2010年5月22日土曜日

遮光器土偶

 ◆土器、女性原理の象徴
 世界最古の土器を開発した縄文人(または縄文人の祖先)はその後も土器製作に磨きをかけます。最初は縄文土器の基本形である深鉢から始まりました。深鉢は量的にも多く、特に縄文前半の時期は深鉢以外の器形は希でした。しかし、中ごろから淺鉢のような器形が現れ、続いて注口付き、香炉形、高杯、壺形、皿形など様々な形が現れます。特にに東北地方晩期は器形の変化が多様で、縄文人の土器への思い入れをうかがわせます。

 作り方は窯を使わず平らな地面あるいは凹地の中で、やや低温(600℃~800℃)で焼成しました。赤褐色系で、比較的軟質。やや厚手で大型のものが多いのですが、用途や時期によっては薄手、小形品、精巧品も作られています。狩や材木加工に使い男性原理の象徴と考えられている石器に対して、食料の保存加工に用いる土器は女性原理に属するものであると考えられており、信仰に関わる土製品には代表的な土偶のほか、土器片を再利用して人形状土製品や鏃状土製品、土製円盤、土器片錘などが作られました。

 特に遮光器土偶 (しゃこうきどぐう)は有名で、目にあたる部分が北方民族のイヌイットが雪中行動する際に着用する遮光器のような形をしていることからこの名称がつけられました。古代人が遮光器を付けた姿の表現ではなく、目の誇大表現と考えられています。さらに大きな臀部、乳、太ももと女性をかたどっていることが特徴です。このような土偶は世界的にも存在せず、縄文人の感性の豊かさを表すものといえましょう。

 普通の人間の形を逸脱した極めて特徴的な形態から、ロシア人科学者などから宇宙服を着用した宇宙人の姿をなぞったものであるという説「古代宇宙飛行士説」が出されています。また地元研究者からは東北地方で広く信仰されたアラハバキ神であるという説が唱えられ、考古学ファンの中からは古代シュメールの女神イシュタル説を提唱する人もいます。いずれにしても奇想天外なその姿型を創造することができた縄文の人々の感性の豊かさが指摘されるでしょう。

出土場所は青森県 岩手県、宮城県と東北各地に広がっており、1集落単位の狭い文化でなく、普遍性を持った存在だと考えれてています。

 <お断り>23日は大阪出張のため連載は休ませていただきます。

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