2010年11月21日日曜日

本日もお休みにさせてくだだい

  実質的に5日間もお休みをいただきありがとうございました。まだ体調が治り切りません。本日もお休みにさせてください。

  合掌  清雅坊

  

2010年11月20日土曜日

お休みを頂戴してしまいました

 ごめんなさい。無断で4日間もお休みをいただいてしまいました。急な大阪出張と肺炎の前駆症状が重なってしまったためです。原因は蓄積疲労と睡眠不足のようです。発熱は治まりましたが、咳とノドの痛みがとれません。若いときのような無茶はもうできない歳になった、と痛感しているしだいです。そんなわけで、本日の出稿はありません。かわりにいつものようにこれまでの引用、参考資料を紹介します。読書は人を高めます。幅を広げます。これからも読みつづけていきたいものですね。

   前掲を除くここまでの主な引用、参考資料。

  サイト「チベット侵略」
  『竹島密約』 ロー ダニエル 草思社
  『チベット』 クロード B ルヴァンソン 白水社
  『侵略と戦慄 中国4000年の真実』 杉山徹宗 祥伝社
  『蘇る古代史』 豊田有恒 青春出版社
  『世界歴史・各巻』 岩波講座

2010年11月15日月曜日

問題点が分かっていない自民党

◆膨張国家、中国の怨念 その30

 自民党は15日、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件への対応に問題があったとして、仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通相に対する不信任決議案を衆院に提出しました。衆院本会議では公明、共産、みんな各党なども賛成する見通しですが、民主党などの反対多数で否決されそうです。自民党はなんでこんな馬鹿な決議案を提出したのでしょう。ビデオ流出は『悪』との判断があるかです。こんな民主党、仙谷官房長官を擁護するような決議案は直ちに撤回すべきなのです。

 ビデオを流出させた神戸海上保安部の海上保安官(43)は国民的英雄なのです。中国漁船が意図的に巡視船に体当たりを食らわせたことはこのビデオ公開で全世界に明らかになりました。非は一方的に中国側にあることがこのビデオ公開ですべての人が納得できたのです。日本は尖閣諸島に領土問題は存在しない、と主張しているのに、領海侵犯の体当たり船長を無罪釈放しました。韓国は自国の排他的経済水域を侵した中国漁船員を年間5000人も逮捕しています。日本がたった一人の、それも巡視船に体当たりし、巡視船を損傷した船長を逮捕しても世界の世論は圧倒的に日本に味方します。「中韓には領土問題が存在しないから」と知ったかぶりをする人もいますが、とんでもない。暗礁であるパラン島(スコトラロック)をめぐり激しく対立しています。なぜか日本の報道機関はこの問題について取り上げませんが、いずれ機会を得て詳しく解説しようと思います。

 このビデオはもともと国家機密ではありません。沖縄沖の北朝鮮自爆沈没船事件、能登沖の不審船事件のときは海上保安庁は即時ビデオを公開しました。今回に限り中国よりの民主党政権が公開ストップを掛けたのです。しかも海上保安庁職員であるなら誰でもビデオを閲覧できる状態にあったようです。国民の知る権利を保障した海上保安官は立派な行為をなした人です。その上司である馬淵澄夫国土交通相になんらの落ち度はありません。責められるのは中国船長を釈放し国益を損じてしまった仙谷官房長官とその上司の管総理大臣なのです。立派な部下を持った馬淵澄夫国土交通相はむしろ褒められるべきなのです。その馬淵澄夫国土交通相の不信任決議案を出す自民党は問題の焦点をまったくわきまえていません。

また沖縄・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突のビデオ映像流出事件で、東京地検と警視庁は15日、事情聴取を続けてきた神戸海上保安部の海上保安官(43)について、証拠隠滅などの恐れはないと判断し、逮捕を見送り、任意捜査を続ける方針を決めたそうです。今後は国家公務員法(守秘義務)違反容疑で警視庁捜査1課が在宅のまま捜査を続け、同地検に書類送検、検察当局は送検後に改めて協議し、11月中にも刑事処分を決めるそうです。これも変な話でビデオ映像流出は守秘義務に違反しません。ビデオそのものは国会議員の一部に閲覧させており、従来の例では海保が公開しているからです。守秘義務命令も出ておらず海上保安官に落ち度はありません。仮にあっても微罪です。それよりも国民の知る権利を守った功績の方が何百倍も大きいのです。小の虫を生かすために大の虫を殺してしまったら何の意味もありません。一刻も早くこの海上保安官を復職させるべきです。そして記者会見を開いていただき、彼の思うままを国民に語ってもらうことです。

一案があります。今度のノーベル平和賞授賞式にこの海上保安官を日本代表として派遣するのです。そうすれば日本が平和愛好国家だと世界に知らしめることができるでしょう。

2010年11月14日日曜日

辞めるべきは仙谷官房長官

  ◆膨張国家、中国の怨念 その29



  2日間も実質的にお休みをいただきありがとうございました。引き続き尖閣諸島問題を申し述べます。

  さて「その28」で申し上げた通り、漁船衝突ビデオの非公開は完全に仙谷官房長官の中国との密約であり、しかもその密約にも関わらず中国側はレアアースの対日輸出禁止、各級レベルの交流禁止、反日デモの強化などを仕組んできました。密約は日本側の一方的譲歩で、これらのことを「しない」と中国側に約束させていないんです。こんな密約なんてあるのでしょうか。結果的に日本の領海内で巡視船の見ている前で密漁し、巡視船に体当たりして損傷を追わせた中国船長は無罪釈放、その様子を税金で記録したビデオを公開した海上保安官は事実上の拘束、という事態になったのです。中国人には優しく日本人には厳しい、という理解のできない現象が今、目の前にあります。その上、海上保安庁長官にはビデオ流出を理由に退職を迫る、という変なことになっています。退職するのは仙谷長官であり、褒められるのは海上保安官というのが国民的常識でしょう。仙谷長官の解職を求めるデモに参加したい気持ちで一杯です。

  ビデオを公開したユーチューブなどに寄せられた声を紹介します。sengoku38とは投稿海上保安官の投稿ネームです。

犯罪を犯した中国人船長は無罪
その犯罪動画を広めた日本人がもし有罪になれば
日本政府はどのくにの政府なのか

全ては日本政府の対応が問題だ。
そして正義感強い保安官が逮捕され裁かれるのは我慢ならない。
公務員の立場として政府の方針に逆らって映像を流失したことは許¬されざることかもしれない。
しかし、中国の傲慢さ、弱腰な日本政府を国民は歯痒い思いでみて¬いたのだ。
日本政府が毅然と対応していれば、彼を「犯罪者」にすることもな¬かったのだろう。
本当に裁かれる必要があるのは今の政府かもしれない。
民主党よ我々をどこに導こうというのだ。

これでほんとに逮捕するなら国家として腐ってる
民主党が日本国に尖閣諸島に於ける領土問題が存在しないというの¬なら、
犯人を何故釈放したんだ。犯罪者を無罪放免、国民の知りたかった¬映像を自己を犠牲にして公開したsengoku38を逮捕、この¬内閣は全く何をやっているんだ!
これでは、北朝鮮の金正日も驚く独裁政権と同じレベルだww


映像は元来我々国民が知るべきものであり、国民全体の倫理に反しない。
sengoku38氏は国民の知る権利に奉仕した「英雄」であり、むしろ中国の顔色伺いをし、変な隠し立てをし続けた、菅、仙石¬は国民に対し謝罪をし、全編を直ちに公式に公表せよ。これは機密でもなんでもなく日本の国益そのものである。

今回の事件は「流出事件」ではなく「隠蔽事件」だ!!

情報を漏らしたことは、良くない事と思いますが、
国民に内容を隠し船長を帰した「民主党」はもっと
悪いし犯罪だ。なぜ危険な任務で対応した海保を
犯罪といえるか?。
そもそもありのままを国民に公表しない民主党の
怠慢だ!。
国民に事実を公表した海上保安官を助けるように
「署名活動」をしよう。

犯罪者である船長を釈放して 隠ぺいされた真実を公開した者を逮捕するのは明らかにおかしい。 このビデオは最初から世界に向けて公開するべきだった。 sengoku38は政府に代わって国民のために 正しいことをしただけだ。 劉暁波氏のノーベル平和賞授賞式に 中国政府から日本政府に出席しないよう要請があったが 民主党はまた犬みたいに従ってしまわないか心配だ。 国民一人一人ができることをするのが大事だと思う。 中国製品の購入を止める、 インターネットでコメントする、 周りの人と議論する、 投票に行く、 デモに参加する、(先週の反中デモはなぜ大手メディアで報道されない?) 等。 何もしないよりは全然良いと思う。

sengoku38 に国民栄誉賞を贈ってくれ!

sengoku38氏 自首されましたね
本当にお疲れ様です そして国民に現実を見せてくれて、ありがとう。
もしあなたの行為が無かったら火の手が上がるまで国民は気が付か¬なかったでしょう。
巡視船に衝突した中国漁船の映像公開に、日本政府は 「 中国が反発する 」と及び腰。
これは、防犯カメラの映像を 「 犯人が嫌がる 」 と公開しないのと同様、暴力団の不法行為に脅え、警察にも届けられない状況と同じで、犯罪者側の思う壺なのだ。

中国は録画映像の公開により、蛮行と無法な主張が世界に知れ渡るのを極度に恐れている(ブログより)

2010年11月12日金曜日

引用、参考資料ご紹介

  12日はフルに取材活動をした結果、執筆時間がなくなりました。誠に申し訳ありません。これまでの資料のご紹介で勘弁ください。ほんとうに申し訳ありません。

  前掲分を除くこれまでの主な引用、参考資料

  世界日報
  『侵略と戦慄 中国4000年の真実』 杉山徹宗 祥伝社
  www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/1099/tibet.html
  せと弘幸Blog
  『中国を追われたウイグル人:亡命者が語る政治弾圧』 水谷尚子 文藝春秋
  WWW・ニュース
  『蘇る古代史』 豊田有恒 青春出版社
  『竹島密約』 ロー・ダニエル 草思社 
  AFPBBニューズ

  <お断り>13日(土)は急な大阪出張が入ってきました。時間的にとても出稿の余裕がありません。申し訳ありません。13日はお休みとさせてください。
                           清雅坊 

2010年11月11日木曜日

仙谷官房長官は中国の代弁者?

◆膨張国家、中国の怨念 その28

    ウイグルでの中国核実験続きを書きたかったのですが、またまた尖閣諸島問題が急変しました。漁船体当たりのビデオ記録が流出し海上保安官が事情聴取を受けているのです。我々国民はこの海上保安官を政府の牙から守らねばなりません。

 日本の漁業専管区域で、しかも巡視船が見ている前で魚網を巻き上げ漁獲、さらに巡視船に体当たりして損傷を与えた中国船長は無罪で、その様子撮影したビデオを公開した海上保安官が有罪ならば日本政府は誰の政府でしょうーこれが本日、私の言いたいテーマなのです。指揮を執った仙谷官房長官は中国の代弁者なのでしょうか。

   私はこれまで2回にわたって即時、問題テープは公開すべきだ、と申してきました。非公開とする理由がまったく見つからないからです。中国漁船船長送検段階では裁判資料として非公開、という理由も考えられましたが、釈放してしまった以上、その必要性はまったくないのです。ビデオは国民の税金で撮影され、撮影対象は巡視船の公務中の出来事です。秘匿する理由はまったくありません。なぜ隠すのか政府の答弁では意味不明ですし、各マスコミもその理由を明確化できませんでした。

   ところが11月8日付けの毎日新聞によると

尖閣沖問題で、仙石氏は、民間コンサルタントである篠原令氏に中国との橋渡しを依頼した。その結果、細野剛志氏らが中国側の当局者と会談し、「衝突事件のビデオを公開しない」、「仲井真(沖縄県)知事の尖閣諸島視察を中止して貰いたい」との先方の要求に、仙谷官房長官が同意したのだという。

   という事情が判明しました。このニュースソースを探り出した毎日新聞の記者に心から拍手喝采を送ります。記事ではそっけない書き方がしてありますが、要は中国側の要求に仙谷官房長官が事件の不拡大など日本側の要求を出さずに同意してしまったのです。この結果、フリーハンドを得た形となった中国側はレアアース輸出禁止、日中間交流の制限、反日官製デモの拡大など好き放題のことを始めました。

   中国の要求は呑んだのに日本の要求は何ら求めない、こんな外交交渉があるのでしょうか。この間、外務省は交渉の場所からはずされ、結果的には二重外交の形となったのです。二重外交なら相手国は自分の組し易い方と交渉します。二重外交は絶対にしてはならぬ、というのが外交の掟だということを仙谷官房長官は知らなかったのでしょうか。

   なぜ仙谷官房長官が中国側に白紙降参してしまったのか、現時点では不明です。尖閣沖問題は相手の言うなりになれば自然に収まる、と簡単に思ったとしか考えられません。仙谷氏は民主党員です。民主党は「中国は社会主義国家で、戦前の帝国主義国家のように領土拡大は求めない」と信じきっているとしか思えません。 

2010年11月9日火曜日

ずさんな核防護索

◆膨張国家、中国の怨念 その27

    ウイグルで中国核実験で19万人が死亡したことは大きなショックのはずですが、なぜか一般にはあまり知られていません。被爆者も実に129万人に達しているのです。この数字がいかに大きなものであるか、アメリカによる広島原爆投下の被爆死は14万人、被爆者の数は不明ですが、サイト「原爆遺構・碑めぐり」によると直接の負傷者は7万9000人、当日広島市には35万人くらいの人がいたとみられ、その後の救援活動などで2次被曝した人も相当あったことから、30万人台の被爆者がいらっしゃった、と私は推定しています。

    広島、長崎での原爆投下が世界的にあれだけ問題になっているのに、それをはるかに上回る被害が出ているのに、国際的に問題になっていないのはなぜでしょう。しかも広島、長崎の場合は戦争での惨事でした。それが平和時でのしかも事前に日時の分かっている実験でこのような大被害が出ているのです。被爆国日本のマスコミはなぜ取り上げないのでしょう。中国が圧力をかけたのでしょうか。

  いろいろ調べているうち、読者から2009年4月30日付けの産経新聞に下記の記事が載っていた、と教えてくれました。ただ日付はあやふやなところがある、とのことです。その記事を紹介します。



  中国が新疆ウイグル自治区で実施した核実験による被害で同自治区のウイグル人ら19万人が急死したほか、急性の放射線障害など甚大な影響を受けた被害者は129万人に達するとの調査結果が札幌医科大学の高田純教授(核防護学)によってまとめられた。高田教授は、中国で1996年までに行われた46回の核爆発の、爆発威力や放射線量、気象データや人口密度などをもとに被害を推定。ガンマ線やベータ線、アルファ線などを放射する、大量の「核の砂」によって、周辺に居住するウイグル人らの急性死亡は19万人と試算した。甚大な健康被害を伴う急性症は129万人のうち、死産や奇形などの胎児への影響が3万5000人以上、白血病が3700人以上、甲状腺がんは1万3000人以上に達するという。また、中国の核実験は、核防護策がずさんで、被災したウイグル人に対する十分な医療的なケアも施されておらず、129万人のうち多くが死亡したとみられる。


  日本のマスコミも無関心でなかった、とほっとしています。それにしても事実関係だけを報道しただけで、解説や抗議行動など関連のニュースがないのはマスコミの暗部を見た感じがしました。しかも広島をはるかに上回る被害が出ているのに原水爆禁止諸団体、被爆者団体、広島、長崎両市、各政党など動きがさっぱりないのはいかがなものでしょう。『中国』という”社会主義国家“におもねているのでしょうか。

@あす水曜日は休刊日です。お休みとさせてください。

2010年11月8日月曜日

漁船衝突ビデオの即時公開を!

