2010年6月4日金曜日

見出された縄文柴犬

 ◆右回りと左回りと
昨日の記事をおさらいすると、数万年前にバイカル湖付近にいた古代パリア犬が古モンゴロイドに連れられ、1群は北から日本列島に入り、縄文犬になりました。別の1群は同じく古モンゴロイドに連れられ、中国南部、インドネシア北部に移り、やがて日本列島にやってきた、というわけです。インドネシアに残った古代バリア犬は現在のバリア犬になりました。

 北海道にいた縄文犬は北海道犬の祖犬となりまた。沖縄にいた縄文犬は、琉球犬の祖犬となりました。おもしろいことに北海道犬と琉球犬が近縁であることが、血中タンパク質の遺伝子組成を比較した最新の調査で確認されたということです。バイカル湖付近にいた犬が中国を右回りと左回りで日本で再び合流したのですね。またアイヌの人々と沖縄の人々は遺伝子的にきわめて近い関係にあるそうです。古モンゴロイドが朝鮮経由も含め3通りのコースで日本列島で合体したのです。朝鮮半島経由の人々も当然、犬を連れてきた、と思われますがその分布はよく分かっていません。

 やがて縄文犬は渡来してきた弥生人が連れてきた弥生犬と混血し、柴犬、紀州犬、甲斐犬、四国犬などに分かれました。このうち柴犬がもっとも縄文犬の特徴を引き継いだのです。縄文犬の特徴はやや小型で、額が広く平らで額段が浅く面長です。額段というのは鼻筋の延長線上にある額が筋状に落ち込んでいるもので、縄文犬はほとんどこれがなく、弥生犬は額段が深く大きく頬骨が張り出しているのです。柴犬は混血がすすんだせいか額段の明瞭な犬が多いのです。

 ◆区分けは額段

 ところが1950年代ごろから額が広く平らで額段が浅く面長なタイプの血筋の柴犬が見出され、縄文柴犬と名づけられて育まれ始めました。

 長い歴史の中で、日本民族と共存して来たこの縄文柴犬は、原種的な素朴さと野性的な性質の鋭さを今も失ってはいません。鋭い警戒心がありながらも、飼い主には大変に素直で従順であり忍耐強く、陽気で純情などの特性があります。力強く締まった体躯で軽快、弾力性があり、俊敏・機敏・敏捷で勇猛な動作を示します。鋭く輝いた眼、良く締まった口などは単純でバランスも良く、品位のある顔貌が備わっていて野性的な美しさがあります。

 この地球上には数百種類以上もの犬が存在しますが、縄文柴犬は数万年前から原型に近い形態を残していると考えられます。極めて珍しい貴重な一種としてとらえる必要があるのです。いかなる科学の英知があったとしても、この地上から縄文柴犬が一旦滅びたとしたなら、それを甦らせることは不可能です。関係者の努力に敬意を表すものです。ただここで注意しなくてはならないのは一般の柴犬も縄文柴犬としてあつかわれたり、ごっちゃな表現が多いことです。ここではやはり額が広く平らで額段が浅く面長なタイプのもののみ、縄文柴犬として表現すべきではないかと思いますが、皆様のご意見はいかがでしょう。

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