2010年6月16日水曜日

人類による砂漠化現象

 ◆過度な森林伐採

 人類による砂漠化現象は四大文明の地だけでなく、アジア、北アメリカ、地中海一帯にみられます。イタリアを旅行したことがありますが、岩山だらけの国で、緑はまばらです。かつては森の国だったイタリア半島は共和制ローマから帝政時代、放牧と畑作、そして過度な森林伐採で、丸裸になってしまいました。岩山が露出したのです。森林伐採は主に軍船造りに当てられ、その軍船で地中海を席巻したのです。クレオパトラとアントニュウスの物語は軍船抜きに語れません。森林は都市建設や鉄造りの燃料にも用いられ、ローマが地中海や南部ヨーロッパを支配できたのも木を切ることで成り立っていた、と考えられます。帝政末期、雨が降ると森林や保水力のある耕地がないため、鉄砲水となって下流を襲い、多くの集落が失われました。特に海辺の町の被害が大かったようです。これが毎年続くと人々は移住、経済力は低下し国民のエネルギーがなくなったのです。イタリア半島が緑を失ったとき、帝政ローマは活力を失い北方からきたゲルマン人の侵入を防ぐことはできませんでした。

 ただイタリアでは本格的な砂漠化は起こりませんでした。東西と南を海に恵まれ、北はアルプスの雪解けがあり、ほどよい湿度があったこととオリーブ、かんきつ類など荒地に強い作物が栽培され始め、土壌を守ったことが挙げられます。それに比べ中近東はもともと乾燥化しやすい土地柄だったことが、砂漠化を進行させたのでしょう。

 20世紀後半、北アフリカ・サハラの砂漠地帯の洞窟に古代人が描いたと思われる壁画が相次いで見つかりました。その壁画は牛、ライオン、象、キリン、ラクダなどで、それらを狩っている人々の姿もありました。北アフリカは緑の森林と豊かな草原に覆われていたのです。この絵の重要性が評価され、世界遺産に次々登録されました。紀元前12000年ごろから西暦100年ごろに描かれた壁画は、かつてこの砂漠が緑の大地であったことを教えてくれます。音楽や舞踊といった日常の様々な生活風景も描かれており、人々が精神的豊かさの中で暮らしていたことを物語っています。壁画はアルジェリア、リビア、ニジェール、テャドなど広範囲に存在します。

 ただこれらの地方で大規模な牧畜や畑作が行われていたかどうかは不明で、砂漠化の原因が人的要素より気候変動による度合いが高い可能性があります。今後の環境考古学の調査が待たれましょう。

 前掲を除くここまでの主な参考資料
サイト 民族伝承ひろいあげ辞典
サイト 奈良国立文化財研究所
サイト 年輪年代測定
サイト 弥生ミュージアム
『DNAが語る稲作文化-起源と展開』佐藤洋一郎  日本放送出版協会
『稲のきた道』佐藤洋一郎 裳華房
『稲とはどんな植物か-コメ再考』佐藤洋一郎 三一書房
『古代日本のルーツ 長江文明の謎』安田喜憲 青春出版社
サイト 稲吉角田遺跡
サイト 稲吉角田遺跡出土弥生絵画の新解釈
サイト 妻木晩田遺跡
『原始絵画』共著 講談社

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