◆ 膨張国家、中国の怨念 その27

    7日(日)は京都出張のためお休みをいただき、ありがとうございました。お休みをいただいている間に尖閣諸島問題は大きく変化しました。衝突ビデオの映像流出事件です。本来はウイグル問題の続きを取り上げるべきなのですが、急きょ予定を変更して尖閣諸島問題に復帰したいと思います。

  9月28日(火曜日)付けの本欄「中国、竹島占拠を徹底研究」 で「漁船衝突ビデオは一切、編集することなく全世界に公表すべきだ」と申しました。しかし民主党政府はビデオの存在を認めながらも中味の公表は一切避けてきました。元新聞記者として各メディアの報道を注意深く見守ってきたつもりですが、なぜ政府が公表を避けているのか具体的な理由は示されていません。わずかに漁船船長の公判用にそれまでは伏せていく、というのがあるだけです。船長が「地検の判断」という理解不明の理由で釈放された以上、ビデオの内容を隠しておく必要はまったくないのです。

  政府は公表しない理由を具体的に発表していませんし、マスコミ各社もその理由を追及しようとしていません。隠しておく理由がぜんぜん分からないのです。この間、中国の態度は180度転換しました。当初は「ビデオを公表すべきだ」と激しく日本政府を非難しながら、ビデオの内容が中国漁船が意図的に巡視船に体当たりした、と分かると「公表すれば日中間の信頼を損ねる」と日本政府に圧力を加える始末。中国は真相解明努力でなく自国利益優先思想の現れが如実です。

  ビデオは国民の税金を使って撮影された貴重な記録です。保存するのに意味があるのでなく国民に発表してこそその存在理由があるのです。衝突事件の真相を解明する上でもそれは絶対必要なことです。ある元左翼の闘士は「中国に贖罪感を持つ民主党政権が国益を損なっても中国に一定の配慮をしておこう、という措置だ。親中国のマスコミもそれにのって公開を主張しないのだ」と言っていました。このようなことを言わせないためにも公表は絶対に必要なのです。

  船長についても「海上民兵の将校」「酔っ払い操船」「もうけ主義特攻隊」など様々なことが言われましたが海上保安部は沈黙を守ったままです。真相を公表していません。ビデオをみれば多少でも問題点は分かるでしょう。一刻も早く全ビデオを公開すべきなのです。

  それからもう一つ問題点があります。それはビデオを流出させた“犯人”の捜査です。マスコミは福岡高等検察庁が乗り出す、と報じていました。しかしそこまでする必要があるのでしょうか。たかがビデオの流出です。たとえば公開前のテレビドラマの流出で高検が動くのでしょうか。テレビドラマの流出は制作者という被害者があります。被害者があるにもかかわらず民事という側面もあり、公権力はなかなか動きません。しかし漁船衝突ではビデオ公開によっての被害者はありません。ビデオ公開を拒否し続けてきた政府の面子があるだけです。面子救済のため高検が動く必要があるのでしょうか。

  国民が納得できる理由で公開されていないビデオをユーチューブに発表したその人こそある意味では真の愛国者なのです。その人は愛国的気分で公表したのでなく、ただ面白半分で公表したのかもしれません。しかしビデオの公表で衝突事件の真犯人は中国漁船と分かってしまったことは、日本国家という利益につながります。国益より中国に配慮するという民主党政権の反国民的態度こそ問題なのです。自分たちの外交音痴を覆い隠すため微細な事件を高検という公権力で捜査するその態度こそ非難されるべきでしょう。

   お断りしておきますが、そのビデオを私は残念ながら拝見していません。「ビデオの公表で衝突事件の真犯人は中国漁船と分かってしまった」というのは単なる受け売りです。

    結論を申しますと「犯人探しはやめて衝突ビデオを無編集のまま即時、公開すべき」ということです。皆様はどうお考えですか。

2010年11月6日土曜日

148万人が被爆、被曝死

◆膨張国家、中国の怨念 その26

   昨日、(中共の暴政により)東トルキスタン全体でこれまで100万人の死者が出たといわれています―と書きました。しかし実際はそれだけにとどまらず中国の核実験のために19万人のウイグル人が死亡、白血病などで129万人が被爆している事実があるのです。「WWW・ニュース」の2009/07/30(木) 記事を引用します。


   米国で最も人気の高い科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」7月号が、中国の新疆ウイグル自治区で中国当局が実施した40数回の核爆発実験の放射能により、数十万ものウイグル住民が死亡した可能性があるとする記事を掲載した。

   記事は、ウイグル人医師のアニワル・トヒティ氏と札幌医科大教授で物理学者の高田純氏の合同調査結果を基礎に書かれたもの。

   「サイエンティフィック・アメリカン」7月号は、
「中国の核実験は多数の人を殺し、次世代を運命づけたのか」
「中国が40年にわたり核爆弾を爆発させたことで、放射能の雲は住民の上を覆った」
という見出しの記事を掲載した。

   同記事はまず、トヒティ医師が新疆ウイグル自治区で1973年の子供時代、3日間、空が黒くなり、土砂のような雨が降ったのを目撃し、後年、それが核爆発の結果だったことを認識したと指摘。その上で「シルクロード上のロプノル実験場における、1964年から96年までの40数回の核爆発による放射能の結果、数十万の住民が死んだ可能性がある」と報じた。

   記事はさらに、現在、英国やトルコを拠点にウイグル人の放射能被害を研究するトヒティ医師が、高田教授と「ロプノル・プロジェクト」という共同研究を進めているとし、高田教授の「新疆ウイグル地区で放射能汚染のために19万4千人が死亡し、120万人が白血病などを病んだ」という算定を伝えた。

   「サイエンティフィック・アメリカン」は米国だけでなく国際的評価が高く、同誌が今回、事実として正面から伝えた「シルクロードの核汚染」は、それを否定してきた中国政府にも厳しい詰問となる。


   高田氏はその後の講演などで19万人が死亡、129万人が発病、被害者合計は148万人になるーと発表されています。これに対し中国は報道規制をし、一切を伏せています。社会主義国でこんなことが許されるのでしょうか。

   <お断り>7日は京都出張です。残念ながら休刊とさせてください。

2010年11月5日金曜日

中共、ウイグルに侵攻

◆膨張国家、中国の怨念 その25

   中共のチベット侵略の話、いかがだったでしょうか。6歳の少年を政治犯に仕立て上げる話など書きたいことはまだまだありますが、ウイグルも書かなければなりません。中共はウイグルにも侵略の軍を推し進めたのです。ウイグルというと皆様は何を思い浮かべるでしょう。NHKのシルコロードをご覧になった方はトルコ系の風貌をした美しい女性が弦楽器を奏でたり、一枚布の円形の帽子を被った中年男性がナンを焼く姿などを思い浮かべるかも知れません。アジア民族とはちょっと風貌が違うインド・ヨーロッパ語族の民族がウイグル人なのです。ウイグル人が現在の中華人民共和国支配下でもっともたくさん住むのが新彊ウイグル自治区なのです。なぜ中国がインド・ヨーロッパ語族の人たちを支配下に置くのか、それは共産中国が国共内戦後の1949年に突如、半独立国家となっていた新疆省(内戦前は形式的に中華民国に所属)に侵攻。共産党支配下の中国に組み入れ、1955年に新疆ウイグル自治区を設置したためなのです。

   新彊省は中共に侵攻されるまでは中華民国に属しながらも、漢民族の省主席の下に半独立的な領域支配が行われていました。しかし漢民族の支配をよしとせず1933年と1944年の二度にわたって土着のウイグル人を中心としたムスリム(イスラム教徒)によって民族国家東トルキスタン共和国成立が図られましたが、漢民族の力が強く独立はできませんでした。

   ウイグルの歴史は複雑です。もともとはトルコ人の土地を意味するトルキスタンと呼ばれ、現在の中国国境を越えた幅広い地域を領有、中央アジアの文化圏に属してきました。ウイグル人を中心とした諸民族が国家を建ててきましたが、漢代と唐代には、中国の直接支配下に置かれた時期もありました。唐代後期、ウイグル帝国が成立、9世紀、ウイグル帝国が瓦解したのちも、ウイグル人の残存勢力による支配が続きました。13世紀、モンゴル帝国の勃興によりその支配下に組み込まれ、やがて自立します。

   トルキスタンの東部、東トルキスタン(現在の新彊ウイグル自治区)は18世紀、満州人の建てた清の支配下に入りますが19世紀には各地で反清反乱が相継ぎ、清朝の支配は一時崩れます。しかし再征服されてしまいます。ウイグル、東トルキスタンは独立したり支配されたりの連続だったのです。



   しかし、1949年の中共による侵攻は悲惨な結果を生みました。侵攻直後に開始された大躍進政策とその影響による飢饉のため、中国全土では数千万人ともいわれる、大規模な死者が出たのです。当然、辺境のウイグルの経済及び住民生活もより多くの大打撃を受けました。情報が統制されているため明確なことは分かりませんが、多くの餓死者が出たようです。

   1962年には、中国共産党による支配に絶望した国境地帯の住民7万人以上がソ連領内に逃亡しました。また、1966年には自治区内に文化大革命が波及し、モスク、伝統文化の破壊や漢人紅衛兵同士の武装闘争により、混乱に拍車がかかったのです。2009年にはウイグル人と漢民族の対立が激化し、ウイグル騒乱が発生。武装警察が発砲し、世界ウイグル会議によると死者800人、中国当局によると死者156人となる惨事となりました。

   これらの中共による対ウイグル政策は新彊民族浄化作戦と呼ばれ、東トルキスタン全体でこれまで100万人の死者が出たといわれています。少数民族を虐殺することが共産主義の本旨なのでしょうか。

2010年11月4日木曜日

人口が2割減る

◆膨張国家、中国の怨念 その24


  チベット亡命政府の集計によると、1950~'84年の間に発生した、武装蜂起による犠牲者、中共統治政策に起因する餓死者、獄死や強制収容所での死者、拷問による死者や処刑者、自殺者等の合計が約127万7400人に達したといいます。これは全人口の約2割に当たる膨大な犠牲者数なのです。中共侵略前のチベットは貧しくはありましたが、その歴史において人為的な飢餓を経験したことはなかったのです。

   この数字はノーベル平和賞を受賞した国際的人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も認めていて、後に国際司法裁判所が「計画的組織的大虐殺」と称した通りなのです。多くのチベット難民が雪と氷に覆われたヒマラヤ山脈を命をかけて脱出、インドに10万人、ネパールに2万人などが居住、欧米各国やアジアなど多数の国々にも分散居住し、貧しい生活を余儀なくされています。

    またチベット亡命政府によると、チベットの監獄には、今なお数千人以上の「政治犯」が監禁されています。亡命者は今も後を絶たず、ヒマラヤに配置された中共の国境警備兵は越境者を無差別に発砲。逮捕された女性は強姦されるのが通例となっているとのこと。人権も何もあったものではないのです。

    1978年から始まった改革開放政策によって、中国共産党のチベットでの残虐行為は大幅に緩和されました。しかし2000余年かけてチベット人が築き上げたものを根本から徹底的に破壊しつくしてしまいました。6000箇所以上あった寺院は完全に破壊され、部分的被害にとどまったのはわずか8箇所しかなかったのです。改革開放以来、大規模な殺戮はなくなり、表面上は政府に協力する公認宗教を信仰することも可能になりました。破壊された寺院の再建や修復も部分的には進んでいます。

   しかし1989年にはラサでチベット人による大規模なデモが行われ、これに対し中共軍が数百人のチベット人を虐殺しています。そのときのチベット自治区の共産党書記が現在の胡錦濤国家主席なのです。胡錦濤に反省の弁はまったくみられません。中華人民共和国は正真正銘の帝国主義国家なのです。

