2010年8月31日火曜日

空自の能力にも限界

  ◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その17

  戦闘機による原発防護は効果があるのでしょうか。日本は現在、主力戦闘機のF15を約200機運用しています。これ以外に数は減りつつありますが、F2が約90機、F4も約90機あります。いずれも空対空ミサイルを装備でき、巡航ミサイルに十分、対抗できます。また「バルカン」20mm機関砲を搭載、ミサイルを撃ちつくした後は、この機関砲で玄武、天竜ミサイルを迎撃できます。

  問題はその数なのです。いずれの機も空対空、空対艦、爆弾、補助燃料タンクなどを積むことができますが、積載能力に限界があるため何と何をどう組み合わせるかはその時の状況によります。巡航ミサイル対策を優先させ対空ミサイルを4発搭載した場合、撃墜できるのは最大限4発。あとバルカン砲で何発撃墜できるか、です。

  全機出動させても380機。でも護衛艦の記事で述べたとおり、補給、整備、訓練などがあり、非常時は訓練を中止しても同時に発進させられるのは100-200機でしょう(これには各条件が重なりなんともいえません)。1機当たり仮に3発撃墜できるとして150機出撃で450発撃墜。

  これは理想的条件での話で、各戦闘機が巡航ミサイルをキャッチできた場合のみです。何回も申し上げますが、玄武、天竜ミサイルは海面、地表すれすれを飛びます。地球が球形なため各レーダー基地からみて水平線以下はミサイルをキャッチできません。おまけに内陸部に巡航ミサイルが入り込むと谷沿いに飛びますからレーダー波では把握できません。有効距離の短い戦闘機のレーダーでは索敵作業がかなり困難です。またルックダウン・シュートダウン能力といって下方低空の目標を探知・攻撃する能力が低い戦闘機もいまだにあるとみられます。

  これらの問題を解決するのが早期警戒管制機です。1万数千メートルの高空から飛行機としては巨大なレーダーで空中を監視、迎撃を指示する飛行機です。これを日本海、太平洋、対馬海峡に飛ばし、韓国領や太平洋を監視すれば玄武、天竜発射は一目瞭然で、対応を各部隊に指示できます。ところが航空自衛隊が持っているのはわずか4機。主に北朝鮮対策に使われていますから、とても余裕がありません。しかも補給、整備、訓練が必要ですから実質常時使えるのは1機。3方面にはとても使えません。韓国が原子力発電所1個所に向け数百発の玄武、天竜巡航ミサイルを同時、あるいは連続発射したら日本側はこれを完全阻止することはできないのです。1発でも原発に命中すれば半径200-300キロは死の国になりますから、その韓国よりの発射予告通告だけで日本は即時降伏です。

  ではこの危機を防ぐにはどうしたらよいか、それは日本が敵地攻撃能力を持つことなのです。
  

2010年8月30日月曜日

護衛艦を原発沖に

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その16

   次に護衛艦を各原子力発電所沖に貼り付ける作戦を説明しましょう。前回、述べたとおり、原発を防護できる対空ミサイル積載護衛艦はスタンダードミサイルを積んだ23隻前後です。これに対し原子力発電所は休止中を含めて19個所あります。しかも護衛艦の運用は補給などの必要があり、最大限でも15隻程度しか稼動できないことは前回、お話しました。そうすると4隻分、不足することになります。

   さらに護衛艦を巡航ミサイル潜水艦対策に相当数が割くとなると原発防護は数個所にとどまってしまいます。おまけにミサイルが陸地から来ると迎撃不能になる可能性が強いのです。地対地巡航ミサイルは地形照合システムで飛来します。谷間伝いに来られるとミサイルキャッチがかなり困難になります。

   たとえば中国電力の島根原子力発電所を例に取ります。同原発は松江市鹿島町片句にあります。島根半島の日本海側で、反対側には宍道湖が広がっています。私が韓国玄武ミサイルの指揮官だったら次のような作戦を立てます。島根原発の西側約22㌔には航空自衛隊高尾山分屯基地があり第7警戒隊が配置されています。いわゆるレーダー基地で日本海や中国地方1円の上空を監視しています。

   一方、島根原発西南西約200キロの見島には航空自衛隊見島分屯基地(山口県萩市見島)があり第17警戒隊が配置されています。ここもレーダー基地です。日本海側から攻撃すれば当然、両警戒隊に発見され、迎撃を受ける可能性があります。ところが両警戒隊の中間には中国地方最大の河川、江の川が日本海に流れ込んでいます。地球が丸いことからレーダーは約30キロ先からは水平線下は見えません。江の川河口は両警戒隊からはそれぞれ約110キロ離れており、巡航ミサイルは海面すれすれに飛びますから発見されることはありません。ただ高尾山レーダー基地は海抜328メートルの高地にあり、その分だけ監視距離は伸びます。

   さて韓国指揮官としては海面すれすれに玄武ミサイイルを飛ばし、島根県江津市で江の川河口に飛び込みます。うまくいけばレーダーには発見されません。あとは江の川に沿って広島県三次市に入ります。ここで左折、谷間を走るJR芸備線沿いに飛び、国道54号線から宍道湖に入ります。ここが一番危険なところで、高尾山レーダー基地に補足されてしまいます。レーダー基地では当然、沖合いの護衛艦に情報を伝えます。巡航ミサイルはさらに佐陀川に入ってレーダーから逃れ、一気に島根半島の尾根を越えて島根原発を襲います。尾根越えから島根原発までわずか0.5秒。どうあっても護衛艦のスタンダードミサイルは間に合いません。高尾山レーダーが宍道湖上で発見してからでも命中までわずか18秒。高尾山から情報を得ても護衛艦としては玄武の予想進路を割り出すのは困難です。おまけにスタンダードミサイルは艦が出すレーダー波が目標(玄武)に当たり、その反射波をスタンダードがキャッチしてその方向に飛ぶ、という仕組みになっています。わずか0・5秒では対応の仕様がありません。

 ただ最新のスタンダードは命中する直前にレーダー波を受ければいい仕組みになっており、護衛艦側で進路のコントロールを十分にできれば、あるいは迎撃が可能かもしれません。いずれにしても陸地側から来られれば原発防御は至難の業です。特に一度に100発もの玄武が飛来すれば護衛艦はたちまち弾切れとなり対応のしようがありません。

 このように護衛艦による原発防御には限界があります。では戦闘機ではどうでしょう。

2010年8月29日日曜日

きょうもお休みにさせてください

29日は繁忙となりそうです。原稿はお休みにさせてください。
 
合掌   清雅坊

2010年8月28日土曜日

お休みにさせてください

社会活動をいろいろしていると必ず揉め事に遭遇します。今夜もそれで遅くなり、たった今、帰宅しました。原稿を書く時間がありません。本日はお休みにしてください。

   合掌   清雅坊

2010年8月27日金曜日

非現実的な艦隊1列作戦

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その15


   韓国の巡航ミサイルに対し自衛隊はもう少し抵抗能力を持っていることを示唆しました。実際にはどの程度、抵抗能力を持っているのか、実戦で役に立つのか調べてみたいと思います。巡航ミサイルを撃墜する能力を持つのはこれまで述べてきた陸空自衛隊の対空ミサイルのほか、護衛艦のスタンダードミサイル、戦闘機のF15、F4、F2があります。今回は護衛艦について考えてみたいと思います。

   護衛艦による原子力発電所防御の考え方は2つあります。巡航ミサイルが飛来する日本海や対馬海峡にづらり1列に護衛艦を並べる方法。もう一つは原発の沖合いに1-2席の護衛艦を配置してミサイルを撃墜する方法です。まず護衛艦の能力ですが、護衛艦の持っている対空ミサイルは個艦防御用のシースパローと艦隊防御用のスタンダードミサイルです。シースパローは自艦に向かってくる航空機やミサイルを撃墜するもので、射程は26 km程度。韓国の巡航ミサイルが自艦の真上を通過するならともかく、原発攻撃ミサイルはとても迎撃できません。

   スタンダードミサイルは射程約40~80キロで足が長く他艦に飛来した航空機やミサイルを打ち落とす能力を持っています。護衛艦隊48隻のうち23隻程度がこのミサイルを所持、あるいは搭載可能と推測されます。

