2010年5月20日木曜日

世界2位の緑被率

 ◆自然循環型文明が日本を守る

 縄文人が豊かな自然循環型文明を築いて戦争を知らない平穏な心で暮らしていたころ、ユーラシア大陸では自然収奪型文明が進行、常に森を食いつぶすことで、階級社会を築いていきました。四大古代文明の地はほとんど砂漠化・荒地化しました。中世、近世も森つぶしは進行しました。ギリシアを訪れたことがありますが、どこを見ても禿げ山です。イタリアも禿げ山だらけです。イギリスの国土を覆っていた森は16~18世紀にほとんど消滅し、現在の森は19世紀以降、人間によって植えられたものです。ドイツの有名な「黒い森」も、現在は集落や果樹園に挟まれて存在するだけになりました。

 アメリカの森は17世紀以降の移民によって切り開かれ、綿、トウモロコシ、タバコなどの大規模栽培に取って代わられました。花粉分析によりますと、アメリカの大森林が1620年から1920年までのわずか300年間にほとんど破壊つくされたました。それはまた森の民、インディアンの滅びを招いたのです。よく西部劇映画ではインディアンが砂漠を馬で駆け抜ける場面が出てきますが、あれは白人が森を破壊し、砂漠に追いやられた実情を示すものです。。

 日本では縄文末期、稲作を受け入れてからも、森との共生の努力が続けられました。神道は縄文まで遡る、といわれていますが神社にはかならず鎮守の森がもうけられ、また森を食いつぶす家畜の数はきびしく抑えられてきました。古代、日本に入ってきた羊は森を破壊することから結局受け入れられず、今、日本にいる羊は明治以降、導入されたものです。森を美しく保つことで、栄養分が川から海に流れ、漁獲を安定させるという「魚付き保安林」が今も厳格に守られています。

 現在でも、日本の緑被率(森林が国土に占める割合)は67%と、フィンランドの69%に続いて世界第2位です。この狭い国土で、世界有数の人口密度と工業生産を維持しながら、なおもこれだけの森を残していることは、縄文時代からの共生と循環の思想が、今なお我々の精神の基底にあるからとしか考 えられません。

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