2010年11月2日火曜日

チベットで民族同化政策

◆膨張国家、中国の怨念 その23

    中共の政策はチベット人を弾圧するだけにとどまりません。中国本土から大量の漢人の移住が始まったのです。漢人の移住は漢人にとって強制的なものだったか、自主的なものだったか言論が統制されているため、その真相は分かりませんが、多分、その双方が事実だったようです。中国本土で圧政のため食えなくなった人々が移住してきたことは確かです。彼らは共産党の庇護の元、チベット人の住宅、商店、農耕地、放牧地を取り上げ、自分のものにしたのです。特に殺されたチベット人の家は格好の住家で、残されたチベット人の妻子を追い払い、住み着きました。

   住宅、農地、放牧地などを奪われた人々はチベット高原やラサ市内をあとどもなく放浪し、多くが餓死人口が減りました。それに対し雲南省、青海省などに強制的に編入されたチベット東部から次第に漢人人口が増え、今はラサ市内でも漢人人口が過半数になっています。チベット西部の一部を除いて多くの地域がチベット人より漢人が多くなってしまいました。

   この漢人流入政策は「民族同化政策」と呼ばれ、現在の人口比ではチベット人650万人に対し、漢人750万人と漢民族の方が上回るという結果になっています。文字道理「植民地化」政策なのです。

   こうしたなか発生したのが1966年5月にチベットに押し寄せた文化大革命の嵐でした。8月には紅衛兵(ほとんどが漢人)の数は1万人に達し、最盛時には十数万にもおよびました。漢人紅衛兵は数少なくなっていたチベットの寺院、文化施設を徹底的に破壊し、通りの名称を変更し、個人の家に入り込んで祭壇や民俗家具などをかたっぱしから壊したり奪っていきました。民族衣装を着ることもペットを飼うことも香をたくことも、伝統の模様を描くことも全て禁止されました。経典、写本、彫像などはあとかたもなく破壊され、焼かれました。チベット語自体も弾圧の対象となり、会話以外ではありとあらゆるチベット語の書物、教科書、宗教経典が廃棄されたのです。チベット語で印刷されたものといえば毛沢東語録と共産党の宣伝文書ぐらいになってしまったといいます。全ての僧侶は「反動分子」として扱われ、罪名を書いた板を首かけられ、市内を引き回されました。

   悲劇はチベット人だけではありません。遊牧民の色彩の強いチベット人は優しい民族であり、犬など多くのペットを飼っていました。それを紅衛兵は片っ端からチベット人から奪い、なんと食べてしまったのです。漢民族はもともと食犬の悪習がありましたが、文化大革命でも遠慮なくこの悪習を実行したのです。何の罪悪感もなかったことでしょう。

  チベットのありとあらゆるものが破壊されたこの悲劇の大混乱は10年間も続いたのです。


@明日3日は水曜日。水曜日は作務が忙しく休刊をお願いしています。3日付けはお休みです。

2010年11月1日月曜日

ダライラマ法王、インドに亡命

◆膨張国家、中国の怨念 その22

   1959年2月、中共はダライラマ法王を、3月10日に開催される観劇に招待しました。その際、警備をつけないようにという注文をつけました。これを聞いたラサ市民の間に法王が拉致されるのではないかという不安が瞬く間に広がったのは当然です。3月10日当日、3万人のラサ市民が市の中心部にあるノルブリンガ宮殿に集結、「チベットに独立を、中国人は帰れ」とシュプレヒコールを叫びました。法王は観劇への出席を取りやめることにしましたが、大群衆は翌日もその翌日もノルブリンガ宮殿を去りませんでした。法王を敬愛し守ろうとする意欲が強かったのです。これに対し中国共産党は軍を増強し、事態は一層緊迫の度を増しました。3月16日、ダライラマ法王はついに決意して、一般庶民に変装してノルブリンガ宮殿を脱出し、インドへと亡命したのです。

   法王不在が分かった3月19日、ついに大惨劇が起こりました。中共軍は事実上非武装のノルブリンガ宮殿に一斉に砲撃を開始。集中砲火は41時間継続し、宮殿は蜂の巣のように破壊され、脱出できないまま何万人という民衆がその場で虐殺されたのです。3月28日にはチベット政府が解散させられ、中共が勝手につくったチベット自治区準備委員会に統治されることとなったのです。中共が押し付けた17条条約さえ完全に無視されました。その後も中国共産党、中共軍による残虐行為は絶え間なく続きました。1959年4月には「民主改革」運動が始まり、ありとあらゆるチベット人が摘発の対象となりました。チベット人は出頭を命ぜられ、投獄、殺害されました。比較的軽いものでも数ヶ月間の洗脳教育を受けさせられました。

   以下はダライラマ法王が難民からの報告をもとにまとめた資料の抜粋です。

   「彼ら(チベット人)は銃殺されたばかりでなく、死ぬまで鞭打たれたり、はりつけにされたり、生きながら焼かれた。溺死させられたり、生きたまま解剖されたり、餓死されたものもあった。絞め殺されたり、首をつって殺されたり、熱湯によるやけどで殺された。また、あるものは生き埋めにされたり、はらわたを取り除かれたり、首をきられたりして殺された。こうした殺人行為はいずれも公衆の面前でなされた。村人たちはそれを見物するように強制された。自分の家族のものが強制されて見ているその目の前で、ゆっくりと殺されていったのである。さらに小さな子供たちは、その両親を射殺するように強制された」。

    これが共産主義を標榜する党、軍のすることなのでしょうか。共産主義とは無縁の帝国主義そのものです。


   前掲を除くここまでの引用、参考資料

東京新聞 各号
サイト「花崗岩のつぶやき」
webページ「現代コリア」
サイト 「大紀元」
サイト 「現代中国ライブラリィ」
サイト 「歴史と国家」雑考 (辻本武)
共同通信ホームページ
サイト 「打倒中国共産党」
『中国はいかにチベットを侵略したか 』 マイケル・ダナム著  講談社インターナショナル
サイト ダライラマ法王日本代表部事務所

2010年10月31日日曜日

チベット人に熱湯をかける中共兵

◆膨張国家、中国の怨念 その21

   チベットが中共に占領されるとチベット人への弾圧が始まりました。当時、人口7万人のチベットの首都ラサに2万人以上の中共軍が進駐し、ラサ市民は住宅と食料の提供を強制され、食糧難と猛烈なインフレがラサを直撃しました。7万人の人が2万人もの兵隊の食料を供給できるわけがないのです。さらにチベットへの支配権を確立するためチベットと中国を結ぶ道路建設が始まり、大量のチベット人が無報酬で強制労働をさせられました。数千人の命が奪われました。また、中国共産党は占領と同時にチベットの青少年に、チベットの宗教、文化、習慣を侮辱し、共産党を賛美する教育を強制したのです。

   チベット人の不満が日増しに高まる中、ダライラマ法王は1954年、北京を訪問し、毛沢東、周恩来、劉少奇、朱徳ら中国首脳と会談しました。このとき中共はダライラマ法王にウソをつき、中国との協調がありうるような示唆をしました。だがその後にチベットでは、人類がかつて経験したことがないような悲劇が襲ったのです。「17条協定」は、名目上チベットの自治を認めてチベットの風俗伝統を尊重する事が確認されていましたが、実際に中共が行った事は、チベット民族文化への徹底的な破壊活動だったのです。中国共産党の悪政、度重なる条約違反にチベット人の怒りは頂点に達していました。中国に近い東チベットでは反乱が続発、これに対し中共軍は見せしめのため、何千という寺院や町を砲撃や爆撃で破壊、寺院の仏像や経典を容赦なく略奪したのです。東チベットのいたるところで中共軍による虐殺が行われました。
そのときの模様を『中国はいかにチベットを侵略したか』(マイケル・ダナム著 講談社インターナショナル)から引用します。

  「妻、娘、尼僧たちは繰り返し強姦されまくった。特に尊敬されている僧たちは狙いうちにされ、尼僧と性交を強いられたりもした。ある僧院は馬小屋にされ、僧たちはそこに連行されてきた売春婦との性交を強いられた。拒否した僧のあるものは腕を叩き切られ、「仏陀に腕を返してもらえ」と嘲笑された。大勢のチベット人は、手足を切断され、首を切り落とされ、焼かれ、熱湯を浴びせられ、馬や車で引きずり殺されていった。アムドでは高僧たちが散々殴打されて穴に放り込まれ、村人はそのうえに小便をかけるように命じられた。さらに高僧たちは「霊力で穴から飛び上がって見せろ」と中共兵に嘲られ、挙句に全員射殺された。おびえる子供たちの目の前で両親は頭をぶち抜かれ、大勢の少年少女が家から追われて中共の学校や孤児院に強制収容されていった。
 貴重な仏像は冒涜され、その場で叩き壊されたり、中国本土へ持ち去られていったりした。経典類はトイレットペーパーにされた。僧院は馬や豚小屋にされるか、リタン僧院のように跡形もなく破壊されてしまった。リタン省長は村人の見守る中で拷問され、射殺された。何千人もの村民は強制労働に駆り出されそのまま行方不明になっていった。僧院長たちは自分の糞便をむりやり食わされ、「仏陀はどうしたんだ?」と中共兵に嘲られた」。

  ヒットラーとは別の次元の人類史上、かつてない残虐さを中共軍は示したのです。

2010年10月30日土曜日

有史以来一貫して独立国だったチベット 

   ◆膨張国家、中国の怨念 その20

   それではチベット史をひもといていきます。

   チベットには約2100年の歴史があるといわれていますが、日本や中国と同じく最初の数百年は神話と史実の境界が曖昧なので、チベットの歴史はソンツェン・ガンポが仏教に基礎をおく王国を築き、文献がきちんと残っている7世紀が有史開始と考えられます。中国では唐王朝が栄えた時代です。その唐王朝をなんとチベットは西暦763年に征服、唐の首都長安を占領し、一時的に唐はチベットの朝貢国になったのです。その後、唐は西にチベットを追い払い、朝貢国を脱しました。

     その後、中国西部から中央アジアにかけては諸民族が興亡し流転を繰り返しましたが、チベット族は自らの支配地域を守り続けました。チベットでは17世紀にダライラマ制度がスタートし、それ以来ダライラマは転生を繰り返して現在では14世に至っています。中国では満州人による清が成立すると清は1727年にチベットの首都ラサに駐蔵大臣2人を置き、現代でいう大使館を開設しました。これをもって現・中国政府はチベットが清の支配下に入った、と主張しますが、大使館を置いた国が中国領土となるなら、世界はすべて中国領土ということになり、文字通り噴飯物です。その後、チベットは英領インドと国境条約を結ぶなど一貫して独立国家として主権を行使してきました。20世紀前半当時、チベットは日本、中国、タイと並んで欧米の植民地化を免れたアジアでも数少ない独立国家のひとつであったのです。

   第2次世界大戦ではイギリス、中華民国がチベットに日本に対し宣戦布告するよう強く求めましたが、チベットはこれを拒否、中立を通しました。日本にとって真に信頼できる国でもあったわけです。

◆中国共産党軍がチベット侵略

   第2次世界大戦終了後、中国本土を制圧した中共軍(中華人民共和国軍、中国人民解放軍)は 1950年10月7日、突如、チベット東部へと侵略戦争を開始しました。チベット国境警備隊と現地の義勇軍が抵抗したものの、武器・人員ともに圧倒的な中共軍を相手に一部部隊は全滅、退却を余儀なくされました。その当時、中共軍は100万の軍勢を誇る一方で、チベット軍は貧弱な装備の8500人に過ぎません。最初から軍事力による勝敗は見えていました。翌年5月、チベットから北京に代表2人が派遣されました。2人はは交渉に赴いただけで、全権大使の資格はなかったにもかかわらず、中共の脅迫により強引に署名させられてしまいました。こうして1951年5月23日、チベットの平和解放に関する十七か条協定が締結されたのです。もちろんこの協定は法的に無効ですが、中共はこれをよりどころにチベットに圧制をひきます。

2010年10月29日金曜日

チベット、ウイグルを侵略

◆膨張国家、中国の怨念 その19


   10月10日付け「華夷秩序を周辺国に押し付け ◆膨張国家、中国の怨念 その8」 で今回の事件の底流をなす中華思想について触れ、「冊封体制を拒否し続けてきたウイグル、チベットは共産中国が成立後、侵略され、独立を奪われました。中華思想の偉大な実践者、それが共産中国なのです」と書きました。ところが元社会党員の方がある会合で、「ウイグル、チベットはもともと中国の領土だ、中華人民共和国が侵略したなんてウソだ。ソ連はともかく中国共産党が他国を侵略するなんてありえない」とおっしゃったそうです。ウイグル、チベットが元来、独立国で戦後、中国の侵略を受け、原状回復ができない状況をお話します。

   少し長くなりますがチベットの現状をサンケイ新聞の24日付記事で引用します。

   チベット族デモも拡大 中国語教育の強制に反発
 
   【北京=川越一】反日デモが続く中国で、少数民族による政府への抗議デモも広がりをみせている。中国語による授業を義務づける教育改革に対しチベット族が反発し、青海省チベット族居住区で火がついた学生による抗議行動が首都北京にも飛び火した。民族同化をもくろむ当局のいき過ぎた教育改革が、漢族への不信感を増幅させている。

    チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部・ロンドン)によると、青海省黄南チベット族自治州同仁県で19日、民族学校の高校生ら5千人以上がデモ行進し、「民族、言語の平等」を訴えた。20日には同省海南チベット族自治州共和県で学生が街頭に繰り出し、「チベット語を使う自由」を要求。22日には、北京の中央民族大学でも学生がデモを敢行した。

    英BBCによると、24日には黄南チベット族自治州尖扎県で民族学校の生徒に教師も加勢し、総勢千人以上が教育改革の撤回を求めてデモを強行、治安部隊が出動する事態に発展した。