  さて護衛艦の運用ですが、通常①実戦配備②半実戦半訓練配備③教育・訓練④ぎ装、補給、修理―の4サイクルを交代で回しています。非常時には教育・訓練を省いて実戦に回せますが、そのスタイルは長く続けられません。

  横1列に日本海、対馬海峡に護衛艦15隻並べると配備するとして、1隻当たりの平均守備距離を90キロとするなら、総延長は1350キロ。これでは西端を済州島沖に置くと能登半島沖で切れてしまいます。これでは迂回コースで自由に日本列島に侵入できます。また韓国は最新鋭の対艦ミサイイルを装備していますから、単艦防御になる護衛艦を1-2隻沈めておいてその隙間から巡航ミサイイルを侵入させることができます。

   実はこの1列配備は非現実的なのです。韓国は巡航ミサイル潜水艦を3隻以上所持しています。同艦に積む巡航ミサイル天竜は射程距離1300キロもあります。海上自衛隊としてはまず対潜作戦に全力で取り組まなくてはなりません。とても横1列作戦に回せる隻数がないのです。

2010年8月26日木曜日

資料紹介とさせていただきます

本日は私にとって重大事が発生、帰宅が午後11時を回りました。とても本稿を執筆する余裕がありません。残念ながら資料紹介とさせてください。

  前掲分を除くここまでの主な参考資料

サイト モリアーチー教授の雑学講座

航空ファン各号 文林堂

サイト さるさる日記

世界の傑作機各号 文林堂

東亜日報日本語電子版

 「シベリア先住民の歴史」 ジェームス・フォーシス著 彩流社

「日本とロシア」 高野明著 紀伊国屋書店

「「ロシアの風」 中村喜和著 風行社

サイト ロシア人のシベリア征服 出羽 弘

2010年8月24日火曜日

たった500発で国土壊滅

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その14


   韓国が巡航ミサイル玄武、天竜を実戦配置したことにより、対日関係において最終決定権を握ったことは皆様、ご理解願えたと思います。これに対抗するには敵地攻撃能力を自衛隊が持たねばならぬこと、それを認める国民の合意、政府の意思決定が必要なことがお分かりになったと思います。これまでの論拠を整理してみますと

  ①韓国民の反日感情は日本人が考えるよりはるかに悪く、韓国政府は毎年のようにアメリカ政府に対し、日本を仮想敵国とするよう求めています。国民もその70%が「1度は日本と戦争すべきだ」と考えています。

  ②そのため韓国政府は対日攻撃用の巡航ミサイル玄武(射程距離1500キロ、1000キロ)、天竜(同1300キロ)を実戦配備、核爆弾装備と同じ効果がある原子力発電所攻撃を準備しています。

  ③それに対し日本側は原発防護の対空手段を一切こうじておらず、対空ミサイル配備の用地さえ確保していません。

  ④仮に陸空自衛隊が手持ちの全対空ミサイルを原発19個所に分散配置出来たとしても、1原発当たりの迎撃能力は20-50発程度(異論は相当あると思います)で、韓国が100発も打ち込めば原発は炉心爆発を起こし半径200-300キロは全滅します。

  ⑤日本を滅亡させるには列島沿いに5個所の原子力発電所を攻撃すれば済みます。1個所だけでも日本は分断され、あとの被害を恐れ降伏するでしょう。

  ⑥茫然自失した日本政府は、韓国が原発攻撃を通告した瞬間に降伏します。

  ⑦日本としての対応策は敵地攻撃に踏み切るしかありません、そのためには国民の合意、政府の決断が必要です。

   以上です。日本国家としてどうすればいいか、皆様もお分かりになったと思います。日本政府の不甲斐無さに落ち込む人もいるかもしれません。次回は実際には自衛隊はもう少し抵抗能力を持っていることをお話し、多少、救いがあるかもしれぬことを明らかにします。


  <お断り>あす25日水曜日は激務で出稿できません。お休みとさせてください。

                                      合掌  清雅坊

2010年8月23日月曜日

韓国全体の気分は反日

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その13


   中央日報の記事は日本人には読みづらく、意味の分からぬ所もあったと思います。記事のうち核の傘については韓国国内の問題であり、考えに入れなくていいと思います。要は韓米定例安保協議会で韓国が米国に対し日本を仮想敵国として扱え、と要求していることなのです。平和ボケした今の日本人は仮想敵国といってもピンとこないでしょうが、交戦国に準ずる国ということで、将来、交戦国となる可能性が高い国、ということなのです。いわば敵国扱いせよ、ということなのです。

   要求を受けた米国側が「一つの価値もないとし断った」ことは今の日米関係から見て、当然のことなのです。ところが日本側はこの重大事について韓国に対し何ら抗議することもなく、事情説明を求めることもありませんでした。毎年繰り返されていることとして気安に構えていることなのか、問題の重要性を認識していないことなのか、腫れ物にさわることとしてあえて問題にしなかったのか、理由は分かりません。日本のマスコミもなぜかこの問題を報道しようとする気構えはありませんでした。

   これが逆の立場だったらどうでしょう。日米安保の協議会で日本側が米国に対し韓国を仮想敵国としろ、と要求したら韓国政府は国交断絶をちらつかせながら、日本に厳重抗議するでしょう。また韓国民も即時開戦、九州占領を叫ぶ反日グループが日本大使館を包囲するでしょう。それほど問題は大きいのです。

   問題の大きさから答弁した大使も「こうした問題が提起されていたとは考えていない」としており、否定も肯定もしない立場を貫いています。韓国政府でさえこんなありさまですから、民衆はもっと反日的です。韓国のマスコミが「一度は日本と戦争したいか」とアンケート調査をしたところ、国民の70%が日本と戦争したい」と答えたそうです。ただ韓国を弁護するなら李 明博大統領が2008年に就任して以来、日本仮想敵国論があまり表面化していません。ありがたいことと思います。でも韓国は状況がそろえば対日開戦する気構えがあることを十分認識、原子力発電所防御の体制作りを一刻も早く整えねばならないと考えるのですが、皆様のご意見をお聞かせください。

2010年8月22日日曜日

日本を仮想敵国に

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その12

   韓国の巡航ミサイル玄武・天竜による日本の原発攻撃を防ぐには日本が敵地攻撃能力とその意思を持つことーと問題解決の処方を示しました。これに対し「韓国が日本に敵対するわけはない」と多くの読者の皆様が考えている、と推測しています。これが日本人の常識的な見方でしょう。

   ところが韓国は毎年のように韓米定例安保協議会(SCM)で、韓国政府が米国政府の『核の傘』提供の削除を求めると共に、日本を『仮想敵国』と表現することを求めています。これはなぜか日本のマスコミはほとんど報道していません。一口で言うと韓国はアメリカに対して日本を仮想敵国としろ、というものです。これに対しアメリカは毎年、一笑に付しているようですが度重なる要求に米国内の反日派議員は心をとめている人もあるようです。そんなことはあり得ない、と考える人のために少し古いですが2006年10月18日の韓国・中央日報日本語電子版の記事を書き写します。このようなことが毎年、繰り返し行われていることに注目ください。少し冗長になりますが我慢ください。

韓国、昨年SCMで米国に「日本を仮想敵国に」要請

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=80903&servcode=200§code=200

 「昨年10月に開かれた韓米定例安保協議会(SCM)で、韓国政府が米国政府の『核の傘』提供の削除を求めると共に、日本を『仮想敵国』と表現することを求めていた」との主張が出ている。

17日に行なわれた駐米大使館に対する国政監査で、無所属の鄭夢準議員が指摘したもの。鄭議員は「韓国政府がそのように主張したが、米国が拒否したと聞いている」と付け加えた。また「韓国政府内にこうした考えを持つ人がいることが心配だ」と指摘している。質疑を終えた鄭議員は「どこで同情報を得たのか」という記者の質問には答えず「そういう発言があったから、調べれば確認できるだろう」と述べるにとどまった。

また、米日同盟などを考えれば韓国政府がこうした意見を出せるだろうかという質問には、「核の傘提供」の削除要請も通常なら考えられないのではないかと反論。続いて鄭議員は「韓半島有事の際に米軍の後方支援を行なえるよう日本が関連法律をまとめており、韓国は支援を受けることになるにもかかわらず、韓国政府内にこうした考え方の人がいるのは非常に心配だ」と語った。

