2010年10月25日月曜日

共産党を脅かす儒教

◆膨張国家、中国の怨念 その16

では中国はこの儒教化によって真の道徳を取り戻せるでしょうか。結論からいうと「否」です。中国は具体的事実は何も発表していませんが、儒教の取り入れ決定は1978年の第11期3中全会、と研究者はみています。それから約30年。中国の腐敗、汚職はますます進行しています。共同通信が流した新華社電によりますと、中国共産党規律検査委員会と監察省は、2009年1~11月に規律違反や違法行為などで処分を受けた党員や政府の官僚らが計10万6626人に上ったことを明らかにしました。このなかには政策銀行、国家開発銀行の王益元副行長(副頭取)や朱志剛元財政次官、黄松有元最高人民法院副院長(最高裁副長官)ら汚職事件に絡んだ高官の処分も相次ぎ、件数でみると1万3858件に上る贈収賄事件を摘発したことになります。

   これを日本に置き換えると人口比から日本なら、10,000人が捕まっているという、恐ろしい数字になります。しかもこれは表面化した事件だけで、実際は国民のほとんどが何らかの形で汚職、腐敗に関与しているのではないか(赤ちゃんも受益者という形で腐敗利益配分にあずかっている)という見方をする人もいます。終戦直後の日本国民すべてが闇物資に関与していた、という事実を思い出します。ちなみに闇物資に手を出さなかった判事は餓死しました。

   しかも財政担当の次官、最高裁副長官、国家を代表する銀行の副頭取というそれぞれの組織のナンバー2が捕まっているのですから、とんでもない話です。特に最高裁副長官は国民を裁く裁判官のナンバー2ですからその影響力は計り知れないはずです。中国通にこのことを話しましたら「中国国民は最高裁副長官がつかまっても当たり前と思っており、ショックはないはずだ」と語っていました。私にはその方がショックでした。

   儒教を復活させても儒教には絶対者がいないため国民の道徳基盤確立にはつながらないのです。儒教は逆に中国共産党の存在基盤さえ脅かす可能性さえあります。孔子の後継者で儒教を大成した孟子は「民を尊しと為し、社稷(国家)がこれに次ぎ、君を軽しと為す」 と説いています。この言葉は中国の現状政治に対する批判そのものといえましょう。徳治政治を理想とし、「覇道」を卑しめた孟子の思想は中国によるチベット、モンゴル占領や中国の外交戦略に対する痛烈な批判になるでしょう。

   人の上に立つ者は徳を備えていなければならならず、君子は自らの持つ徳によって民の見本となり、民はそれに習う事によって政治が行われるとする儒教の徳治主義は、そっくりそのまま中国の現状と共産党や官僚組織の腐敗と悪政に跳ね返ってくる可能性があります。中国地方都市で広がっている反日デモがいつ反政府デモに変わるのか、中国共産党も気が気でないでしょう。儒教の復活は結果的に中国共産党を窮地に追い込む可能性があります。

0 件のコメント:

コメントを投稿