     発端は9月下旬、青海省が省内の民族学校に、チベット語と英語以外の全教科で中国語(標準語)による授業を行うよう通達したことだった。教科書も中国語で表記する徹底ぶりで、小学校も対象という。

     当局の中国語教育の強化の背景には、中国語が話せないため職に就けないチベット族が少なくないという現状がある。就職難はチベット族と漢族の格差をさらに広げ、それがチベット族の当局に対する不満につながっているのも事実だ。

     しかし、2008年3月、チベット自治区ラサで発生したチベット仏教の僧侶らによる大規模騒乱が示すように、中央政府のチベット政策に対するチベット族の不満、漢族に向けられる嫌悪感は根強い。

     今回の教育改革も、チベット族学生の目には「漢族文化の押しつけ」「民族同化の強要」と映っているようだ。「自由チベット」は中国当局がチベット語の“抹殺”を図っていると主張している。

     同省共産党委員会の強衛書記は21日、黄南チベット族自治州で学生代表と座談会を開き、「学生たちの願いは十分尊重する」と約束した。中国当局が反日デモ同様、教育改革に対するチベット族の抗議デモが、体制批判に転じることについて懸念している状況をうかがわせる。

   いかがでしょう。チベットの現状がよくお分かりになると思います。中国は日本が朝鮮を統治していたときとまったく逆な施策をしています。日本が朝鮮統治を開始したとき、朝鮮では独自文化であるハングル(諺文、朝鮮文字)が消え去ろうとしていました。当時の支配者だった李氏朝鮮が「ハングルは低い文化で無くしてしまえ」と弾圧したからなのです。これに対し日本は「ハングルは朝鮮独自の文化」だとして普及に乗り出し、初等教育で教えたのです。昨年、韓国を訪問しましたが、現在の韓国はハングルのみ使われており、漢字はどの書籍をみても使われておりません。北朝鮮も同じだと聞いています。日本が朝鮮文化を守ったのです。

    文字はその国の文化です。共産中国がチベット文化を圧殺しチベットを漢族化しようとしているのは間違いありません。

2010年10月28日木曜日

利用される孔子ブランド

◆膨張国家、中国の怨念 その18

     共産中国が儒教を復活させる第3の理由は「国際社会に対する孔子ブランドの利用」です。孔子が道徳思想上、有名な人物であることは欧米諸国の人もよく知っています。中国共産党としてはこの孔子のイメージを正面に訴えることによって、中国が偉大な国家であることを周知させようとしているのです。

   その具体的行動の現われが世界的な孔子ブランドを活用した孔子学院の設立です。これについては10月14日付けで書きました。日本では2006年2月、愛知大学と中国政府が、「愛知大学孔子学院」を共同で設立、中国の王毅・駐日大使と同大の武田学長が協定書に調印、発足しました。

   孔子学院が実施している主な事業は「学生、社会人に対する中国語教育の提供」「漢語教員養成プログラム」「中国語能力認定試験、中国語教師資格認定試験の実施」「中国語コンテストの実施」などです。共産主義思想や正面切った儒教は教えてないようです。

  この孔子学院とは、中国政府が2004年から世界で数百校設置を目標に進めている国家プロジェクトです。全世界的な中国語教師の育成、中国文化のPRを目的としています。現地の大学などと提携し、現地の中国語学習者を中心に学生を集めています。教師は主に中国から派遣されています。

   中国政府は孔子学院などを利用して今後数年間で海外における中国語学習者を現在の約2500万人から1億人にする計画です。現在、英語が世界公用語的性格を持っていますが、これに替わって中国語を世界公用語としたい狙いがあるようです。

   これらの孔子学院は「孔子」の名を冠しつつも別に孔子の思想について本格的に教えるわけではありません。いわば「孔子」ブランドの利用であり、この世界四大聖人の名を客寄せに利用しているに過ぎないのです。 中国が国際的地位を高めるためには、経済、外交だけでなく、中国語の普及が欠かせません。中国政府は中国語を英語に匹敵する、あるいはそれに替わる国際言語にする目標を打ち出しています。

   このプロジェクト名を「漢語橋(中国語国際啓蒙)プロジェクト」と言い、中国語の海外普及を打ち出しことで、これを外交戦略とリンクさせています。中国政府内の「国家対外漢語教学指導小組弁公室」という部署がこのプロジェクトを担当しているとのことです。

   一国の言語をこれほど大規模に国家戦略として打ち出している国家は歴史上、中国しかありません。次世代にアメリカに変わる超巨大国樹立を中国が目指していることは識者の共通した見方です。
 
   かつて中国は文革期に「批林批孔」と称して徹底的に孔子と儒教を弾圧しましたが、孔子学院の開設に見られるように今や儒教に対するアレルギーは消え去り、この伝統倫理を自らの外交戦略や体制維持に利用することをもくろんでいることはまちがいありません。

2010年10月26日火曜日

儒教、中華圏の旗印に

◆膨張国家、中国の怨念 その17


   10月21日付で中国が儒教復活に踏み切った第2の理由として「中華圏統合の旗印にする」を挙げました。中国は明、清時代、海禁といって漢民族が国外に出るのを禁じていましたが、中華民国成立とともに漢民族の海外渡航を黙認しました。清末期から中国は戦乱が続き、多くの国民は海外に生活の糧を求めるしか、生存の場所はなかったのです。また政治的弾圧から国外移住を余儀なくされた人々もありました。その行き先はインドネシアなど東アジアの国々だけでなく北米、ヨーロッパ、インド、アフリカとほぼ全世界に及んでいます。

   戦前から日本にもたくさんきて主に物売り業に従事、横浜や神戸には中華街ができたのは皆様もご存知の通りです。移住漢民族のことを華僑といい、中国福建省・アモイ大学南洋研究院の調査によると、2009年時点で中国と台湾以外に住む華人・華僑の総数は4530万人、うち3200万人余りが東南アジアに集中しているそうです。

   一口に4530万人といいますが、これはヨーロッパではドイツ、イギリス、フランスなどなどの一国に相当する人口で、おびただしい数といえます。特にシンガポールでは住民の76.7%が華僑で、本来の地元住民はマレー系の14%しかいません。これ以外はインド系が7.9%、その他が1.4%です。いわば華僑が一国を乗っ取たわけで、漢民族の膨張するエネルギーを感じさせます。

   もちろんこれは華僑が悪いのでなく、戦前、苦力(クーリー・肉体労働者)として英国が漢人を呼び寄せ、働かせたのが原因です。隣国のマレーシアでは国民の25%が華僑で、経済力が強いため、商工業は事実上、華僑が支配しているといわれます。米国には約300万人が居住し、華僑の方が日本人より高い地位を築いているそうです。同国では議会に対する華僑のロビー活動も活発で、人口の1・5%前後に過ぎないものの国政への影響力は大きいとみられます。


   中国人はもちろん香港・台湾にも住んでおり、中国政府がこれら世界の華僑・華人を自国に有利な存在にしたい、と思うのは当然です。そのために中国本土が儒教を大切にしている、という姿をみせ、その影響力を増大させたい、と考えるのは当たり前でしょう。なかでも華僑人口比率の高い東南アジアを中華圏と位置づけ、これへの影響力、なかんずく中華圏統合の旗印、シンボルとして儒教を活用するのは国家政策として十分うなずけます。しかし共産主義と儒教をどう統合していくのか、その統合した姿をこれらの国々にどう理解してもらうのか、疑問は限りなく残ります。

        明日27日は水曜日のため、お休みとさせていただきます。

                  合掌  清雅坊

2010年10月25日月曜日

共産党を脅かす儒教

◆膨張国家、中国の怨念 その16

では中国はこの儒教化によって真の道徳を取り戻せるでしょうか。結論からいうと「否」です。中国は具体的事実は何も発表していませんが、儒教の取り入れ決定は1978年の第11期3中全会、と研究者はみています。それから約30年。中国の腐敗、汚職はますます進行しています。共同通信が流した新華社電によりますと、中国共産党規律検査委員会と監察省は、2009年1~11月に規律違反や違法行為などで処分を受けた党員や政府の官僚らが計10万6626人に上ったことを明らかにしました。このなかには政策銀行、国家開発銀行の王益元副行長(副頭取)や朱志剛元財政次官、黄松有元最高人民法院副院長(最高裁副長官)ら汚職事件に絡んだ高官の処分も相次ぎ、件数でみると1万3858件に上る贈収賄事件を摘発したことになります。

   これを日本に置き換えると人口比から日本なら、10,000人が捕まっているという、恐ろしい数字になります。しかもこれは表面化した事件だけで、実際は国民のほとんどが何らかの形で汚職、腐敗に関与しているのではないか(赤ちゃんも受益者という形で腐敗利益配分にあずかっている)という見方をする人もいます。終戦直後の日本国民すべてが闇物資に関与していた、という事実を思い出します。ちなみに闇物資に手を出さなかった判事は餓死しました。

   しかも財政担当の次官、最高裁副長官、国家を代表する銀行の副頭取というそれぞれの組織のナンバー2が捕まっているのですから、とんでもない話です。特に最高裁副長官は国民を裁く裁判官のナンバー2ですからその影響力は計り知れないはずです。中国通にこのことを話しましたら「中国国民は最高裁副長官がつかまっても当たり前と思っており、ショックはないはずだ」と語っていました。私にはその方がショックでした。

   儒教を復活させても儒教には絶対者がいないため国民の道徳基盤確立にはつながらないのです。儒教は逆に中国共産党の存在基盤さえ脅かす可能性さえあります。孔子の後継者で儒教を大成した孟子は「民を尊しと為し、社稷(国家)がこれに次ぎ、君を軽しと為す」 と説いています。この言葉は中国の現状政治に対する批判そのものといえましょう。徳治政治を理想とし、「覇道」を卑しめた孟子の思想は中国によるチベット、モンゴル占領や中国の外交戦略に対する痛烈な批判になるでしょう。

   人の上に立つ者は徳を備えていなければならならず、君子は自らの持つ徳によって民の見本となり、民はそれに習う事によって政治が行われるとする儒教の徳治主義は、そっくりそのまま中国の現状と共産党や官僚組織の腐敗と悪政に跳ね返ってくる可能性があります。中国地方都市で広がっている反日デモがいつ反政府デモに変わるのか、中国共産党も気が気でないでしょう。儒教の復活は結果的に中国共産党を窮地に追い込む可能性があります。

2010年10月24日日曜日

儒教は絶対者が不在

◆膨張国家、中国の怨念 その15


  (儒教において)「廉」は要するに「清廉潔白」だから、素直に捉えれば汚職などもってのほかとなりますが、いかにして汚職を防ぐか、という具体的な方法論にまで理論化されてはいないのですーと昨日、書きましたら「どう理論化されていないのか、よく分からない」とのご指摘を受けました。

   私も一読しまして、その通りだ、と思いました。そこで本日は「儒教はいかにして汚職を防ぐか、という具体的な方法論にまで理論化されてはいない」ことを具体的に書いてみたいと思います。


   欧米を中心にしたキリスト教国では「人間は神によってチリ、アクタで作られた」と信じています。神の前では人はチリ、アクタと同じ存在なのです。ということはすべての人間は神の前では上下のへだてなく平等です。「そんなことを言ってもキリスト教社会ではかつて奴隷制や農奴制があったではないか」という反論もあります。白人は黒人を人と認めず、動物として扱いました。だから奴隷制が成立したのです。これは後に否定されました。印刷技術が発明されて聖書を庶民でも読むことが出来るようになり、カルビン、マルチン・ルターなどによる宗教改革で農奴は否定され、社会の平等化が進みました。

   キリスト教では「モーゼの十戒」のように「人を殺す勿れ」など具体的に清廉潔白を要求します。これは一種の法です。人間に対し秩序を保つための法律と法律を守らせるシステム、つまり理論があるのです。これが欧米の社会規範となったのです。

   日本では神仏儒の混合宗教の中、神、仏という絶対的存在があり、その前では清廉潔白が必要となります。日本的儒教では天は天空にあるとみなされ、天により拘束されるのは天子だけでなく武士、庶民を含めた社会全体とされました。私が子供のころ何か悪いことをすると「お天道さまが見ているよ」と叱られました。お天道さまとは天のことです。神仏儒の3者は常に人々の行動を見ており、その最終審判はいずれ下される(たとえば閻魔様のように)というわけです。「良いことをすれば富者に、悪いことをすれば畜生に生まれ変わる」という輪廻転生の思想もありました。だから日本社会は清廉潔白を人々に要求します。

   ところが中国、韓国の儒教は天は何者をも拘束せず、ただ天子が徳を失えば易姓革命で次の王朝に交代させられる、ということだけです。前掲を繰り返しますと、「官僚や一般庶民を徳化するのは天子の役目で、天は関与しません。しかし実際には、徳のある天子なんていませんし、あってもその感化力には限界があります。仮に歴代の天子が有徳者だったとしても、側近すら徳化できたためしがないのです。宦官、廷臣といった側近にすら感化力を発揮できず、ほとんどやりたい放題にさせて国政を乱すのが王朝末期のパターンです。天子の徳は側近にすらおよんでいないのだから、あまねく万民を徳化するなどという理論はなおさらおかしい」ということになります。

   天子が清廉潔白を求めても天子の監視能力は限界がありますから官僚はそのスキをついて自分の得になる利権を求めます。天からは監視されませんから好き放題のことをします。これが中国固有の汚職体質となるわけです。「簾」が理論化されていない、というのはそのことを指すのです。

2010年10月23日土曜日

腐敗体質に気付く

◆膨張国家、中国の怨念  その14


   共産中国の腐敗のすさまじさをご理解いただけましたでしょうか。中国共産党も馬鹿ではありません。国家体制の根幹を揺るがす、中国全体を覆ったこの汚職体質に対し、おそまきながらも倫理の低下が国家を崩壊させることに気づいたのです。そこで考えました。どうすれば腐敗、汚職体制を駆除できるのかを。

