2010年6月7日月曜日

誤差のない年輪年代法

 ◆誤差の多い放射性炭素年代測定

 前回、豪州人のカンガルー食いに飛び火してしまいましたが、これまで縄文人のルーツと縄文文化を書いてきました。いかがだったでしょう。これからは現代日本人の表層となる弥生人のルーツとその暮らしを探ります。これまで書いてきたことは専門家からみれば私見と判断されます。それもそのはずです。日本人の起源を探究する学問には、自然人類学、文化人類学、考古学、言語学、民俗学、民族学、文献史学、神話学、血液学、遺伝学などがあります。それぞれ別な見解を持っており、同じ学問でも研究者によって意見が異なります。たとえば私は沖縄人はスンダランド由来と書いていますが、北方由来とする学者もたくさんいらっしゃいます。学説としてはもっともであり、私もずいぶん悩みました。その結果、私なりに納得した最新の主な成果を整理し、まとめたもののがこのブログです。日本人の起源についてこれから新しい情報がどんどん入ってきます。これからも皆様といっしょに考えてみようと思います。


 さてこれまで土器の年代を断定的に書いていますが、これらの年代は特に明記のない限り放射性炭素年代測定を補正した年代推定に従っています。土器の年代測定技術はまだ完全には確立されていないため .精度の高い推定は難しく、現在でも研究途上にある技術です。縄文時代の年代は一般的には1万年間といわれていますが、流動的なものです。約1万6000年前 から約2300年前とすればほぼ間違いはないでしょう。約1万3000年前からスタートという研究家も多くいます。

 その年代測定法で最近、決定的とも思える測定法が開発されてきました。年輪年代法です。年輪年代法とは、木材の年輪の変動変化を調べることによりその木の伐採年代や枯れ死年代を知る方法です。年輪はその年の気温で広かったり狭かったりします。それを現在から順を追って調べていくと、その木が伐採、枯れ死した年代が分かります。この方法の良さは、木材の各年輪が作られた年を一年単位で決定できることにあります、得られた年代に誤差がないという点では数ある自然科学的年代決定法の中でもとりわけ優れた方法です。

日本ではヒノキや杉について、過去約3000年分が分かるようになりました。放射性炭素年代測定で求められる年代は必然的に数十年から数百年の統計的な誤差が含まれますが、年輪年代法を併用することによって、より正確な年代の決定が可能となりました。土器などの年代決定法はこうです。土器と同じ地層から木片が発見されるとその木片の年輪年代を測定し、土器もその時代のもの、と判断するのです。そ以前の土器は時代が分かった土器を基本にして年代を推定していきます。奈良国立文化財研究所が膨大な試料をもとに開発しました。一つ一つの試料すべてに当たるという粘り強い努力が実を結んだのです。

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