2010年10月26日火曜日

儒教、中華圏の旗印に

◆膨張国家、中国の怨念 その17


   10月21日付で中国が儒教復活に踏み切った第2の理由として「中華圏統合の旗印にする」を挙げました。中国は明、清時代、海禁といって漢民族が国外に出るのを禁じていましたが、中華民国成立とともに漢民族の海外渡航を黙認しました。清末期から中国は戦乱が続き、多くの国民は海外に生活の糧を求めるしか、生存の場所はなかったのです。また政治的弾圧から国外移住を余儀なくされた人々もありました。その行き先はインドネシアなど東アジアの国々だけでなく北米、ヨーロッパ、インド、アフリカとほぼ全世界に及んでいます。

   戦前から日本にもたくさんきて主に物売り業に従事、横浜や神戸には中華街ができたのは皆様もご存知の通りです。移住漢民族のことを華僑といい、中国福建省・アモイ大学南洋研究院の調査によると、2009年時点で中国と台湾以外に住む華人・華僑の総数は4530万人、うち3200万人余りが東南アジアに集中しているそうです。

   一口に4530万人といいますが、これはヨーロッパではドイツ、イギリス、フランスなどなどの一国に相当する人口で、おびただしい数といえます。特にシンガポールでは住民の76.7%が華僑で、本来の地元住民はマレー系の14%しかいません。これ以外はインド系が7.9%、その他が1.4%です。いわば華僑が一国を乗っ取たわけで、漢民族の膨張するエネルギーを感じさせます。

   もちろんこれは華僑が悪いのでなく、戦前、苦力(クーリー・肉体労働者)として英国が漢人を呼び寄せ、働かせたのが原因です。隣国のマレーシアでは国民の25%が華僑で、経済力が強いため、商工業は事実上、華僑が支配しているといわれます。米国には約300万人が居住し、華僑の方が日本人より高い地位を築いているそうです。同国では議会に対する華僑のロビー活動も活発で、人口の1・5%前後に過ぎないものの国政への影響力は大きいとみられます。


   中国人はもちろん香港・台湾にも住んでおり、中国政府がこれら世界の華僑・華人を自国に有利な存在にしたい、と思うのは当然です。そのために中国本土が儒教を大切にしている、という姿をみせ、その影響力を増大させたい、と考えるのは当たり前でしょう。なかでも華僑人口比率の高い東南アジアを中華圏と位置づけ、これへの影響力、なかんずく中華圏統合の旗印、シンボルとして儒教を活用するのは国家政策として十分うなずけます。しかし共産主義と儒教をどう統合していくのか、その統合した姿をこれらの国々にどう理解してもらうのか、疑問は限りなく残ります。

        明日27日は水曜日のため、お休みとさせていただきます。

                  合掌  清雅坊

0 件のコメント:

コメントを投稿