   いかなる国家もその根底に一定の道徳なり倫理体系なりが無ければ健全な社会は維持できません。道徳が無ければ人間はケダモノであり、倫理無き規範無き社会は弱肉強食の世を現出させます。欧米諸国では国家の基底にキリスト教がありました。日本では神、仏、儒の複合倫理規範がありました。かつての中国では儒教が倫理道徳そのものであったのです。

   しかし中国共産党は文化大革命で古来からの伝統倫理、儒教を徹底的に排撃しました。儒教関係の多くの文物が破壊され、焼却されました。儒教の根絶は必然的に体制の腐敗を促進します。シンガポールの初代首相李光耀は、その自叙伝の中で 「中国の汚職や腐敗の根源は、文革時代に起きた正常な道徳的基準の破壊である」と指摘しています。人治の国である中国にとって犯罪や汚職に厳罰でのぞむ法制度の整備は急務ではありますが、どんなに緻密に作られた法制度も内的な規範である道徳が真空状態では機能しないことにやっと党は気付いたのです。

   彼らは儒教の復活を促進させ始めました。

   しかし儒教を復活させて約30年、でも汚職は絶えませんでした。儒家理論の最大の欠落は清廉の理論が欠如していることだ、と気付かなかったのです。その理論上の欠落が社会の際限のない腐敗の原因となっているということを、党も経営者も官僚も社会も一般民衆もすべてが理解できませんでした。欧米諸国や日本では基盤が精錬であるからこそ社会が成り立っているのです。

   たしかに、儒教というのは「四維八徳」(四維=礼・義・廉・恥、八徳=仁・義・礼・智・忠・信・孝、悌)が基本です。このなかの「廉」というのが、じつは儒教では理論化されていないのです。「廉」は要するに「清廉潔白」だから、素直に捉えれば汚職などもってのほかとなりますが、いかにして汚職を防ぐか、という具体的な方法論にまで理論化されてはいないのです。これが儒教理論の大きな欠点だといえるでしょう。

   儒教思想のなかでいちばんコアの部分と言うのは、天子という有徳者が統率者になって、万民を徳化するということに尽きます。たしかにこれが実現すれば、「廉」の理論化などは必ずしも必要ないでしょう。しかし実際には、徳のある天子なんていませんし、あってもその感化力には限界があります。仮に歴代の天子が有徳者だったとしても、側近すら徳化できたためしがないのです。宦官、廷臣といった側近にすら感化力を発揮できず、ほとんどやりたい放題にさせて国政を乱すのが王朝末期のパターンです。天子の徳は側近にすらおよんでいないのだから、あまねく万民を徳化するなどという理論はなおさらおかしい、ということになります。

  そして、現実に官僚や官僚に支配された社会が従うのは清廉の倫理ではなく、「権」と「利」の論理です。官僚の職務を考えてみれば分ることですが、「権」がなければ官僚職務は遂行出来ないのです。そして「権」は「利」と分かちがたく結びついていますから、清廉の倫理が入り込む余地はありません。官僚、そして官僚に支配された社会の行動原理は「権」と「利」の論理によって成り立っているのであって、天子(現代中国では共産党)による徳化や、曖昧な清廉の倫理で動くものではないのです。

   中国共産党はこの部分に気づかぬまま儒教化を推し進めています。

2010年10月22日金曜日

教師が生徒を殺す

◆膨張国家、中国の怨念 その14

   中国共産党がなぜ儒教を復活させるのか、その最大の理由は「道徳教育の強化と体制維持」にあります。現代中国は官の腐敗と汚職、社会倫理の乱れ、農民暴動の頻発にさいなまれていることは皆様、ご承知の通りです。中央政府役人のみならず、地方政府役人、警察・公安、司法当局、教師、党幹部、公営交通、ありとあらゆる公職に賄賂が横行し、許認可権限を持つ部門は業者と結託して庶民を絞り上げています。

   特に開発担当当局は党、業者とグルになり都市開発を推進、全国土が国有地であることを理由に庶民から無料、あるいは低価格で土地を取り上げ高層ビルを建てたり手抜き高速道を建設し膨大な不当利益を得ています。土地を追い出された庶民は放浪の徒となり社会不安の根本原因になりつつあります。

   また国民を都市戸籍と農村戸籍に分け、農村戸籍の人の都市移住を禁止。職を求めて都会にきた農民を違法を理由に極端に安い賃金で働かせ、場合によっては賃金を踏み倒すなど悪逆非道なことが絶えません。農民が公安に訴えても「訴えた」、ということを理由に逆に農民を逮捕するありさまです。公安は業者から賄賂をもらったり、党に人事異動の権限を握られ、業者と結託した党のいいなりになっているからです。

   この国上げての腐敗の一例をサイト【大紀元】から一部引用します。

              腐敗大国、中国
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2年前に殺害された15歳の息子・廖夢君を最後に目にしたのは、学校に卒業証書を取りに行くところだった。中国広東省仏山市在住の作家・廖祖笙と妻・陳国英さんは、中学生の息子を殺した犯人は誰なのかが分かっている。息子の先生たちだ。息子が殺された原因も分かっている。親である自分たちが、学校側が許可なく勝手に費用を徴収することや、教育当局の腐敗を公に批判したのだ。

 多くの中国人にとっては、社会の腐敗現象は、毎日出会う日常茶飯事の存在。中国国内の腐敗は政府だけではなく、教育現場、商業、農場および工場などあらゆる社会各層に行きわたっている。「ロサンゼルス・タイムズ」紙12月28日付けのマーク・マグニア記者の記事は、中国社会の隅々まで蔓延している腐敗の実態を報道した。

 廖夫婦は、息子が殺害されたのち、死体解剖結果報告を警察側に求めたが拒否された。さらにその後警察当局から絶えず恐喝・嫌がらせをされた。失望した廖夫妻は、息子の死因を自ら調査することにした。夫婦は、証人たちが警察らに恐喝される前に集めた情報から、息子が殺害された晩に、息子のクラスの担当主任、教員2人と保安関係者1人が、息子を襲ったことがわかった。

 廖夫妻によると、学校側が領収書を発行しない3900米ドル(約37万円)に相当する「学校選択費」の徴収に対して、自分たちが公に反対してから学校側は廖一家を敵視し始めたという。これに対して、廖氏はネット上で中国の汚職腐敗や、浪費について批判の文章を相次いで発表した。その後に息子が殺害された。

 一方、廖夢君の死因について、仏山市宣伝部の説明は違った。廖夢君は窃盗したため学校側に捕まえられたが、先生たちを攻撃し、その後自殺を図ったという。しかし、事件発生後、地方政府関係者は廖夫妻に対して、高額の賠償金を条件として息子の死因調査を中止するよう求めた。最初の2万米ドル(約190万円)から、次々と金額を上げ、最終的に提示された金額は廖夫妻にとって数年分の年収の7万米ドル(約700万円)だった。条件は廖夫妻が所持するすべての証拠を処分し、今後は同事件に一切言及しないことであるという。

 廖夫妻はそれを断った。「息子の命でお金を儲けるようなものだ」。


お分かりになりましたでしょうか。学校の先生が生徒を殺すなんて想像がつきますでしょうか。

2010年10月21日木曜日

儒教、共産主義補完の道具に

   12日に予告していましたように毎週水曜日は休刊日とさせていただいています。昨日も水曜日で休刊とさせていただきました。ありがとうございました。中国の反日デモは香港メディアによるとやはり官製デモでした。そろそろ本題に帰って「現代中国共産主義は儒教共産主義だ」というテーマを解説したいと思います。

◆ 膨張国家、中国の怨念 その13

  少し古い話になりますが1979年、曲阜(孔子生誕の地)の孔子廟が再建されました。儒教が宗教なのか道徳思想なのか現代もその見解は分かれますが、「天」の存在を道徳律の前提にしているところからみて、やはり宗教的側面はあると思います。共産主義は宗教を完全否定します。中国共産党も「宗教はアヘンだ」と断定しています。その中国で宗教的側面が濃厚な儒教の総本山ともいえる曲阜孔子廟を復活させるとなると、共産党が儒教を非公式に公認したものといえます。それに相前後して各級学校で儒教経典が公然と読まれ始めました。 知識人・学者の多くが儒教を共産主義より大切なものとして扱い始めています。一部の人は儒教を政治改革の手段として考え、共産主義・民主主義に代わる理念として期待感を寄せているそうです。これに対し中国共産党は何らの締め付けや規制をしていません。

   知識人の中には、はっきりと「儒教を国教とすべきだ」とまで主張する人もいます。国教でなくとも、中国政府と儒教の関係がいかなる形式であれ公式化される可能性が高い時期にきています。もし中国政府と儒教の間に連結が生じれば、これは中国だけでなく、国際関係に途方もない変化をもたらすことになりましょう。

 いま中国政府は儒教を限界にぶつかった共産主義を補完する国民和合の道具にしようとしているのが確実です。色あせた共産主義が広げてしまった心の空間に、キリスト教や国粋主義、法輪功勢力が入り込もうとするのを防ぐという考えです。さらに儒教は中国政府にとって国内用だけでなく反共意識の高い欧米に対する防御兵器にもなりうるのです。

 儒教復活劇は実は当局公認によるもので、中国共産党自体が積極的に推進しています。 その理由は3つ あります。
 
 1、道徳教育の強化と体制維持
 2、中華圏統合の旗印にする(大陸・香港・台湾及び世界の華僑・華人)
3、国際社会に対する「孔子ブランド」の利用


明日はこの伝統的倫理の復活劇について書きます。

2010年10月19日火曜日

つくられた官製デモ

   4日間もお休みをいただき、ありがとうございました。おかげさまで名古屋での生物多様性条約国際会議民間展示物お守り役を十分果たせ、各地のNPO、NGOとの交流も大成功に終わりました。ありがとうございました。本来ならば儒教共産主義の続きを執筆する予定でしたが、この4日間で事情は大きく変わりました。対日デモの発生です。本日は予定を変更、この対日デモの本質を探りたいと思います。ご了承ください。

   ◆膨張国家、中国の怨念 その12

   成都など中国4都市で反日デモが発生、一部では日本車をひっくり返したり、日系スーパーの窓ガラスを壊したりしたそうです。日本メディアはインターネットなどを使った呼びかけに応えた自然発生的デモのように伝えていますが、香港など海外メディアを総合すると、やはり官製デモのようです。官製デモといっても政府が動員をかけたデモではなく、公安や共産党が「デモをしても構わないよ」というシグナルを欲求不満学生などに送り、計画通りのデモが起こりました。しかし勢いづいてしまい、一部は暴徒化したものと見られます。これも政府側からみれば計算通りの暴徒化でしょう。

   中国政府がどうサインを送ったか、日本では 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件についてし、民間団体「頑張れ日本!全国行動委員会」(田母神俊雄会長)などが16日、東京都港区で中国政府に抗議するデモ行進をし、中国大使館前で抗議文を読み上げました。警視庁によると参加したのは約2800人。特に混乱はなかったようです。私も映像を見ましたが、暴力行為などはまったくなく、整然としたもののようでした。

   中国政府は事前にデモ計画を入手、同じ日に対抗デモを企画したようです。それも海洋とはまったく関係ない内陸部の成都など4都市を選びました。首都北京や沿岸部の大都市上海でデモを許すと反政府デモに転化する恐れがあり、収拾できなくなる、と判断したようです。本物の自然発生的デモなら情報量の多い北京か、人口、大学数の多い上海で起きるはずです。それが海とはまったく関係ない内陸部で発生した理由といえましょう。

   学生側もデモをしたい要因が備わっていました。社会への強い欲求不満です。日本では大卒者の就職率は9割もありますが、中国ではせいぜい6割。北京大学という名門中の名門を卒業しても党や政府にコネがなかったら就職は無理、というのが通り相場です。ましてや成都や西安など地方大学ではせいぜい就職率4割というのが実情です。それも賄賂を贈ったり地方政府とのコネが要求され、民間企業でも党推薦の学生を優先採用する、というのでは学生側も不満が高まります。

   就職問題だけでなく貧富の差による教育差別、学校間格差、貧農に閉ざされる受験制度、無きに等しい奨学制度、アルバイトをしても食えぬ学生生活など日本では信じられないような社会矛盾が学生生活を覆っています。社会への反抗心が起きるのは当然といえましょう。そこに来たのが「反日ならデモをしてもいいよ」という行政当局からのシグナル。憂さ晴らしができる面白い話に飛びつくのは当然です。

   学生にとって「戦前は日本人が住んでいた島」などの尖閣諸島の具体的情報はまったくありません。小中高、そして大学で教えられた反日教育を鵜呑みにしているだけです。各地につくられている反日博物館の影響もあるでしょう。反日なら公安や党からの圧力はありません。13日ごろから行進ルートなどデモ参加を促すネット上の呼びかけがあったと朝日新聞などは報じています。こうして「自然発生的に」デモは発生したのです。しかしいつ刃が政府に向けられるかもしれませんから徹底した監視、規制下で行われたことは言うまでもありません

   我々日本人としては冷静に事態を見つめるのがよいでしょう。日本への実害はまったくありません。日本製自動車がひっくり返された、というのもおかしな話で、中国は外国製乗用車輸入を禁止しています。ひっくり返されたのは日本との合弁事業で中国国内で生産された中国車です。その企業で働いているのは中国人であり生産利益も出資比率に合わせて中国側のものです。日系スーパーも働いているのは中国人であり、商品もほとんどが中国製です。日本側の関わりは経営のノウハウだけ、といっていいでしょう。実害は中国に行くのです。その当たりのことも分からぬ中国のデモは底の浅いものです。

