2010年10月11日月曜日

近代化をおこたった清、明

◆膨張国家、中国の怨念 その9

   共産中国がいかに中華思想、華夷秩序、冊封体制に犯されているか、検証してみたいと思います。中国では北の野蛮国を北狄(ほくてき)、東の野蛮国を東夷(とうい)、西の野蛮国を西戎(せいじゅう)、南の野蛮国を南蛮(なんばん)と呼びます。現在の北狄はロシア、モンゴル、東夷は日本、韓国、西戎はアフガニスタン、パキスタン、イラン、イラクです。そして南蛮は欧米各国とインド、アフリカ諸国。中国からみて東にあるアメリカや西にあるヨーロッパの国々が南蛮なのは、かつて南からそれらの諸国が艦隊、商船をもって中国に来航してきたからなのです。

   現在、科学技術を中心にした現代文明では南蛮諸国に中国が大きく劣っていることは中国人自身も認めています。だからこそ近代化に全力を注ぎ、核兵器、大陸間弾道弾、有人衛星を開発してきました。世界初のリニアモーターカーを敷設したのも中国です。しかし対外的に声高く叫ぶことはないけれども中国が世界の中心であることは中国人はかたくなに信じています。それは中国人が主張する中国文明が5000年の歴史を保有するからなのです。5000年の歴史を持つ国はほかにはありません。世界四大文明といわれる国々、地域で文化が断絶することなく連綿と続いているのは中国のみだ、という自信があるからなのです。

   エジプト、チグリス・ユーフラテス、インドの各文明は途中で滅んでしまいました。ギリシャやローマの文明はより新しいものです。中国のみが連綿として文化を伝えている、と主張するわけです。共産中国は霊的なものは認めていませんが、「天」は中国の上に存在している、と確信しているのです。人類文明の継承者は中国だと信じているのです。

   近代に入って列強諸国にやられてしまったのは「清が悪いからだ」と考えます。中国の基本的支配民族は漢民族ですが、近世においては満州人(女真人)がつくった清王朝が中国を統治していました。この清が近代化をおこたり、中国を滅亡の危機においやった、と問題点をすりかえるのです。たしかに清は日本をはじめとする列強諸国に連戦連敗で、漢民族が政権を奪い、中華民国を成立させました。

   しかし清の統治理念は清が滅ぼした明によるものでした。明は漢民族による国家です。清は当初は八旗制という騎馬遊牧民族独特の統治・社会・軍事制度を持っていましたが、多数を占める漢民族の中で生活するうちに次第に独自性が薄れ漢民族の生活、思考様式に染まっていきました。近代化をおこたったのは漢民族の思考様式そのものだったのです。明の思考様式は儒教、なかんずく朱子学によるものでした。近代化への拒否姿勢は明、清に通じたものなのです。

  では儒教、朱子学がなぜ近代化の妨げになったのでしょう。

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