブランド

◆膨張国家、中国の怨念 その18

     共産中国が儒教を復活させる第3の理由は「国際社会に対する孔子ブランドの利用」です。孔子が道徳思想上、有名な人物であることは欧米諸国の人もよく知っています。中国共産党としてはこの孔子のイメージを正面に訴えることによって、中国が偉大な国家であることを周知させようとしているのです。

   その具体的行動の現われが世界的な孔子ブランドを活用した孔子学院の設立です。これについては10月14日付けで書きました。日本では2006年2月、愛知大学と中国政府が、「愛知大学孔子学院」を共同で設立、中国の王毅・駐日大使と同大の武田学長が協定書に調印、発足しました。

   孔子学院が実施している主な事業は「学生、社会人に対する中国語教育の提供」「漢語教員養成プログラム」「中国語能力認定試験、中国語教師資格認定試験の実施」「中国語コンテストの実施」などです。共産主義思想や正面切った儒教は教えてないようです。

  この孔子学院とは、中国政府が2004年から世界で数百校設置を目標に進めている国家プロジェクトです。全世界的な中国語教師の育成、中国文化のPRを目的としています。現地の大学などと提携し、現地の中国語学習者を中心に学生を集めています。教師は主に中国から派遣されています。

   中国政府は孔子学院などを利用して今後数年間で海外における中国語学習者を現在の約2500万人から1億人にする計画です。現在、英語が世界公用語的性格を持っていますが、これに替わって中国語を世界公用語としたい狙いがあるようです。

   これらの孔子学院は「孔子」の名を冠しつつも別に孔子の思想について本格的に教えるわけではありません。いわば「孔子」ブランドの利用であり、この世界四大聖人の名を客寄せに利用しているに過ぎないのです。 中国が国際的地位を高めるためには、経済、外交だけでなく、中国語の普及が欠かせません。中国政府は中国語を英語に匹敵する、あるいはそれに替わる国際言語にする目標を打ち出しています。

   このプロジェクト名を「漢語橋(中国語国際啓蒙)プロジェクト」と言い、中国語の海外普及を打ち出しことで、これを外交戦略とリンクさせています。中国政府内の「国家対外漢語教学指導小組弁公室」という部署がこのプロジェクトを担当しているとのことです。

   一国の言語をこれほど大規模に国家戦略として打ち出している国家は歴史上、中国しかありません。次世代にアメリカに変わる超巨大国樹立を中国が目指していることは識者の共通した見方です。
 
   かつて中国は文革期に「批林批孔」と称して徹底的に孔子と儒教を弾圧しましたが、孔子学院の開設に見られるように今や儒教に対するアレルギーは消え去り、この伝統倫理を自らの外交戦略や体制維持に利用することをもくろんでいることはまちがいありません。

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