   整然とした日本側のデモ、荒れた中国側のデモ。お国柄が見てとれるようです。 

2010年10月14日木曜日

全世界に孔子学院

◆膨張国家、中国の怨念 その11 

   中華思想が現代中国を広く覆っていることを述べましたが、その中華思想を支えているのが儒教なのです。「共産主義の中国が儒教?」と怪訝な面持ちになる方が多いと思いますが、共産中国の底辺で密かに進行しているのが共産主義の儒教化なのです。そんなことは信じられない、という人が多いと思いますのでサイト「花崗岩のつぶやき」の一節を要約、紹介します。

     儒教的社会主義と儒教的資本主義

   昨日の朝日新聞に法政大学国際日本研究センターの王敏(ワン・ミン)氏が「時流自説」に興味ある記事を投稿されていました.氏の考えによれば反日デモや中国における愛国主義の根底には儒教があるというのです.文化大革命の時代には「批林批孔」というスローガンが示すように儒教と孔子は共産主義のイデオロギーと対立する思想として排斥されましたが,現代中国では,建前は社会主義だけれど儒教の教えが支配的なのだと。

   例えば中国の教育で最初の反日の闘士として教えられるのは清の思想家康有為なそうです.康有為は日清戦争後の下関条約に反対し,当時の光緒帝を動かしいわゆる「戊戌の変法」を行いますが,保守派に追われて日本などで亡命生活を送ります.我々も世界史で康有為は少し習いますが,元々は儒学者なのです.しかも原理主義的儒学者といってよいほどの方です.浅野裕一氏の書いた「儒教 ルサンチマンの宗教」によれば康有為は変法運動の旗手であるだけでなく,「孔子改制考」を著した儒教神学の完成者でもあるらしい.もし中国政府が儒教を好ましくないと考えているならば,このような人物を取上げるとは思えません.ちなみにルサンチマンとは復讐心のことです。

   
    残念ながら朝日新聞の「時流自説」は読んでいませんが、朝日新聞がとりあげるほど事態は進行しているのです。「花崗岩のつぶやき」では「儒教的社会主義」と紹介されていますが、社会学者のなかには儒教社会主義、儒教共産主義という呼び方をされる人も多いようです。その儒教共産主義がなんと世界各地に「孔子学園」を設立しているのです。孔子は儒教の「教祖」なのです。中国政府が出資、運営費も20―30%を負担しています。すでに全世界88カ国に282校も設立されます。

   日本では立命館大学と北京大学の提携によって、2005年に京都に開設された立命館孔子学院が第一号です。その後同学院の東京学堂、同済大学との提携で、同学院の大阪学堂、さらに桜美林大学(同済大学と提携)、北陸大学(北京語言大学と提携)、愛知大学(南開大学と提携)、立命館アジア太平洋大学(浙江大学と提携)、札幌大学(広東外語外貿大学と提携)、大阪産業大学(上海外国語大学と提携)、岡山商科大学(大連外国語大学と提携)、早稲田大学(北京大学と提携)、工学院大学(北京航空航天大学と提携)、福山大学(対外経済貿易大学及び上海師範大学と提携)関西外国語大学(北京語言大学と提携)とつぎつぎ発足しています。文科系だけでなく工学系大学にも設立されるのが特色です。孔子学院は設置認可上において大学別科(専攻科)の扱いで、特例として所定の単位を取得すれば、日本の大学及び中国の大学への編入も認められているのです。

    中国が「純粋な共産主義」であれば孔子の名を付けた学院を世界に展開するはずはないのです。同学院は表向きは中国語、中国文学などを教える、ということになっていますが、儒教や共産主義を教えているのでは、と疑う向きが全世界にあります。中国自体が日本や西欧から後進国として援助を受けているのに中国が出資して全世界に中国を学ぶ学院を設置する意図が分からない、というものです。皆様はどう感じられますか。

   <お断り>またまた休刊のお知らせです。本日より18日まで名古屋、大阪に出張です。名古屋で開かれている生物多様性条約国際会議の民間展示物お守り役がその仕事で、各地のNPOとの交流もあり、とても原稿が書けません。18日までお休みにさせてください。出稿できない不徳を心よりお詫び申し上げます。

      合掌  清雅坊

2010年10月12日火曜日

中華思想、密かに称揚

◆膨張国家、中国の怨念 その10

   儒教、なかんずく朱子学が近代中国をダメにした理由、それは社会の進歩を拒否する思想だからです。儒教といっても時代により、国により、思想家により変化しており、一口に申し上げるほど単純ではありません。いえることは天子(皇帝)、官僚、民がそれぞれ徳を持つならば国家はうまく治まり、天下泰平となる、という考えです。

   それ自体はすばらしい思想なのですが、天下を固定的なものと考え、身分、階級を犯してはならぬ、とします。男尊女卑で重農主義です。商業は悪徳として否定。これをまともに受けた江戸時代の学者・幕閣は「商は詐なり」として流通業を弾圧しました。こうした中では新しい考え方、特に科学技術については医薬を別して進歩するはずがありません。

   対外的には海禁と称して清、明とも貿易を制限しましたし、日本は鎖国をしました。海外との切磋琢磨がなければ国家としての進歩はなく、時代に大きく取り残されていきます。おまけに儒教は中華思想とも大きく重なってきますから「外国文明は野蛮」という意識が常にともないます。ますます唯我独尊に陥ってしまうわけです。

   対内的には「徳をもって統治する」ことになっていますが、何が徳なのかは誰も知りません。「徳、非徳の薄霞」という言葉がありますが、徳の解釈は万人みな異なります。官僚は自分の得になることしかしませんから結果的に圧政が日常化し、民は苦しんで暴動がおきます。

   圧政が行くところまで行きますと天は天子に徳がないと判断し、別の人を天子に立てる、と中国人は考えます。これを易姓革命といいます。隋、唐、梁、宋と中国王朝が変わっていったのも易姓革命です。変な話ですが、中国には中華民国が成立するまで、国という意識はありませんでした。国とは蛮族が持っている統治範囲で、中国は天下の中心、すなわち天下国家だから国ではない、というのです。これでは他国は中国と自国を区別できませんから朝廷名で中国を代表させるしかなかったのです。

   進歩を拒否した結果、近世になって南蛮諸国(欧米列強)に大きく立ち遅れてしまいました。特に軍事面での差が大きく、南蛮が鉄製蒸気船に螺旋線条式元込め砲を装備していたのに対し、清はジャンク(木造帆船)に球形砲弾先込め砲しか持っていませんでした。火薬そのものは中国の発明であるにもかかわらず、儒教の妨げで進歩がなかったのです。

   共産中国は清が敗退した理由を良く知っていました。しかも基本的考え方は共産主義ですから科学技術は積極的に取り入れてきました。しかし中華思想だけはすっぽり身にまとってしまたのです。歴史家は「中国が発展するときは中華思想は後退し、衰退するときは重視される」といいます。唐の時代は国力がおおいに充実していましたから、辺境人を高官に登用するなど中華思想は後退しました。しかし明のように国難が続いた時代は中華思想が幅をきかせていました。

   現代中国は世界第2位の経済大国になりつつあるなど表面的には大国になっています。しかしその実体は日本や西欧などから援助を受ける後進国なのです。富める者と富まざる者との経済格差は天文学的数字になりつつあり、内部矛盾は暴動寸前といっていい状態です。内部矛盾を抑えるため中華思想が密かに称揚されるのは当然といえましょう。尖閣諸島沖の漁船衝突事故が中国政府とって外交カードとせざるを得なくなっているのもその当たりに理由がありそうです。 


   <お願い>毎週水曜日は清雅坊が終日、作務に忙殺される日です。あす13日は出稿できません。お休みとさせてください。なお来週以降も同じです。今後、水曜日は休刊とさせてください。勝手なお願いですが、ご了解ください。

                合掌   清雅坊 

2010年10月11日月曜日

近代化をおこたった清、明

◆膨張国家、中国の怨念 その9

   共産中国がいかに中華思想、華夷秩序、冊封体制に犯されているか、検証してみたいと思います。中国では北の野蛮国を北狄(ほくてき)、東の野蛮国を東夷(とうい)、西の野蛮国を西戎(せいじゅう)、南の野蛮国を南蛮(なんばん)と呼びます。現在の北狄はロシア、モンゴル、東夷は日本、韓国、西戎はアフガニスタン、パキスタン、イラン、イラクです。そして南蛮は欧米各国とインド、アフリカ諸国。中国からみて東にあるアメリカや西にあるヨーロッパの国々が南蛮なのは、かつて南からそれらの諸国が艦隊、商船をもって中国に来航してきたからなのです。

   現在、科学技術を中心にした現代文明では南蛮諸国に中国が大きく劣っていることは中国人自身も認めています。だからこそ近代化に全力を注ぎ、核兵器、大陸間弾道弾、有人衛星を開発してきました。世界初のリニアモーターカーを敷設したのも中国です。しかし対外的に声高く叫ぶことはないけれども中国が世界の中心であることは中国人はかたくなに信じています。それは中国人が主張する中国文明が5000年の歴史を保有するからなのです。5000年の歴史を持つ国はほかにはありません。世界四大文明といわれる国々、地域で文化が断絶することなく連綿と続いているのは中国のみだ、という自信があるからなのです。

   エジプト、チグリス・ユーフラテス、インドの各文明は途中で滅んでしまいました。ギリシャやローマの文明はより新しいものです。中国のみが連綿として文化を伝えている、と主張するわけです。共産中国は霊的なものは認めていませんが、「天」は中国の上に存在している、と確信しているのです。人類文明の継承者は中国だと信じているのです。

   近代に入って列強諸国にやられてしまったのは「清が悪いからだ」と考えます。中国の基本的支配民族は漢民族ですが、近世においては満州人(女真人)がつくった清王朝が中国を統治していました。この清が近代化をおこたり、中国を滅亡の危機においやった、と問題点をすりかえるのです。たしかに清は日本をはじめとする列強諸国に連戦連敗で、漢民族が政権を奪い、中華民国を成立させました。

   しかし清の統治理念は清が滅ぼした明によるものでした。明は漢民族による国家です。清は当初は八旗制という騎馬遊牧民族独特の統治・社会・軍事制度を持っていましたが、多数を占める漢民族の中で生活するうちに次第に独自性が薄れ漢民族の生活、思考様式に染まっていきました。近代化をおこたったのは漢民族の思考様式そのものだったのです。明の思考様式は儒教、なかんずく朱子学によるものでした。近代化への拒否姿勢は明、清に通じたものなのです。

  では儒教、朱子学がなぜ近代化の妨げになったのでしょう。

2010年10月10日日曜日

華夷秩序を周辺国に押し付け

◆膨張国家、中国の怨念 その8

「膨張国家、中国の怨念 その1」で今回の事件の底流をなす中華思想について触れましたが、事態の急変にともない、中華思想解説が中断してしまいました。今回は改めて中華思想について書きたいと思います。

  中華思想は中国の中原(中央)にある天子がすべての中心で、天子が統括する官僚群、その文化、思想が世界の中心であり、人民、周辺国はすべてこれに従わなければならない、という中国中心主義の思想です。世界で最も偉いのが天子(皇帝)であり、その次が内臣(官僚)、その次が外臣(民)、続いて朝貢国、その外に東夷、南蛮など野蛮国がある、という構図です。我が日本などは東夷そのもので、朝鮮は朝貢国という形になります。

  この体制を華夷(かい)秩序と呼びます。華夷秩序とは「中華」と「夷狄(いてき)」の間に取り結ばれる関係で、中国から見た「野蛮民族統治秩序」と目されるものなのです。中華帝国を中心とした華夷秩序は、中華皇帝と周辺国の国王の君臣関係を軸とした統治理念であり、各国国王は中華皇帝の臣なのです。要するに「外交関係」ではありません。現代のような国家関係にあるのでなく、中華皇帝の領土の一部を治めさせていただくのが国王なのです。皇帝の臣下に国王があるのです。

  現代風に書けば国王とは皇帝が任命した「原住民」の「総督」ということになります。総督と皇帝の体制は「冊封」関係と呼ばれ、各国の王は皇帝に「承認」されて、はじめて「正式な王」となる事が出来た、ということなのです。それも簡単には王にはなれません。皇帝に承認された王になるにはまず「臣従」(家来として仕えること)し、中国の制度を「採用」することが必要です。さらに皇帝へ定期的に使節を派遣し、貢ぎ物を捧げる「朝貢」を毎年することが必要となります。

  この体制に従ってきたのが朝鮮であり、「無視」し続けてきたのが日本だったのです。共産中国が成立して以来、何回も中国と交戦してきたベトナムは冊封されたり独立したりの繰り返しでした。北狄と呼ばれた蒙古(モンゴル)、満州(清、女真)は逆に中華帝国を奪い、元、清を建国、自ら中華帝国となりました。冊封体制を拒否し続けてきたウイグル、チベットは共産中国が成立後、侵略され、独立を奪われました。中華思想の偉大な実践者、それが共産中国なのです。

2010年10月9日土曜日

「核心的利益」はすでに通告

◆膨張国家、中国の怨念  その7

   中国の島嶼(とうしょ)奪取のやりかたはひとつのパターンがあります。それは領有権のはっきりしない島、領有権が争われている島に目をつけます。それは過去、中国が何の関わりもない島でもいいのです。距離が遠くてもかまいません。要は実効支配がされていない島に目をつけます。

   次にその島の領有権を主張している国が衰えるか、逆に中国側が優勢になるのを待って国内法を改正し、自国領土と宣言してもっとも近い省市の所属と決めます。さらに関係国をはじめ欧米諸国に国家の領土保全にとって最も重要な「核心的利益」に位置付けたと外交上の圧力をかけます。「核心的利益」とは中国独特の表現で、国家の本質的利益に直結することを意味し、妥協を拒む、というものです。

