2010年5月24日月曜日

縄文火焔土器

◆ほとばしる命

 縄文土器の素晴らしさを前回、お伝えしましたが、特に土偶は豊穣と多産を祈る人型(ひとがた)の意味もあったと思います。私個人の感覚ではその遮光器土偶 (しゃこうきどぐう)をも上回るすさまじいエネルギーを持った土器があります。あの有名な縄文火焔土器(かえんどき)です。これは縄文時代中期を代表する縄文土器の一種で、燃え上がる炎を 象ったかのような形状の器です。著作権の問題とまだこのブログに写真をのせる技術を持っていないので皆様に紹介することが出来ないのが残念ですが、深鉢の縁から燃え上がるような火炎が立ち上り見る人の心に衝撃を与えます。私は焼き物が好きでこれまで日展、院展クラスの展覧会を数多く訪問しましたが、縄文火炎土器を上回る迫力を持った作品にまだ出会っていません。現代作家は確かに繊細で優美な陶芸を我々に見せてはくれますが、あの天をも焦がす勢いのエネルギーを噴出させた陶磁器はとても、作り出せないでしょう。縄文人がなぜこのような土器を作り出したのかは謎ですが、縄文人の生へのほとばしる情念が背後にあったことは確かです。

 縄文中期のこのような装飾は時には容器としての実用性からかけ離れるまでに発達しました。この特徴は、日本周辺の土器にはみられない特徴で、世界でも珍しいといえます。たぶん神へのお供えではなかったかと思われます。縄文土器は当時、世界最先端の芸術作品だったのでしょう。王権が確立した世界四大文明ではこのような奔放な作品はとても生まれません。
 現代人は社会規範に縛られて、ある意味では生きる力を失っていますが、ありがたいことに時にはそれを解放しても許される時代に我々は住んでいます。命を燃焼させる場を見つけなければなりません。

0 件のコメント:

コメントを投稿