  一方、鄭議員の質問に対し答弁に立った李泰植(イ・テシク)大使は、こうした問題が提起されていたとは考えていないと応えた。だがワシントンの外交消息筋は「鄭議員の話が正しい」と述べた。同筋は「鄭議員はこの日、昨年SCMに深くかかわっていた米国側の人物からそうした話を聞いただろう」とし「当時韓国代表団が、北東アジアにおいて日本の潜在的脅威が大きいとの点を強調し『仮想敵国』に触れると、米国側は一考の価値もないとし断った」と伝えた。

李相逸(イ・サンイル)特派員

2006.10.18 16:53:54

2010年8月21日土曜日

敵地攻撃しても占領はしない

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その11


  韓国の巡航ミサイル玄武、天竜を防ぐには日本が敵地攻撃能力を持つしかない、ということがお分かりになりましたでしょうか。しかし現実には日本はその能力を持っていません。その能力は2つに分けて考えられます。一つは国の意思として敵地攻撃を認めること。もう一つは航空機の爆撃能力や巡航ミサイルを持ち、技術的に周辺国に対し対応能力を持つことです。

  技術的な面は予算さえつけばそれほど難しくはありません。問題は国家意思で専守防衛を捨て必要に応じて敵地攻撃もありうる、とい体制をつくることです。これは憲法解釈問題も出てきますし、新たな法制化も必要かもしれません。場合によっては憲法改正も必要でしょう。

  突破口は「事実上の核攻撃(原発攻撃)を防ぐため敵地攻撃はするが、占領はしない」という前提で国民を説得することです。現憲法では交戦権は認めていないものの、侵略があった場合の国家防衛は認めています。韓国に限らず周辺諸国が特定の原子力発電所に的を絞り100発単位のミサイルを撃ち込めば日本は崩壊してしまうわけですから、それを防ぐために敵地攻撃は憲法上許される、と見るのが一つの憲法解釈です。ただその場合、交戦権は認めていない訳で、敵地占領は出来ぬ、と考えられます。

  専守防衛の考え方は「防衛はするが敵地を占領せぬ」ということですから、敵地攻撃は「積極的な専守防衛」とも考えられます。また憲法学者によっては憲法改正が必要、と指摘する向きもありましょう。それはそれで当然です。憲法解釈で敵地攻撃能力を認めるか、憲法改正で普通の国のように交戦権を認めるか、与党の意思に関わります。

  現在の日本の平和は自衛隊の寄与する部分はわずかで、米軍駐留によるもの、というのが現実ですから、そのアメリカが政策変更すればひとたまりもありません。現に中国の経済力増強に合わせ対中政策が過去に比べ融和的になっています。

   韓国にとって原子力発電所1箇所に100発単位の巡航ミサイルを集中させる、といことはいとたやすいことです。最初に申し上げました通り、巡航ミサイルというものは安価に製造できます。弾道ミサイルやジェット戦闘機に比べれば想像出来るでしょう。100発で日本は降伏するのですからこんな効率的な兵器はありません。しかも「核武装した」と他国から非難されることもありません。日本の一刻も早い政策変更を望みたいものです。

2010年8月20日金曜日

敵地攻撃能力の所持

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その10


  宿題となっていました韓国巡航ミサイル群から日本を守る方法、見つかりましたでしょうか。そうです。日本も「普通の国」になれば済むことなのです。韓国が一方的に日本を攻撃する能力を持ち、日本は韓国に反撃できないその矛盾を解決することが出来れば、日本は韓国のみならず中国、ロシアなど周辺諸国と対等の立場になれます。


  どういうことかといいますと日本も敵地攻撃能力を持つことなのです。韓国が日本の原子力発電所のどれかに巡航ミサイルの集中攻撃をかけると通告すれば日本は降伏してしまいます。韓国にも原子力発電所が5箇所あります。日本も同じようにすればいいわけです。しかし日本の国防は「専守防衛」が国是、となっています。敵のミサイルが飛んでくれば撃墜できるが、敵のミサイル基地は攻撃できない、というのが専守防衛です。昭和20年代に警察予備隊が発足したとき、この専守防衛が決まりました。現憲法と国防政策を矛盾させないための決まりです。

  アメリカに占領されていた時代はそれで十分でした。まさか連合国の意図を破って日本が他国を攻撃することなどは考えられなかったからです。しかもそのころはミサイルも核も米ソを除いてなかった時代です。時代背景がまったく違っていました。でも現在は人口がわずか2000万人の北朝鮮さえ核、中距離弾道ミサイルを所持する時代です。日本だけが周辺諸国から取り残されました。

  それでも米国が責任持って核の傘で日本を守ってくれる約束を履行するならそれはそれでいいでしょう。しかしソ連の崩壊、中国の大躍進、北朝鮮の核武装と運搬手段の確保という変化の中で、米国はイラクやアフガニスタンといったイスラム諸国との対決にエネルギーを割かれています。米国では内心では「日本の防衛は日本自身でやってくれ」と考えていることは多くの識者が指摘するとおりです。まして普天間基地問題にみられるような反米的とも思われるような民主党の対応では「若いアメリカ人の血を流してまで日本を守る義務はない」との声も出てくるのは当然なのです。

  おまけに日米安全保障条約では「日本はアメリカに基地を貸すが、アメリカは日本防衛の責務は存在しない」ことになっているのです。この結果、「スイング(振る)作戦」といって日本にいる米軍がイラクやアフガニスタンに出兵、日本を空にしている期間が長期存在しています。そのいい例が海兵隊です。海兵隊は日本を基地にして紛争地に随時、出撃しています。日本を守るために海兵隊が存在しているわけではないのです。読者の皆様、日本がどうすればいいのかお分かりになったと思います。

2010年8月19日木曜日

射程1300キロの天竜

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その9

  韓国海軍が所持していて日本からあまり注目されていない兵器、それは韓国産の艦対地巡航ミサイル天竜(チョンリョン)のことです。天竜は従来、射程500キロ以上と伝えられ、主として北朝鮮対策の艦対地ミサイルと思われてきたのです。ところが韓国国防省関係者は今年7月、韓国マスコミの取材に対し「玄武3Cはすでに海軍艦艇に配備された射程距離1300キロの天竜を改造したもの」とし「誤差範囲は3メートル以内で正確だ」と説明したそうです。

  玄武3C(射程1500キロ)はこれまで玄武3B(射程1000キロ)の発展型と思われてきました。記者も過去の取材からそう思っていました。ところが艦対地ミサイル天竜は射程500キロ以上というその「以上」は実は1300キロもある長射程巡航ミサイルだと分かったのです。軍関係者が兵器の能力を過小に評価してみせるのは防諜上、日常茶飯事です。それにしても500キロと1300キロでは大違いです。対日作戦用の意図が込められていたことから実際の射程距離を秘密にしていた可能性があります。

  それと同時に天竜の基になったのが米軍のトマホークです。トマホークは各種ありますが、主力は射程1500-2000キロクラスです。500キロクラスを少しづつ改造して1300㌔にしたのなら納得できます。少なくとも3隻以上の駆逐艦に搭載されています。

  この天竜を地対地巡航ミサイルに改造、射程を延ばすのは技術的にそれほど大きな困難はなかったはずです。さらに注目されるのは天竜が潜水艦発射型の潜対地巡航ミサイルにも改良されていることです。2007年以降、投入された3隻の3000トン級巡航ミサイル潜水艦にも配備されていることは確実です。同潜水艦のミサイル発射方法が浮上型か水中発射型かは不明ですが、韓国の技術から見て水中発射型の可能性が高く、周辺諸国は対策に苦慮しそうです。

  この2種類の天竜で日本は大変な苦境に立たされたのです。水上発射型は射程が1300キロもあることから、洋上に出なくても軍港内から容易に日本の全原発が狙えます。洋上でしたら日本の潜水艦や水上艦艇に制約を受けますが、港内でしたら対空ミサイルに守られ安全です。

  潜水艦発射型では例えば三陸沖はるかに潜水待機、必要に応じて天竜を発射します。日本の防空は日本海中心で、早期空中警戒機は4機とも北朝鮮ノドン対策に張り付いていますから、太平洋はがら空きです。三陸沖はるかで発射された天竜は海面すれすれを飛び、航空自衛隊警戒群(地上設置型レーダー)に補足されたときには既に内陸近くに達しています。日本がジェット戦闘機などの迎撃をかけ、対空ミサイル群に指令しても間に合わぬ可能性があるのです。

