2010年6月29日火曜日

弥生時代 500年早まる

 ◆開発された高精度炭素14年代測定法

  28日の記事で弥生時代の開始年代は紀元前800年が妥当だろう、と書きました。ところが「お前はブログの最初のころは紀元前300年、といっておきながら500年もさかのぼるとは朝令暮改だ。その根拠を示せ」とお叱りを受けました。ごもっともです。紀元前300年説は常識的な理解で、NHK教育テレビの高校歴史などでもこの年代を採用しています。私もこの年代を前提に講座をはじめましたが、書いているうち大陸との整合性がどうしても紀元前300年では説明がつきません。それで紀元前800年説に転換してしまいました。その根拠を説明します。最近のすばらしい年代測定技術の進歩がその背景にあります。


  国立歴史民俗博物館などの資料によりますと、最新の土器、木材などの実年代測定法は以前書きました年輪年代測定法とが併用され、ほぼ正確な年代決定ができるようになりました。すこし昔まで炭素14年代測定法なんて誤差が大きくてとても信用ならん、という研究者がたくさんいました。場合によっては何百年、何千年も違うのです。ところが1977年に AMS法(加速器質量分析法)という高感度高精度測定法が提案され、その後の開発によって高精度化が進みました。


  原理はこうです。自然界の炭素原子は炭素12、炭素13、炭素14の3つの同位体の混合物です。このうち炭素14は5730年の半減期をもつ放射性同位体で、大気から生物に取り込まれると5730年後には半減します。この炭素14の量を調べるとその生物が死滅してから何年たつか、が分かるわけです。ところがこれまでの測定法では誤差が多いことから開発されたのが AMS法です。同法は加速器によってイオンを加速し、直接一個一個検出して正確にその同位体濃度を測定するのです。炭素14だけでなく炭素12,炭素13も質量を比較検出します。従来の放射線で測定する場合に比べて千分の1の試料量での正確な年代測定が可能となりました。 さらに年輪年代との照合で補正。太陽活動や大気の炭素濃度も加味し高感度高精度の測定ができるようになったのです。


  これを基に九州北部の弥生時代早期から弥生時代前期にかけての土器に付着していた炭化物などの年代を、AMS法による炭素14年代測定法によって計測したところ、紀元前約900~800年前と分かったのです。これまでは紀元前300年ごろと推定されていたのが500―600年も早くなったのです。


  国立歴史民俗博物館では現在、遺物の年代測定を片っ端から行っていますがいずれも同様な傾向がでました。縄文時代の終わりも従来の紀元前300年ごろから紀元前800-900年ごろ、ことによったら紀元前1000年になりそうです。ところでこれらの測定は土器そのものについて行うのではありません。土器に付着しているコゲやススを中心に、遺跡から出た炭化物、木材、堅果などの試料を調査するのです。もしあなたが偶然に土器を発見したら絶対さわらないでくださいね。土器を洗うなんてもってのほかです。付着しているもので年代測定するのです。あなたの手垢が土器についたら現代の土器になってしまいますよ。

  <お断り>30日は帰宅が深夜になりそうです。残念ながらお休みにさせてください。

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