   そして漁船団や艦艇を派遣、もめごとを起こさせます。事態をさらに発展させ挑発して、艦艇で相手国艦艇を撃滅、地上部隊を上陸させて実効支配を確立します。さらにコンクリート製建物などを建築、ゆるぎのない占拠を確立します。西沙諸島占拠のときは南ベトナム海軍を破ったことは10月5日付の記事で書きました。

   新南群島占領のときは統一後のベトナムが統治していた赤瓜礁で1988年3月14日、ベトナム側が先に発砲したとして艦砲射撃,ベトナムの揚陸艦など3隻を撃破しました。いわゆる赤瓜礁海戦(あかうりしょうかいせん)です。ベトナムが経済危機に陥った時期で国力が衰退していました。中国側は南海艦隊楡林基地(海南島)参謀長の陳偉文少将が,江南型フリゲイト南充(満載排水量1600t)を旗艦に直接指揮を取った、といわれています。偶発事件でなく意図的な挑発です。この戦闘で、ベトナム水兵70名以上が戦死。それ以降、赤瓜礁は、中国が占拠しています。

   尖閣諸島では「核心的利益」通告の段階は過ぎ、漁船団によるもめごとの段階まできてしまいました。海上自衛隊の勢力より中国海軍の力が上回っている現在、武力行使は当然、予想されるのです。日本政府はどう対応しようとしているのでしょう。南ベトナムや統一後のベトナムが中国にやられてしまった二の舞をするのでしょうか。それとも中国は竹島型の不意打ち占拠をするのでしょうか。

2010年10月8日金曜日

中国、新南群島にも進出

◆膨張国家 中国の怨念6

   中国が武力占拠している南シナ海の島々の一つに新南群島があります。別名南沙諸島(なんさしょとう)、スプラトリー諸島ともいい、南シナ海に浮かぶ約100の小さな島々からなっています。フィリピンから最も近く、ベトナム、カリマンタン島(マレーシア、ブルネイ)からほぼ等距離にあります。諸島全体は大変小さな島々で構成され、互いの距離は十数キロメートルから数十キロメートル程度で位置しています。一般の人が普通に居住できる環境ではなく、島そのものにはほとんど価値がありませんが、海洋・海底資源が見込めることから周辺各国が領有権を主張、分割占領の形が続いています。


   もともと仏領インドシナとしてインドシナ半島を植民地としていたフランスが1930年からいくつかの島々を実効支配していましたが、白人の進出を嫌った日本が1938年に領有を宣言し、以降太平洋戦争終結まで支配していました。行政区分は台湾の高雄市の一部としていました。日本はリン鉱石を採取、同諸島初の産業となり従事者が住んでいましたが戦火の拡大により昭和20年までに撤退しました。

   終戦後、連合国は日本に領有権放棄を強制。1951年のサンフランシスコ講和条約で日本はやむなく放棄を認めてしまいます。しかし、連合国側は帰属先を明確にしなかったため、同諸島にもっとも近いにフィリピンがそれに先立ち1949年、領有を宣言しました。これに対し1956年以降、南ベトナムがたびたび上陸。南ベトナム政府が1973年9月に同国フォクトイ省への編入を宣言しました。ところが1500キロも離れている中華人民共和国が翌年1月に抗議声明を出して領有権を主張。相次いで軍を上陸させるなど実効支配に乗り出し、現在、中華民国(台湾)、中華人民共和国(中国)、フィリピン、ベトナム、マレーシアが諸島を分割占領しています。実効支配はしていないもののブルネイも領有権を主張しています。

   問題は無人島だったこれらの島々を領有するのはどこが最も正当か、ということです。フィリピン、ベトナム、カリマンタンの遭難漁民が一時的に島に上陸したことは間違いありません。距離的にはフィリピンが約300キロと最も近く、ベトナム、カリマンタンは約500キロに存在します。台湾は日本の領土だったことから権利を主張する資格があるように見えますが、もともと同諸島を開発したのは日本人で、便宜的に高雄市の行政区分に入れたのに過ぎません。中国にいたっては漁民が漂着したことも無く、本土から約1500キロも離れています。同諸島への実績はなんらないのです。

    中国がこのように無茶ともいえる遠隔地の武力占拠に乗り出したのは1970年代後半に海底油田の存在が確認され、広大な排他的経済水域内の海底資源や漁業権の獲得出来るため、とは各国共通の見方です。また広大な地域に広がる島々は軍事的にも価値があります。紛争を拡大させないため中華人民共和国を含めたASEANでの会議で軍事介入はせず現状維持の取り決めが結ばれましたが、最近中華人民共和国の人民解放軍が建物を勝手に建設し、マレーシアなどから非難を浴びているのが現状です。

   中国の海への野心、海軍力増強とともにますます膨れ上がる気配が濃厚です。

   

2010年10月5日火曜日

海戦に勝利、西沙諸島を占拠

◆膨張国家、中国の怨念 その5


    「中国は社会主義国家だから基本的に領土的野心はない。中国を巡る地域紛争は中国を圧迫する西側諸国に対抗した中国の自衛措置だ」という方が今でもいらっしゃいます。社会主義国家は人民の国家だから領土的野心はない、というのです。とんでもない話です。現代中国は社会主義の悪い部分と資本主義の悪い部分を中華思想で合体させた国家だ、というのが真実でしょう。日本ではあまり報道されませんでしたが中華人民共和国が成立して以降、中国は侵略戦争を繰り返してきました。チベット、ウイグルがその代表例で、失敗しましたがベトナムや朝鮮にもその牙を向けました。

   今回は尖閣諸島がテーマなので、海洋における中国の侵略戦争を解説します。そのひとつに西沙諸島があります。中国・海南島とベトナム・ダナンを結ぶ線に三角定規の底辺をあて、その頂点となる南シナ海上にあるのが西沙諸島です。第一次インドシナ戦争後、中華人民共和国と南ベトナムが互いに領有権を主張して領土問題が生じていました。中国が西沙諸島の東部を、南ベトナムが珊瑚島などの西部(永楽群島)を実効支配していました。1971年当時の南ベトナムはベトナム戦争末期の追いつめられ弱体化した状況にありました。その隙を狙い中国政府は西沙諸島に艦隊を派遣し、多数の施設の建築を行って軍事的緊張が高まったのです。

   当時、アメリカ軍は南ベトナムから全面撤退し、わずかな軍事顧問が残る程度になっていました。南ベトナム海軍は、アメリカから供与された旧式艦を主体とし、護衛駆逐艦など比較的に大型の艦艇は保有していましたが、練度はいまひとつでした。

   対する中国側も文化大革命の混乱期ではあったものの、海軍の近代化が進みつつあり、小型艦艇の国産化を実現していました。このような状況下を利用し中国は1974年1月11日、西沙諸島全域が自国領土である旨の声明を発表したのです。

   この声明を受けた南ベトナム海軍は1月15日、哨戒艦「リ・トン・キェト」を西沙諸島に派遣しました。すると実効支配しているはずの永楽群島・甘泉島(ロバーツ島)に中国国旗が掲揚されており、沖に中国の大型漁船「402号」と「407号」が碇泊しているのを発見したのです。「リ・トン・キェト」は中国漁船に退去を命じ、陸上の中国国旗を狙って威嚇射撃を行いました。

   1月17日、中国と南ベトナム双方は増援部隊を現地に派遣しました。南ベトナム軍は、護衛駆逐艦「チェン・チン・ユー」と哨戒艦「チェン・ピン・チョン」に歩兵を乗せて派遣、甘泉島と金銀島に展開させまた。中国軍も、海南型駆潜艇「271号」「274号」に歩兵1個小隊ずつを乗せて送り、普卿島(ドイモン島)・深航島(ダンカン島)・広金島(パーム島)を占領。ほかにも艦艇や航空機を出動させたのです。

   まもなく両国海軍が激突、海戦により中国艦隊が南ベトナム軍艦1隻を撃沈し、南ベトナムが支配していた島嶼に部隊を上陸させて占領してしまいました。以後、中国が西沙諸島全域を実効支配しています。南ベトナムが共産系の北ベトナムに統合され、統一ベトナムとなってからも中国は領土交渉に応じようとしません。真の共産主義なら当然、ベトナムに返還するでしょう。

   悪しき共産主義国家、中国のやり方は相手が弱体化してきたときに一気に占領、以後、実効支配を続ける、というものです。尖閣諸島のある東シナ海の海上勢力は日本より中国が強いのです。2年後、中国が空母を手に入れた後、どうなるか分かったものではありません。


   <お断り>6,7日は広島出張です。執筆時間がとれません。申し訳ありませんが、お休みにさせてください。
              合掌  清雅坊

2010年10月4日月曜日

増強続く中国海軍

   護摩法要のため5日間もお休みをいただきまことにありがとうございました。神仏も護摩法要を喜んでくださっていると思います。ありがとうございました。

◆膨張国家、中国の怨念 その4

この5日間で尖閣諸島沖中国漁船衝突問題は大きく変化しました。国際社会の思わぬ反発から中国政府はスパイ容疑で逮捕していたフジタの社員4人のうち3人を釈放しました。フジタ社員の逮捕は時間的経過からみても中国漁船船長逮捕の報復措置としか考えられません。中国が軍事管理区域といっている河北省石家荘市の現地は空軍病院所在地といわれ、逮捕に価するような場所ではないのです。いわば「江戸の敵を長崎で討つ」の類なのです。

  今回の事件で中国側は韓国の竹島占領時と同じく強硬姿勢に出れば日本はへっこむ、という事実を改めて確認しました。次に来るのは中国海軍による尖閣諸島占拠です。強行実施しても日本は竹島の時と同じく自衛艦は出さないだろう、という確信を得たと思います。その背景に海軍勢力は今や中国海軍が海上自衛隊の戦力を上回りつつある、という自信があるからです。

   海上勢力でみますと次のようになります。

              中国      日本
駆逐艦、フリゲート艦   74隻     56隻
潜水艦          70隻     16隻
航空機         620機    200機
陸戦隊       24000人      0人


  どの部門をとっても中国海軍が日本海上自衛隊を上回ります。数年前までは中国海軍は数はともかく技術レベルは低い、といわれていました。しかし最近は052C型駆逐艦、051C型駆逐艦を自国建造するなど近代化が進んでいます。両タイプの駆逐艦は日本のイージス艦に近い性能を持ち、特に対艦性能はあなどれません。潜水艦では日本にない原子力潜水艦を8隻も所有、弾道ミサイル潜水艦もあります。また海兵隊に相当する海軍陸戦隊もあり。尖閣諸島占拠にはこの部隊が進出するだろう、と推測されています。

   錬度もめきめき上達、ソマリア沖の海賊船対策に派遣された中国海軍のミサイル駆逐艦は3ヶ月も無寄港作戦を展開、各国海軍をびっくりさせました。実戦に臨んでもミサイル駆逐艦「武漢」がギリシャの船舶を信号弾によって海賊から守るなど、その操艦能力は高く、情報収集能力も向上していると判断されています。2年後には航空母艦を配備する予定です。

   その一方で海上自衛隊は予算の削減が続き、潜水艦については昭和51年以来、1隻も増強されていません。乗組員も定数を割る艦が多く、実戦になったら果たして戦えるのか、と疑問符を突きつける関係者もいます。

   現代のミサイルによる海戦は「先に撃った方が勝ち」といわれています。政府が艦長にどう指示するかが鍵なのです。艦長に判断を任せるような曖昧な対応では艦長もミサイル発射の命を下しかねます。政府が艦長にこの場合はこう、と具体的指示を出すのが必要なのです。中国政府は思い切った指示を艦長に出すでしょう。それを上回るような具体的指示を出しておくのが政府の役目です。今の民主党政権でそれができるかどうか、ビデオの公開すらできぬ政府に尖閣諸島防衛は無理かもしれません。中国は沖縄に米軍がいるから積極的行動を控えているだけに過ぎないのです。 

2010年9月28日火曜日

中国、竹島占拠を徹底研究

◆膨張国家、中国の怨念 その3

尖閣諸島沖で起きた日本の巡視船と中国漁船の衝突事件で、日本は拘留していた中国人船長を突然、釈放しました。これで収まると日本政府はみていたようですが、なんと中国政府は謝罪と賠償を請求して来ました。中国政府は民主党政権は力で押せばどこまでも引っ込む、と見ているのです。この事件をNHKなどは単なる偶発事件として片付けようとしていますが、事件を詳細に検討していきますと明らかに中国の意思が見え隠れしているのです。その部分を明確にしておかないと中国の領土拡張欲求が見えてきません。

まず、事件が起こったのは9月7日、民主党が代表選をやっている真最中でした。代表選は9月1日告示、14日投開票でしたから、代表選で身動きできない時間帯に発生したのです。漁船衝突事件について発生直後、民主党政権は中国に対し、何の積極的な対応ができませんでした。

 中国側は日本側のスキをついて意図的に衝突事件を発生させたのです。前原国土交通大臣が28日の国会答弁で述べたように、誤って中国漁船が衝突したのなら、中国漁船は衝突を避けようとエンジンを逆回転させたり、舵を反対方向に切るなど回避措置をとったはずです。ところが中国漁船はその様子はまったく見られず、意思的に体当たりをしてきました。その様子はビデオに収めてある、と前原大臣は述べていますが、そのビデオを一刻も早く公開すべきなのです。

 ビデオは裁判に備えて保管してある、とNHKは放映していましし、仙石官房長官は「ビデオの公開は困難だ」とし、「早急にハイレベルの話し合いをもった方が良い」と言っているそうです。専門家がビデオに写った中国漁船周辺の波の発生状況をみればエンジンを逆回転させたか、舵を衝突とは反対方向に切ったかが簡単に分かります。