  何より怖いのが原発1基に的を絞り、玄武B・C、天竜艦対地、天竜潜対地の全てで集中攻撃をかければ日本側はたちまち「弾切れ」となり原発は完全破壊、半径200-300キロは死の国になってしまうことです。韓国側が対日決定権を握ってしまったのです。あなたならこの事態をどう切り抜けますか。

2010年8月18日水曜日

1箇所に集中発射ですべて終了

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その
8

  原子力発電所を韓国・玄武ミサイルから防護するにはパトリオット、03式誘導弾、81式短距離地対空誘導弾(短SAM)、改良ホーク、L-90高射機関砲などを原発に配備すればある程度、有効との話をしました。「ではそれで行こう」と読者の皆様が結論付けられては困るのです。問題は玄武の攻撃方法にあるのです。原発が破壊され炉心爆発でも起こせば半径200-300キロは無人地帯になることは何回もお話しました。韓国が玄武ミサイルで武装することによって核兵器を持ったと同じ効果があるのです。核兵器に比べ玄武は安上がりの兵器です。玄武を何千発も消費しても核武装するよりはるかに低廉なのです。

  1射撃単位(空自パトリオットは1高射隊、陸自03誘導弾は1特科中隊=対空戦闘の最低単位)は20-48基のミサイル発射機を装備しているといわれていますが、仮に韓国が防備の薄そうな原発1基に狙いを定め、たった100発の玄武を打ち込んだら日本側はお手上げです。原発に配備された1射撃単位の全誘導弾を撃ち、全弾が玄武に命中し、高射機関砲で何発が打ち落としたとしても、少なくとも40発以上の玄武が原発に命中します。当然、炉心爆発を起こし、仮に若狭湾の美浜原発なら京阪神、中京は被爆、全滅します。韓国は別に何千発もの玄武を必要としません。1箇所の原発に100発も集中さえすれば日本は降伏します。別に発射しなくても攻撃するぞ、と脅すだけで日本は降伏するでしょう。それだけの威力を玄武は持っているのです。
   
  日本側は数少ない対空ミサイル部隊を19箇所の原子力発電所(休止中を含む)に分散しなければならない(しかもその計画さえありません)のに、韓国側は1箇所だけに玄武を集中発射すれば済むのです。韓国側にとってこんな簡単な攻撃方法はないでしょう。

  それだけではありません。日本の関係者は誰も注目しませんが。韓国海軍はとてつもない対日攻撃能力を持っているのです。玄武と合わせ日本を攻撃すれば日本列島を壊滅させることは、いとたやすいのです。明日は韓国海軍の秘密兵器(実際は公表兵器、関心を持たれていないだけ)を明らかにします。ご注目ください。

2010年8月17日火曜日

自動的迎撃態勢が必要

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その7


  敵ミサイルが襲来した場合、米軍の例ですと1目標に対し2発の迎撃ミサイルを発射しています。湾岸戦争での撃墜率は50―70%。1射撃単位で同一目標に対しこれ以上にたくさんの迎撃ミサイルを発射しても有効なのかどうなのか、レーダー能力、電算能力などが複雑にからみあい、実体は明らかにされていません。ただ日本の場合、1射撃単位で20-48基のミサイル発射機を持っているともいわれ、複数目標に対しは効果的に対処できることは間違いありません。


   これらの対空ミサイルで撃ち漏らした後をカバーするのが81式短距離地対空誘導弾(短SAM 略称 ショートアロー)、改良ホークという2種類の対空誘導弾、それに高射機関砲のL-90です。それぞれの性能、配備状況はインターネットで検索していただければすぐ出ますので、ここではくどくど述べませんが、いずれにしても師団防空などでなく原子力発電所に複数配備して万全を期すのが当然でしょう。あとはこれらの配備を原子力発電所にするかどうか、政治的決断にかかっています。


  また航空自衛隊のジェット戦闘機、海上自衛隊の艦艇もそれなりに有効に玄武ミサイルをたたくことは出来ます。問題は国全体の迎撃決断なのです。たとえば早期警戒管制機などで韓国が玄武ミサイルを発射したことをキャッチした場合、迎撃態勢をいかに早く作動させるか、なのです。北朝鮮の不審船が能登沖に出現したさい、官邸に情報が伝わったのは半日後、との説があります。これでは迎撃命令が間に合うはずもありません。仮に玄武が静岡県の浜岡原発に発射された場合、15分もあれば命中するでしょう。命中すれば関東は無人の地となります。当然、政府も機能しなくなります。最高指揮官の決済を得るのでなく、自動的に迎撃する態勢を確立することが大切なのです。政府の危機管理に対する意識の改善を求めたいものです。

2010年8月16日月曜日

1原発1射撃単位の用地確保

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その6

  国内19原子力発電所(休止中を含む)を韓国・玄武巡航ミサイルから守るにはどうしたら良いでしょうか。読者の皆様も気が付かれたと思いますが、全原発に対空ミサイル配備用地を確保し、いざという時は陸空自衛隊の対空ミサイルを移動、配備すれば問題は相当数解決します。特にレーダー車両を配備する場所は高台でないといけません。素人の悲しさ、レーダー車両とミサイル発射車両とどの程度、離して置けるものか分かりませんが、各原発単位に自衛隊の要求する場所にきちんと空き地を確保すべきなのです。

 出来得れば宿舎も確保、長期配置ができるようにし、さらに北朝鮮コマンド部隊対策として普通科部隊を配備できれば理想的です。さて部隊の配備間隔ですが、陸自の03式中距離滞空誘導弾の射程距離は約50キロ、空自のパトリオットは15-35キロです。パトリオットの射程距離が短いのは弾道ミサイル対策があるためです。若狭湾にある敦賀、美浜など5原発を除いて原発間の距離は数百キロありますから、原発1カ所について最低1射撃単位の配備を必要でしょう。若狭湾についても相互防衛の見地から1原発1射撃単位の配置が不可欠といえます。

  対空ミサイル配置となれば地元では必ず反対運動が起きます。これを乗り越えて用地確保をしなければなりませんが、必要に応じて収用法適用くらいの思い切った対応も必要となってきます。反対運動をしようとしている人が被爆者にならぬためにも説得活動が必要です。忘れてならないのが取り付け道路の建設。射撃単位には大型トレーラー級の車両も含まれます。それらの車両が不自由なく通行できる県道クラスの道が必要です。

  中国電力の島根原子力発電所を例にとりますと、発電所西側の松江市片句の漁港と発電所間の尾根。または片句から佐陀本郷にかけての県道37号線の北側か南側に適地があります。いいことには37号線はほぼ島根半島の尾根筋にあり、眺望がよく効くことです。レーダー設置にはもってこいといえます。37号線は一部1車線のところもあり、往復2車線の拡幅が必要です。沿道は山林で単価的には安く、韓国にも近いことから早期の整備が必要でしょう。

2010年8月15日日曜日

対空ミサイル配置の用地なし

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その5

 射撃単位として空自のパトリオットは24個、陸自の03誘導弾は32個、併せて56個射撃単位が整備されつつある、と前回書きました。それに対し防衛すべき原発は55基あります。1基1射撃単位を配備すれば数は合うのでは、と考えがちですが、実情は大きく違います。原子力発電所には通常、複数の原子炉があり、柏崎刈羽原子力発電所のように7基も持っているところもあります。原子力発電所としての総数は18箇所で、休止中も含めると19箇所あります。休止中のところも原子炉内には放射性物質が入っているので、当然、防御すべきなのです。要は56射撃単位で19箇所の原子力発電所が完璧に守れるか、なのです。1箇所でも失敗すると半径200―300キロは人が住めなくなります。

  さてその射撃単位なのですが、現時点で原子力発電所防御のために配置されているのは1個もありません。首都機能、主要都市防御として配置されており、公式文書には明らかにされていませんが、米軍機能を守るための配置もあるようです。官僚脱皮・政治優先を掲げる民主党政権の国防部門(果たしてそのような組織があるのかどうか疑わしいくらい)では、漏れ承るところによると、対空誘導弾による原発防備の思想はまったくないようです。このあたりのことについて情報をお持ちの方は是非、ご連絡ください。

