2010年7月11日日曜日

龍を食べる鳥

  ◆水田稲作民の共通シンボル

  水田稲作民の共通したシンボル、それは稲を育てる太陽と、それを運ぶ鳥、と書きました。ではいつごろからそのような信仰ができたのでしょう。

弥生人の基になった中国・長江文明。8000年前の湖南省高廟遺跡から鳥と太陽が描かれた土器が多数出土しているのです。7600年前の浙江省河姆渡(かぼと)遺跡からは、二羽の鳥が五重の円として描かれた太陽を抱きかかえて飛翔する図柄が彫られた象牙製品が出土しました。水田稲作のごく初期から守護神としてのあつかいを受けていたのです。

 以前にも紹介した鳥取県米子市と大山町にまたがる妻木晩田遺跡(弥生時代中期)の西側に、弥生中期の稲吉角田(いなよしすみた)遺跡があります。角田遺跡から6種類の絵画が描かれた大型の壷が出土したことは出雲大社の稿で書きました。その中に羽根飾りをつけた数人の漕ぎ手が太陽に向かって漕いでいる船の絵を描いた図柄があります。羽飾り、それは漕ぎ手が鳥になったつもりで自分を飾っているのでしょう。鳥装です。それとそっくりの絵が描かれた青銅器が、同時代の雲南省の遺跡から出土しているのがおもしろいですね。

  長江文明の民が逃げ込んだ雲南省では龍を食べる鳥を守護神とする伝説があるそうです。龍は中国北方の畑作牧畜の漢民族のシンボルであり、鳥と龍との戦いとは、稲作・長江文明と畑作牧畜・黄河文明との争いを暗示していると考えていいでしょう。猛禽類は蛇を食べます。鶏もムカデやミミズなど細長い虫を食べます。龍を細長い生き物の象徴として考えれば鳥は龍に対抗できるのです。

伊勢雅臣氏はメルマガ「国際派日本人養成講座」で次のように書いておられます。

 これは筆者の想像だが、出雲神話に出てくる八岐大蛇(やま
たのおろち)も龍なのかもしれない。この頭が8つに分かれた
大蛇を天照大神の弟・戔嗚尊(すさのおのみこと)が退治して、
人身御供となりかけていた稲田姫(くしなだひめ)を救い、二人
は結ばれる、という物語である。大蛇の体内から出てきた天叢
雲剣(あまのむらくものつるぎ)は、後に皇位を象徴する三種の
神器の一つとなった。八岐大蛇はこの世の悪の象徴であり、草
薙剣はその悪と戦う勇気を表しているとされている。

  私も同感です。悪=龍の水田稲作民の気持ちが反映された記録だと思うのです。

 前掲を除くここまでの主な参考資料

サイト 帆人の古代史メモ
朝日新聞各号
『龍の文明・太陽の文明』安田喜憲 PHP新書

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