   繰り返しになりますが韓国の玄武ミサイルは非核弾頭なので命中してもその施設を破壊することだけに留まります。たとえ首相官邸が攻撃されても官邸が破壊されるだけでそれ以上の影響力はありません。しかし原発が攻撃を受けると核攻撃を受けたと同じ惨状になり、炉心そのものが核分裂を起こせば近くの都市は消滅、2―300キロ圏は無人地帯になるでしょう。首都機能防護より原発防護がなにより優先されるべき課題なのです。しかし民主党政権ではそのことを議論した様子もありません。

  幸いなことに陸空とも射撃単位は移動式です。昨年の北朝鮮ミサイル発射実験のさいはパトリオットが船で秋田県に運ばれ発射態勢に入ったことは記憶に新しいことです。非常時には射撃単位を原発に貼り付ければ相当効果がありそうです。記者はこれまで国内18原発のうち島根原発など7原発を視察、見学しました。しかし射撃単位を収容できそうな空き地を所持している原発はありませんでした。射撃単位は発射台トレーラーなど10数両の大型車両で構成されています。さらに発射の時は燃焼ガスが広範囲に噴出されます。どう考えても小学校の校庭の数倍程度の空き地が必要です。秋田県にパトリオットが展開したときも自衛隊の基地(演習地?)内に収容されました。

  またレーダー車両は見晴らしの良い所に配置しないと、地形に沿い地表面すれすれに飛ぶ玄武ミサイルをキャッチすることはできません。各原発にそれらの用地が確保されていることは疑わしいものです。非常時になってあわてて原発近くの松林を伐採するようではとても間に合いません。どうすればいいのでしょうか?

2010年8月14日土曜日

56個しかない射撃単位

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その4


   自衛隊の能力で果したて玄武3B、3Cへの対応能力はあるのでしょうか。自衛隊員の個々の能力、組織力は高いと思われますが、平和ボケした自民党、民主党政権下で絶対数を削減された姿が垣間見えます。巡航ミサイルに直接対処できるのは航空自衛隊のパトリオットミサイル、陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾です。ほかにジェット戦闘機や護衛艦がありますが、これは別途書きます。

   まず空自のパトリオットですが、航空機、大気圏内ミサイルを撃墜するPAC2型と弾道ミサイル相手のPAC3があります。米国の発表では、1990年の湾岸戦争の際のPAC2の迎撃成功率は、イラクからサウジアラビアへ発射されたミサイルに対しては70%、イスラエルへ発射されたミサイルに対しては40%です。PAC3の迎撃率は正式には発表されていませんが、米国の研究者のレポートなどでは、50%とされているそうです。PAC3はまだまだ開発途中の、未完成な兵器なのです。

   パトリオット・ミサイル発射システムはトレーラー移動式のシステムで、1つの射撃単位はパトリオット高射隊(米軍では中隊という)によって運用され、射撃管制車輌、レーダー車輌、アンテナ車輌、情報調整車輌、無線中継車輌、複数のミサイル発射機トレーラー、電源車輌、再装填装置付運搬車輌、整備車輌という10台以上の車両により構成されます。これらの車両が自走して発射拠点に設営後、射撃体勢が整のいます。

   日本では1989年(平成元年)度から航空自衛隊の高射部隊に地対空誘導弾ペトリオットとして配備が開始されました。実働部隊の6個高射群24個高射隊(各高射隊は5機の発射機を有す)と教育支援部隊の高射教導隊が、北は長沼町(北海道)から南は南城市(沖縄県)にかけて配置されています。弾道ミサイル迎撃用のPAC3について2007年3月30日に埼玉県の航空自衛隊入間基地に所在する第1高射群第4高射隊に最初に配備されました。全高射群に配備される予定です。配備される各高射隊の発射機のうち2機がPAC3弾の搭載・運用に対応します。

  弾道ミサイル迎撃用のPAC3は巡航ミサイルに対しては50%程度の迎撃率しかないようですが、改良が続けられており、空自ではもう少し性能がアップしているのではないか、とも言われています。

  陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾は改良ホークの後継として2003年度(平成15年度)に制式化され、陸上自衛隊の方面隊隷下の各高射特科群の高射中隊を中心として配備が進められています。パトリオットと同じような車両構成となっています。射撃単位は1個中隊です。陸上自衛隊の1個高射特科群は4個高射中隊からなり、8個群が03式中距離地対空誘導弾に更新される予定です。これが実現すると32個高射中隊が誕生するわけです。1個群の価格は約470億円で、同規模のペトリオットの調達価格約850億円より低く抑えられているのが特徴です。しかし、21世紀以降の急速な財政悪化による防衛予算の削減で遅々として配備が進まず、巡航ミサイルに対し対応力が危惧される改良ホークからの更新が進んでいないのが現状です。射撃単位としては整備が完了しても陸空合わせて56個しかないのです。さてこの装備で日本の55基の原発が玄武から守り切れるでしょうか。

2010年8月13日金曜日

参考資料の紹介です

盆入りとともに急に忙しくなり、先ほど帰宅したところです。残念ながら原稿を書く時間がありません。未掲載分の参考資料紹介ということで勘弁ください。

前掲を除くここまでの主な参考資料


島根県大百科事典 山陰中央新報社

朝鮮日報日本語電子版

中央日報日本語電子版

現代新百科事典 学研

サピオ各号 小学館

2010年8月12日木曜日

大型トラックに積載可能

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その3



  玄武3Cは韓国軍と国防科学研究所(ADD)が開発し、ADDの探索・体系開発、試験評価を経て、LIGネクスウォン(旧LG精密)が量産を開始した最新型巡航ミサイルです。全長6m、直径53-60cm、重量1.5tで、大型トラックに搭載できる大きさ。飛行機と同じジェットエンジンを搭載しており、速度はマッハ1(時速 1260km)以下で、弾頭重量は450kg程度。目標に対する命中誤差は1-2mとなっており、米国のトマホークに匹敵する性能があります。

  韓国は北朝鮮のようになぜ弾道ミサイルを開発せず、巡航ミサイルを採用したのでしょう。アメリカが韓国の暴走を恐れてミサイルの開発規制を”押し付けた“からなのです。北朝鮮のミサイル発射を受けて2001年に新たに改正された米韓ミサイル合意(ミサイル関連技術輸出規制・MTCR)は、韓国が開発可能な弾道ミサイルを射程距離300km以内に制限する一方、巡航ミサイルについては無人航空機(UAV)と同じ系列に分類し、「弾頭重量500kg」を超えなければ、射程距離に関係なく開発することを認めたのです。韓国国防部としては、北朝鮮全域を制圧できる巡航ミサイルの開発に力を注ぎ、射程1000キロの玄武3Bを2006年ごろ配備しました。

  北朝鮮に対してはこれで十分だったのですが、将来、発生しうる対日戦を考慮、日本列島全域を攻撃対象とし得る射程1500キロの玄武3Cを開発したのです。

  これに対し反応したのは日本でなく中国でした。中国メディアの反応は素早いものでした。韓国メディアによると、中国の環球時報は「今回のミサイル開発により、韓国の戦略的威嚇(いかく)が朝鮮半島を超えた」とし、ミサイル射程距離内に中国の一部が含まれたことについて憂慮(ゆうりょ)を示しました。

    さらに、「韓国の冷静でない態度は、東北アジアから歓迎されないだけでなく、天安艦事件を口実に禁止区域にまで飛び込もうとしているのではないか」「ミサイル開発により、刺激と不安が東北アジア全体に波及する」と韓国のミサイル開発に対し強く批判しています。

  しかし冷静に考えれば韓国が中国を攻撃することは事実上あり得ないのです。あまりにも国力が違いすぎ、もし両国が交戦状態となったら中国は核弾頭付きの中距離弾道ミサイルを韓国にたたきこむでしょう。北朝鮮というクッションがある以上、両国が直接矛を交えることはあり得ません。玄武3Cの狙いはあくまで日本なのです。日本にこのミサイルを迎撃する能力があるのでしょうか。

2010年8月11日水曜日

5基攻撃受ければ国土壊滅

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その2


  韓国が日本列島全域を射程範囲に収めたミサイルを配備したからといって特に緊急な問題でない、と判断される方々があると思います。単純に考えても地上配備兵力は韓国の方が6倍以上も強力ですし、今さら問題にすることもない、日米安保条約がある以上、安心していられるーと考える人もあるでしょう。

  でもこれはそんな単純なものではないのです。実は地上発射型巡航ミサイル「玄武3C」は首都や自衛隊基地を狙ったものではない、ということです。目標はずばり原子力発電所。これを破壊すればチェルノブイリ原発の例に見られる通り半径200-300キロは人の住めない放射能汚染地域になってしまいます。その範囲に住む人の多くは死亡し、産業は壊滅、死の国土となってしまいます。日本にある55基の原発のうち300-400キロごとに1基ずつ計5基破壊すれば日本は死滅します。誰も住めない国土になってしまうのです。韓国とすれば別に核兵器を開発せずとも玄武3Cを発射すればそれで事は足りるのです。

  日韓関係が竹島問題などで決定的にこじれた場合、韓国としては「では原発を攻撃させていただく」と宣言さえすればそれですべては終わるのです。それほどこの玄武3Cはすごい威力を持つのです。アメリカは日本と安保条約を締結しているのと同じように韓国とは韓米同盟を結んでいます。仮にアメリカが世界数箇所で同時に緊張関係に入った場合、日韓が対立しても中立を維持することは国際関係から見て当然あり得ることなのです。せいぜい仲介役を果たすのが限度でしょう。仲介をしたとしても日韓の軍事バランスは圧倒的に韓国に有利なわけですから、そのバランスにそって仲介案はつくられます。たとえば韓国人が主張している対馬の韓国領化です。

   「弾道ミサイルに比べ巡航ミサイルは低速だから撃墜してしまえばいいじゃないの」という人もいるでしょう。実はそれは日本の自衛隊の力を知らぬ人の世迷言なのです。米軍はイラクで数百発(数千発との報も)の巡航ミサイル「トマホーク」を発射しましたが、撃墜されたのはゼロでした。玄武3Cの実力を説明します。

   まず巡航ミサイルと弾道ミサイルの区別についてお話します。弾道ミサイルはテレビ中継で見られるように弾道(放物線)を描いて高速、高空を飛行します。すこし大きなものでは大気圏外(宇宙)を飛び目標に落下、爆発します。発射すればマッハ(音速)30以上で飛ぶので制御がむずかしく、落下地点の誤差が大きいのでそれをカバーするため核爆弾を搭載するのが一般的です。米露中などが持つ大陸間弾道弾や中距離ミサイルがそれで、北朝鮮の中距離ミサイルも弾道弾です。レーダーに捕捉されやすいのが欠点といえるでしょう。

  それに対し巡航ミサイルは飛行機と同じような翼をもち音速、亜音速の低速で地表、海面上すれすれを飛びます。地形に沿い超低空を飛行するため速度が遅くてもレーダーに捕まりにくく、迎撃しづらいのです。ジェットエンジンで燃料は安価なケロシン。最近はエンジン自体をセラミック化することが多く、誘導技術さえ確立できれば安あがりな量産型ミサイルといえます。地対地、地対艦、艦対艦、艦対地、潜(潜水艦)対地、空対地など種類は豊富で、今回韓国が開発した玄武3Cは地上発射型の地対地です。一部報道によれば韓国中部に配備されたようです。米軍のトマホークとほぼ同性能を有することは前回書きました。

2010年8月10日火曜日

ごめんなさい

ごめんなさい。

  昨日は韓国巡航ミサイルその2を出稿しなければなりませんでしたのに、出来ませんでした。夕方、会合があり、そのあと慰労会があったのです。当初は慰労会を早々切り上げて帰宅、巡航ミサイル問題を書くつもりでした。ところが仲間と会話が弾み、1杯が2杯になり2杯が3杯になるうちに原稿のことは完全に忘れ、帰宅したときはグデングデンに酔っ払っていました。それでもパソコンに向かおうとしたのですが、ニョウボ殿に叱られてダウン、結局出稿はできませんでした。要は自己コントロールが出来ていないのです。まことにごめんなさい。

  おまけに10日ほど前からパソコンの処理速度が遅くなり、たとえば「あ」と打っても決定できるのは数分かかる始末。本日は対策としてリカバリーを考えていましたが、ウインドウズXPのSP2はセキュリティーサービスが既に終了していることが分かり、それが原因と勝手に自己判断。あわててSP3にバージョンアップを開始しました。ところが私のパソコンは既にSP3に格上げされていることが分かり???。そのうちセキュリティー対策ツールが古いことが判明、バージョンアップに取り掛かりました。ところがなぜかダウンロードは出来るのですがインストールが出来ません。それやこれやで4時間以上が経過、巡航ミサイルを書く時間的余裕がなくなりました。まことに申し訳ありません。私のパソコン技術が未熟なのが原因です。

   もうひとつおまけに11日は終日、山伏仕事でパソコンに向かう時間が捻出不能になりそうです。なんとか頑張りますが、出稿できないときはお叱りください。なんやかんやのお詫びばかりで平身低頭です。3日連続で読者の皆様にはご迷惑をかけるのはなんとか避けたいのですが、よろしくお願い申し上げます。

    合掌  清雅坊

2010年8月8日日曜日

玄武3C、日本を狙う

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その1

   7月17日付の朝鮮日報、中央日報など韓国メディアの報道によりますと、韓国軍は射程1500キロメートルの地対地巡航ミサイル「玄武3C」を開発し、年内に実戦配備することが分かりました(既に配備済みとの報道も)。「玄武3C」は設定された進路、目標に自らを誘導する慣性航法装置(INS)と、衛星からの電波で固定目標へ誘導する衛星航法装置(GPS)を結合しており、イラク戦争で威力を発揮した米軍の「トマホーク」級の攻撃が可能だといいます。

  射程距離は1500キロメートルと朝鮮半島を大幅に超える長距離で、日本列島全体を攻撃範囲に納めました。中国の北京(ソウルから950キロメートル)、ロシアのウラジオストク(同750キロメートル)だけでなく日本の東京(同1160キロメートル)もすっぽりと射程に入ります。記者はこれまで実戦配備に対する政府、与党、マスコミなどの反応を注視してきましたが、読売新聞など一部マスコミが事実関係を報じただけで、対応策らしきものは何ら出てきませんでした。記者は2006年秋にインターネット新聞「オーマイニュース」などで「玄武3C」の前段となる「玄武3B」の配備の事実を指摘するとともに「玄武3C」の開発が進行中だと対策を訴えました。しかし政府、与党ともそれへの対応はまったくなく、マスコミも無関心でした。この「◆韓国、長距離巡航ミサイルを配備へ」 の記事では「玄武3C」配備の問題点を改めて指摘したいと思います。


 韓国がこれまで実戦配備していた地対地巡航ミサイルは、射程距離500kmの「玄武3A」、同1000kmの「玄武3B」の2種類で、それ以前に配備していた短距離ミサイルは廃棄されていると思われます。「玄武3B」は韓国東岸に発射基地を置くと北海道と東北の太平洋側を除く日本列島のすべての原子力発電所と東京を射程に収めます。韓国西岸に配備すれば北京、上海など中国沿岸部が射程に入ります。対北朝鮮への配備としては過剰な射程距離で、極東の軍事バランスに大きな影響を与えました。

  今回の韓国の射程1500キロメートルの巡航ミサイル実戦配備は、米国、ロシアに続き世界で3番目となります(一部報道によりますとイスラエルも所持している可能性があります)。問題点は玄武3Cが韓国の主力敵である北朝鮮を狙ったものではない、ということです。北朝鮮に対しては従来の射程1000キロメートル級の玄武3Bで十分であり、たとえ朝鮮半島最南端に玄武3Bを配置しても北朝鮮全土を射程に収める事ができます。つまり玄武3Cの照準は日本、中国、ロシアにある、ということです。玄武3Cに狙われた日本として黙っていてよいものでしょうか。

2010年8月6日金曜日

お休みさせてください

  6日の全国最高気温は私の住む鳥取市の38.4度でした。その超暑さのなか、屋外のそれも重労働を余儀なくされました。抹茶、玉露、紅茶、スポーツ飲料などをたて続けに飲みましたが、疲労感は極めつけの厳しさ。このままでは熱中症になる、と冷房の効いたスーパーに飛び込みましたが、イスに座ってしばらく動きがとれないほど。シャツは真っ白に塩をふいていました。こんな殺人的な暑さのなか、屋外で重労働をさせられるのは私の因縁が悪いから、とあきらめつつ水風呂に飛び込むとその気持ちのよさはまた格別、そのまま水風呂の中で居眠り状態となり、ハッと気づいて飛び出す始末。

  そいうわけで、とても原稿を書ける体力がありません。今日の講座はお休みにさせてください。明7日(土曜日)も朝から屋外作業があります。夕方からは慰労の一杯飲みが控えています。申し訳ありませんが7日も勘弁してください。8日(日)は頑張ります。熱中症にはお互い、気を付けましょうね。

      清雅坊   合掌

2010年8月5日木曜日

原住民に国境自由通行権を

  ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その7

   ロシアはモンゴル国に対してはモンゴル族から奪ったブリヤート共和国とその周辺地域を返還すべきでしょう。また中国に働きかけて内モンゴル自治区をモンゴル国に統一、合併するよう外交交渉を開始すべきです。ただ現在ではブリヤート共和国はモンゴル系諸族よりロシア人の方が人口が多くなってしまい、単純に返還することは不可能です。また内モンゴルについても中国政府の漢族移住政策のため、モンゴル人17%に対し漢族が80%以上を占めているのが現状です。


  これに対し一案としてモンゴル人、ダウール族、エヴェンキ族、オロチョン族、回族・満洲人など原住民にはモンゴル国、内モンゴル自治区、ブリヤート共和国の各国境間自由通行権、自由貿易権を与え、経済的基盤を保証することはどうでしょう。原住民以外にはもちろんこの権利は与えません。中国自身も内モンゴルをモンゴル族から奪った経緯があり、ロシアと同等の原住民優遇策を講じることが必要なのです。これには3国政府と関係住民の協議が必要です。そしてモンゴルに圧制を強いたことをわびるモニュメントをウランバードル市内、ブリヤート共和国、内モンゴルに建設するのが民族和解の本筋となるでしょう。

  ◇狩猟、漁労の独占権を


  またロシアはシベリア原住民に対しては狩猟、漁労の独占権を与え、ロシア人が行っている森林伐採、鉱山採掘について一定割合で補償金を支払うのです。高等教育機関の原住民入学枠を設定し、無料で進学を可能とします。さらに自治体の名誉的な長を実権のない一種の名誉職として先住民族から選ぶのです。名誉的な長の名称は王であってもいいし、汗でもいいし、現地の実情に合わせればいいのです。そして本物の共和国大統領、州知事、各級議会議長、各級裁判所裁判長などの任命式を執り行う権限を与えるのです。


   このようにすればロシアに対するアジア諸民族からの怨念も薄れます。それが第2次世界大戦後にシベリアから撤退しなかったロシアのせめてもの詫び状となるのです。もちろん、以上のことは簡単には実現不可能です。アメリカだって先住民族のインディアンに補償らしきものをしていませんし、おわびもしていません。でもアジア人としてこれらのことをロシアに要求し続けるべきなのですj。そしてそれに対し少しでも誠意を見せるのがロシア人としての努めではないのでしょうか。


   以上、ロシア人に対して厳しいことを書きましたが、実は私自身はロシアびいきなのです。高校2年生の夏休み、学校図書館から借りたドストエフスキーの「罪と罰」をひと夏かかって読みおえました。よく分からぬながらもロシア人の根太さと人への愛、神への思いを知りましたし、熱中した学生演劇ではスタニスラフスキーに傾倒。北村和夫が演ずるチェホフの「桜の園」ではその重厚さに圧倒されました。学生時代には歌声喫茶に流れる「モスクワ郊外の夕べ」「ステンカラージン」などロシア民謡の虜にもなっていました。


  そういう私だからこそロシアが対日参戦を反省し、アジアから奪ったものはアジアに返す努力をして欲しいと思うのです。中国など関係諸国、アジア諸民族とも現状を肯定するのでなく、アイデンティティに目覚めようではないですか。ロシアへの要求運動が国境を越えた高まりとなることを期待します。

                                      この稿終わり

2010年8月4日水曜日

満蒙人のシベリア移住を

 ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その6

  シベリア占領に対する謝罪と補償をロシアはどう実現するか、これを考えてみたいと思います。中国に対しては今となっては外満州を返還するわけにはいかないでしょうから、せめてロシアと中国の共同管理に置かれている大ウスリー島(中国名:黒瞎子島・アムール川とウスリー川の合流点にある島で中ソ国境紛争の係争地となった)を中国に帰すべきでしょう。同時に外満州を奪ったことを謝罪する巨大な石碑を適当な場所に設置すべきです。それはあのアムールスキーの巨像より大きくしなくてはいけませんね。それと同時に満州人(女真人・清人)、モンゴル人、ツングース系諸民族に対しては国籍を問わずシベリア入植を原則無制限に認めることです。

 ◇減少する白人人口◇

  実はシベリアにおけるロシア人(白人)の人口は急速に減っているのです。地図上には名前が残っていても無人集落が激増しています。ロシア人は極寒に強いようでも元々はドン川流域の暖かい麦作地帯の出身で、南方に憧れています。共産政権時代と違い定年退職するとロシア南部に移住する人が増えています。それにも増して産児制限が自由に行われていることから少子化がどんどん進み、白人人口が減っています。資本主義の導入で、職業選択の自由、居住地選択の自由が生まれたところから職の少ないシベリアから工業化が進展しつつあるヨーロッパロシアに移住する若い人が増えています。何よりも共産政権時代はシベリアは割り増し賃金が払われていたのですが、今はウラル山脈の東と西では同一賃金化が進んでいます。にもかかわらず物価は輸送費のかかるシベリアの方が高いのが現状です。


  それどころか工業化が進むヨーロッパロシアの方が賃金が高くなりつつあります。トヨタ自動車が進出したのも日本に近く部品供給の楽な沿海州でなくて、工業集積が進みつつあるモスクワ郊外でした。シベリアでは居住者は公務員とその家族だけ、という町が増えつつあるそうです。つまり軍人、警察官(国境警備隊など)、測候所職員とその家族という町です。白人人口が減るのも当然といえましょう。

  ◇活力失う満蒙民族◇

  こうした空洞化したシベリアに中国、モンゴルなどからの移住者を認めるべきなのです。もちろんそれには漢族、朝鮮人などもともとシベリアに住んでいなかった民族は入れる必要はありません。新植民者の新国籍はロシアでもよく出身国でもよく、場合によっては二重国籍を認めても構いません。要は元の”住民“が帰れるようにすればいいのです。それが被圧迫民族に対する心理上の謝罪といえるでしょう。ロシア人がいなくなったところに帰るのですからロシアとしての痛みも少ないはずです。

  しかしこの案は現実的には成り立たないのかもしれません。それは移住すべき満州人、モンゴル人、ツングース系諸民族が活力を失い、彼ら自身も人口が減少しているのです。清帝国を築いたあの満州人でさえ、文化的側面を残した満州人はわずか数千人との指摘もあります。これではとても新植民地形成は成り立ちません。ではどうすればいいのでしょう。名目的なものでいいですから満州人などの移住を認めるべきなのです。こうすれば心理的にも敵対感が薄れていくでしょう。


  ロシア政府としてもこの案はロシア全体の人口減を食い止める絶好の案なのです。もっともロシア政府内部に「ロシアは白人国家でなければならない」という合意があるなら別ですが、ロシアは建前上「民族差別はしない」ということになっているはずです。名目的な案ならロシアしても受け入れやすいでしょう。ロシア政府の英断を求めたいものです。最終目標は民族間の敵対意識消滅にあるのですから。

2010年8月3日火曜日

政治犯でシベリア開発

  ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その5

  ロシアがアジアから撤退しない理由。それは「渡すべき相手がいないからだ」といいます。征服された諸汗国の後継となるべく実体は現在ではまったく存在しませんし、原住民の数が極めて少ないのです。アムール川沿いに住むナナイ人も総数が1万2000人くらい。これはロシア・ソ連が原住民を抑圧し続けた結果と性病、天然痘など各種の病気を持ち込んだため大幅に人口が減少したといわれます。かつて汗国を打ち立てたツングース、モンゴル系の人々は国を確立するだけの人口が今やないのです。


 ◇肉体労働を実践したロシア人◇

  シベリアに進出したロシア人の特徴は自ら肉体労働を実践したことにあります。アジア、アフリカに殖民した米英仏蘭のやり方はプランテーション(先住民や隷属した有色人種などの安価な労働力を使って単一作物を大量に栽培する大規模農園)経営を行い、自らは肉体労働をしなかったのです。ところがロシア人は森林伐採でも農場開墾でも自ら肉体労働に従事、原住民を奴隷化することはしませんでした。原住民には代わりに毛皮税を課しました。奴隷とするより毛皮を納めさせた方が収益が上がったのです。原住民は自らが着る毛皮も無くなるなど苦しみましたが、自由のある方が民族の誇りを保てました。


  しかしそれでは労働力が足りません。労働力を補うためにロシアもソ連も大量の囚人、特に政治犯を送り込みました。囚人を得るために政治犯を作った、といえるくらい大量の政治犯を送り込んだのです。いわばシベリアは囚人が切り開いた土地ともいえるのです。その囚人は服役後、郷里に帰る術もなく現地に居つきました。それだけにロシア人はシベリアへの愛着が強く、米英仏蘭のように植民地から撤退する発想は皆無に等しかったのです。

   ◇奪い取った領土の返還を◇

  ではロシアは迷惑をかけたアジア諸民族に対してどうすればいいのでしょう。18世紀以前はともかく近代に入って奪った土地は返還すべきでしょう。日本に対しては千島諸島、歯舞色丹を樺太・千島交換条約の精神に戻って返還することです。代わりに日本は南樺太に対する主権は放棄します。終戦後、不法抑留した日本人軍民と財産に対して補償します。これは金融不安下とはいえ石油景気にわく現在しか出来ない事業です。資金がないなら石油。天然ガスなどで物納すれば済むことです。そして日本とロシアの両国に、不法に強制抑留したことを詫びるモニュメントを建立することです。

  明日は植民地を放棄しない代わりに中国、モンゴル、シベリア原住民に対する謝罪と補償について書きますが、これはこれまでどなたも発表したことがない画期的な提案です。それだけにロシアとしてはとうてい受け入れることのできないものでしょうが、ロシアは大国としての度量を示すべきだと思います。明日をお楽しみにしてください。

2010年8月2日月曜日

侵略を誇る巨大な彫像

 ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その4

   ロシアのシベリア遠征がロシア人にとっていかに誇らしいものであるかはハバロフスクの街を歩くと一目瞭然。街には遠征者の巨大な彫像があり、公共施設には肖像画が飾られています。アムール河畔の公園にはアムール以東を清から奪い取ったムラヴィヨフ・アムールスキーの巨像が中国に向かって立てられ、シベリア鉄道のハバロフスク駅にはコサック隊長のエロフエイ・ハバロフ像が街を見下ろしています。アムールスキーの像は街の中心部にあるレーニン像より巨大であることが印象的です。その分、シベリア遠征にかけるロシア人の意気込みを感じました。レーニンよりもアムールスキーの方がここでは偉大なのです。アムールスキーの肖像画は私が訪れたレストランにも飾ってありまた。ロシア人にとってシベリア征服は当然のことで、そこにあった諸汗国やタタール、モンゴル、女真、ナナイなど先住民族への配慮はまったく感じられません。

  ◇街中心部は白人のみ◇

   ロシアでは人種差別はない、といいながらハバロフスク中心部ではアジア系の人々の姿はまったくといっていいほど見受けられませんでした。街の重要部分を白人であるロシア人が占拠している感じで、ボーイなど比較的給与が低い職種も白人が占めていました。タタールなどアジア系諸民族は街の外に追い払われているのでしょうか?

  その白人ばかりの街には主だったところにミグ27、機種は不明ですが大型ヘリコプター、T34戦車など戦中戦後の兵器が飾ってありました。軍事博物館に行くと満州侵攻に使ったと思われる各種重砲や戦車が中庭にずらり。それらを除いて街中では軍事色はあまり感じられませんでしたが、極東軍管区本部が置かれている街でもあり、民間空港ですら写真禁止となっていました。

  ロシア人の極東制覇の意識は非常に高いものがあります。日本海の軍港都市ウラジオストックの意味はロシア語で「東を征服せよ」。時流に合わせて街の名前を変えるのが好きなロシア人はこの街の名前だけは変えようとしません。軍港都市ということを考えると東とはもちろん日本のことです。

  ◇占拠し続ける植民地◇

  さてそのロシア・ソ連はこうして得たシベリアという植民地を第2次世界大戦後、アジア人に返えしませんでした。敗戦国の日独伊をはじめ戦勝国の米英仏蘭がアジア、アフリカからすべて撤退したにも関わらずにです。それどころか日本から奪った南樺太、千島諸島、歯舞色丹に居座り続けています。さいわいソ連軍がいったん占領した満州、北朝鮮はそれぞれの地に共産党政権が誕生したことから撤退しました。ただ日本が現地に営々と築き上げた鉄鋼、機械などの基幹生産設備は根こそぎソ連に持ち帰り、現地共産党政権には渡しませんでした。現地共産党政権には持ち去ることができない炭鉱、鉱山、社会的インフラと個人資産を引き渡したのです。個々のソ連兵士は日本人住宅に銃を構えて侵入、時計、宝石、お金、毛皮製品など個人財産を強盗同然に奪い去りました。それらへの補償はまったくありません。

2010年8月1日日曜日

モンゴルを巧みに分割占領

   ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その3


  ロシアはモンゴル帝国時代にロシアを支配していたモンゴルに対しては慎重な構えを見せました。当時、モンゴルは中国と一部対峙しており、半独立的な立場でした。これを利用してロシアは中国からのモンゴルの一部独立を支援しました。しかし全モンゴル完全独立には組せず、中国には内蒙古を残したのです。その反面、モンゴルの支配地だった現在のブリヤート共和国の土地をロシア領に編入してしまったのです。たくみにモンゴルを分割し、勢力を割くという方法は成功。このためモンゴル諸族はモンゴル国、中国・内モンゴル自治区、ロシア・ブリヤート共和国に分かれて住むことを強制され、さらにロシア、中国の本土にも相当数のモンゴル諸属が分散居住しています。この図式は現在も変わらず、ロシアのしたたかさが感じられます。

  ◇ロシアのアジア侵略を80年間食い止めた日本◇

  日本海に進出したロシアはもちろん日本ともぶつかり、千島、樺太の領有権をめぐり交渉が続けられた結果、平和裏に1875年5月7日、樺太・千島交換条約が結ばれました。ところが明治天皇陛下を「猿」と呼んでいたロシア・ニコライ2世は日本攻略を広言、1904年に両国の間に日露戦争が起こり、ロシアの東亜遠征では初の大敗北。それから約80年間はモンゴル制圧を除いてアジア侵略は休止状態となったのです。日本のアジア民族としての貢献がいかに大きいかが分かります。しかし第2次世界大戦で日本の敗北が決定的となると日ソ不可侵条約を無視して満州、樺太、千島、北朝鮮に突如侵攻、大戦での漁夫の利を得ました。

  同時に多くの日本人民間人を含めた捕虜約107万人を終戦後、強制連行。シベリアなどソ連各地に送り、過重労働を強いました。飢えと極寒のなかで多くの人が死亡、アメリカの研究者ウイリアム・ニンモ著「検証ーシベリア抑留」によれば、確認済みの死者は25万4千人、行方不明・推定死亡者は9万3千名で、事実上、約34万人の日本人が死亡したといいます。また1945年から1949年までの4年間だけで、ソ連での日本人捕虜の死亡者は、37万4041人にのぼるという調査結果もあります。ソ連・ロシアは日ソ国交回復後も樺太、千島は日本に返還せず、北海道の一部である歯舞色丹も占拠したままなのです。ロシアのアジア制圧は依然、続いているのです。


   前掲を除くここまでの主な参考資料

日経新聞各号
「伊庭貞剛物語」、木本正次 朝日ソノラマ、
「日韓2000年の真実」、名越二荒之助編著 国際企画
「木のいのち木のこころ(天)」、西岡常一 草思社
「シベリア先住民の歴史」 ジェームス・フォーシス 彩流社
「日本とロシア」 高野明 紀伊国屋書店
「「ロシアの風」 中村喜和 風行社
サンケイ新聞各号
サイト ロシア人のシベリア征服 出羽 弘
武蔵野市公式ホームページ
新潟市公式ホームページ