  ビデオをマスコミに公表、実態を国民に見せるべきなのです。法曹界出身者が多い民主党政権は裁判を意識して公表したがらないようですが、肝心の裁判対象となる中国漁船船長を釈放してしまっている現状ではまったく無意味です。

  中国の狙いは民主党代表選という対応困難な時期に事件巻き起こし、意図的の巡視船に漁船を体当たりさせて「尖閣は歴史的、地理的にも中国の領土」と世界に訴えることなのです。そして世界の注目が集まったところで中国軍を尖閣諸島に上陸させそのまま占拠しよう、というのが目的です。

  中国は韓国の竹島占拠を徹底的に分析、研究しています。竹島は日韓両国が領土権を主張している無人島でした。それを韓国は1952年1月18日、李承晩大統領が自国の支配下にあると一方的に宣言し、武力占拠。1954年7月以降は常駐部隊を派遣し、それ以降占拠を続けています。それに先立ち韓国はアメリカに対し竹島は韓国領土である、と認めるよう交渉を繰り返し、世界に韓国領土であると訴えました。さらに周辺海域で日本漁船328隻を拿捕、日本人44人を殺傷し、3929人を抑留しました。現在も韓国の武装警察による占有が続いています。

  これに対し日本政府は保安隊(自衛隊の前身)、自衛隊を現地に派遣することなく韓国の好きにさせました。また漁船保護に自衛艦を派遣することもなく、巡視船にも事実上の発砲禁止を命令して韓国警備艇による日本漁船拿捕を見て見ぬふりをさせたのです。日本の領土問題に対する弱腰振りを中国が見のがすはずがありません。

   <お断り>10月3日(日)に鳥取県米子市の大神山神社で柴燈護摩が焚かれます。その準備と本番とで9月29日(水)から10月3日(日)まで身動きが取れません。この間、「国際派日本人の基礎教養講座」をお休みにさせてください。一方的なお願いでまことに申し訳ありませんが、事情をご理解いただきますよう平身低頭します。

            合掌  清雅坊

2010年9月27日月曜日

韓国は中国漁船員を年間5千人拘束

◆ 膨張国家、中国の怨念 その2

  2日間、お休みをいただきありがとうございました。本日は中華思想に関わる解説を続ける予定だったのですが、尖閣諸島をめぐる問題が急変しているため、その日本の弱腰外交ぶりと中国の横暴振りを指摘したいと思います。

  本件の直接のきっかけは中国漁船が日本の漁業専管水域で不法操業し、それを取り締まろうとした巡視船に体当たりして逃走しようとしたしたため、巡視船が中国漁船を拿捕したものです。日本側は中国の抗議に対して一般乗組員をさっさと釈放した挙句、レアアース輸出ストップなど中国側の強硬姿勢に対しあっさり妥協、船長までも釈放してしまいました。ところが中国はそれでも満足せず、輸出ストップを継続するばかりか慰謝料などを要求してくる始末です。
  
  これを他国の場合に当てはめて考えてみましょう。韓国と中国も岩礁帰属権をめぐる問題を抱えています。その韓国は韓国漁業専管水域で不法操業する中国漁船員をなんと年間5000人も拘束しているのです。これに対し中国人魚船員は韓国取締官を海に放り込んで水死させるなど抵抗しており、緊張感が続いています。しかし中国政府は韓国に謝罪や漁船員釈放を経済制裁をもって要求するなどの積極行動はしていません。日本だけが中国の脅しにのってたった1人の船長を解放したばかりか、その後の慰謝料請求まで受ける始末なのです。

  ロシアについて考えてみましょう。日本側は北方領土返還という対ソ要求をしています。ところがロシア側はその北方領土の漁業専管水域を侵したからといってこれまで何十隻もの日本漁船を拿捕、船長だけでなく一般乗組員も拘束して2-8年もの強制労働を課しているのです。おまけに漁船、漁具、水揚げ水産物まで押収しています。これに対し日本側は抗議せず、だまってみているだけです。

  いったい、日本にとって中国とは何なのでしょう。韓国の中国に対する態度、ロシアの日本に対する態度と比べ、あまりにも大きいこの差、民主党政権は主権国家を代表する政権なのでしょうか。このままほっとけば中国人が尖閣諸島に上陸しても追い出すことさえ出来なくなります。そして既成事実を元に竹島のように中国に尖閣諸島を奪われてしまうのです。政府の毅然たる態度を求めます。

2010年9月24日金曜日

煮えくり返る船長釈放

 ◆膨張国家、中国の怨念 その1

  今回は急きょ、予定を変更して「膨張国家、中国の怨念」を書きます。怨念とはまたおどろおどろしい表現ですが、それ以外に言いようがなくて、そうしました。今回の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で沖縄地検が中国船長の釈放を決めたことに対し、各界から批判の声が出ています。国際関係をまるで理解してないこの措置、文字通り日本外交の敗北といえるでしょう。私のはらわたは煮えくり返る面持ちです。こんなことでは海上保安庁の日本領海を守ろう、という気概は失われ、やがては尖閣諸島に中国人の上陸を許し、それを理由に中国が尖閣諸島を占拠してしまうでしょう。竹島の二の舞です。中国も竹島の前例があることから、今後、次々手を打ってくると思われます。海洋軍事力では日本は完全に中国に圧倒されており、米国の支援がないかぎり中国と全面対決は出来ないのが現状です。こうした暴挙になぜ中国が出てくるのか、その民族的背景を探り、国際人としての日本人の対応策を考えます。

  ◇背景にある中華思想 


  日本の教科書にはなぜか出てきませんが、中国人の民族的思想的よりどころとして挙げられるのが中華思想です。中華思想とはフリー百科事典ウイキベデイアによりますと

 

  中華思想(ちゅうかしそう)とは、中国大陸を制した朝廷が世界の中心であり、その文化、思想が最も価値のあるものとし、朝廷に帰順しない異民族の独自文化の価値を認めず、「化外の民」として教化の対象とみなす古代中国大陸に存在した考え方。中華主義・華夷秩序ともいう。
英語ではSinocentrismと呼ばれる。


  実際はそんな単純なものでなく「教化の対象とみなす」とあるとおり、実際に教化に取り掛かり、これに成功した帝王は偉大な帝王として尊敬されるのです。「化外の民」は当然、独自の文化を持っていますから戦争が起こります。中国が勝利した場合は中国式の物の考え方、制度、思想を押し付け、中国の属国としてしまい、毎年、過酷な朝貢を支払わせます。教化は文物でするのでなく、武力でする、というのが思想の背景にあります。実際は教化というような文化的なものでなく朝貢、収奪が目的、という学者もいます。

   さらに問題なのはウイキベデイアでは「古代中国大陸に存在した考え方」と逃げてしまっていますが、これは中世、近世、近代を一貫して流れてきた思想で、現代中国でも踏襲、いやそれ以上に強固なものとなっているのです。強固になった背景は19世紀、中国の大半が日本を含む列強諸国に支配され、その反動が愛国心となって中華思想に昇華してしまったからなのです。その中華思想の対象になったのが今回、台湾に近い尖閣諸島であり、かつては属国とみなしていた沖縄であり、朝貢実績のある日本なのです。日本はかつて東夷と呼ばれ、中国にとっては化外の民だったのです。

   <申し訳ありません。25,26の両日は法要とその準備があり、お休みとさせてください。次回は27日(月)付けです>  合掌

2010年9月23日木曜日

コンセントを抜く

◆清雅坊の地球温暖化対策 その16

  我が家では様々な節電対策をしています。そのうちの一つが小まめに電源のON、OFをすること。つけっ放しは原則しません。寝るときは常夜灯も消していますが、防犯灯の意味があることから最低1つは点けろ、という意見もあります。どうするか現在、検討しています。常夜灯の明かりは17口径の40ワット白熱灯です。これを40ワット相当の明るさでで、4.7ワット程度の消費電力のLED(発光ダイオード)に切り替えるのです。そうすれば明るさは保てる半面、二酸化炭素排出は極めて少なくて済みます。ただ生産量が少ないためか、17口径は普通の26口径のLEDに比べやや割高で、なんとなく気が進みません。現在、使っている白熱灯が球切れとなったら交換しようと考えています。

  皆様へのお勧めは照明器具の汚れ、誇りを掃除すること。我が家でも一昨日、洗面所の蛍光灯シェードを水を含ませた布できれいに拭いてやりました。シェードのなかには虫の死がいも張り付いており、ほこりでいっぱい。清掃後は見違えるように明るくなり満足しています。これを各照明器具ごとに定期的にしていけば弱めの管球でも明るさは保てます。要は小まめにすることです。

  テレビのように待機電力があるものは使用しないときコンセントを抜きます。これだけで月に数百円、節約出来るようです。電気火災防止にもつながります。ただパソコンだけはそうはいきません。コンセントを抜いてしまうと立ち上げだけに5分近くかかりとても無理です。また取扱説明書を読みますと平常時はコンセントを抜くな、と書いてあります。私のパソコンはXPです。皆様の最新式のものではどうでしょう。充電状態を維持するためにもやはり抜かないのがいいのかもしれません。

  明日からは新しい視点に立った国際派日本人にとって必要な考え方をお伝えします。ご期待ください。

  <前掲を除くここまでの主な参考資料>
日経BP Mail 各号
一般社団法人地球温暖化防止全国ネット 各電磁資料 (旧組織時代も含む)
各地域地球温暖化防止活動推進センター 各電磁資料
「チェンジング・ブルー-気候変動の謎に迫る-」  大河内 直彦 岩波書店
ニューズウイーク日本語電子版
「ほんとうの環境問題」 池田 清彦 養老 孟司  新潮社

2010年9月21日火曜日

あきらめた太陽光発電

  ◆清雅坊の地球温暖化対策 その15


さてこれから住宅の光熱費削減を考え、地球温暖化防止に役立てたい、と考えている方のために参考となる事柄を少しお話します。16日付でもお話しましたが、我が家は築30年の総2階建て木質系プレハブ住宅。あちこちが痛んで修理に追われています。そのオンボロ住宅で唯一自慢できるのがペアサッシと断熱材入り壁です。

  ペアサッシというのはガラスを二重にしてその中に窒素を封入してあるものです。断熱効果が結構高く冬になってもガラス内側に結露ができません。断熱材入り壁は断熱材をサンドイッチ状に挟み込んだ壁で、もちろん普通の壁に比べ断熱効果が高いのです。30年前は割高の工法でしたが、今となってはこの工法を採用して本当によかった、と思います。

  真冬に超厚着をするというものの電気ストーブ1台で過ごせるのも(もっともかなり寒いですが)この工法によるものです。真冬でも陽の射す日は温室効果となってポカポカ暖かく、セーター1枚で十分過ごせるほどです。最近は技術の進歩が著しく、家の中の空気の移動も考えられた素晴らしい省エネ住宅が各社から売り出されており、在来工法の業者も省エネ建材を多用するなど住宅の性能は著しく向上しています。在来工法に比べて割高になる部分は10年もあれば元が取れる、と知り合いの建築士は言っていました。もし住宅を新築されるのでしたら地球温暖化を考えぜひ省エネ住宅をご検討ください。

  ◇太陽光発電

  「お前、そんなに2酸化炭素削減を考えるなら太陽光発電を考えたらどうだ」と近所の人に言われました。我が家の近くにも太陽光発電を設置した家が2軒あり、おおいに注目しています。また近くには鳥取県の太陽光発電補助を取りまとめているNPO法人もあり、太陽光発電については人並み以上の関心を持っています。昨年は群馬県大田市の太陽光発電住宅団地を視察してきました。

  我が家への導入をいろいろ検討してきたのですが、我が家の切妻屋根は一面が東北東、反対斜面が西南西に向いており、南向き斜面がありません。むりに太陽光パネルを張るとなると大きな支持金具を取り付けなくてはならず、工費がかさみます。また「元を取る」には現在の補助制度では15-25年かかり、間もなく数え年70歳を迎える私が生存中に利益を出せる見込みがありません。家自体も築30年で今後25年間、確実に大修理をしなくてもいい、という補償がありません。もちろん2酸化炭素削減のため奉仕のつもりで設置するなら別ですが、私の所得ではそれはできそうもありません。結局、設置はあきらめました。

  でも南向き屋根のある方、50代以下の方、これから住宅を新築される方はぜひ太陽光発電を導入なさってください。確実に地球温暖化防止につながり、しかも利益を生みます。

<お断り>先週にちらりと書きましたが、仕事の関係上、今後、水曜日はお休みとさせていただきます。無理に原稿を書いてもろくなものができません。あらかじめご了承ください。明日、水曜日は休刊日です。よろしくお願いします。 合掌 (清雅坊)

2010年9月20日月曜日

暖房代は2人で月5150円

◆清雅坊の地球温暖化対策  その14

  「電気暖房による冬の寒さはこたえます」と19日付の原稿で書きましたら環境問題をやっている知人から「お前、馬鹿か」とお叱りを受けました。最新式の電気式ヒートポンプエアコンの電気代は10年前の約半分、20年前の1/4前後の電気代で済む、ということです。私にも概念的には分かっていたのですが、自宅のこととなると頭の中で連動しなくて「電気は高いもの」との固定観念が働いていました。

  実は我が家のエアコンは4半世紀前の古いものなのです。へたをすると電気代は最新式のものに比べ5倍以上高いかもしれません。安いタイプのエアコンなら数年で元が取れるくらい電気代が違うそうです。今冬は買い換えを検討しなくてはなりません。

  また電気ストーブ使用についてもお叱りを受けました。局所暖房でもエアコンの3-4倍の電気代がかかるとのことです。一台では部屋全体が温まりませんので、コタツや電気カーペットと一緒に使う事も多く、数年でエアコンが買えてしまう程の電気代がかかることもあるとのこと。

  秋冬の電気代を月2850円として冬の電気代月8000円で計算しますとエアコン、電気ストーブ、ホットカーペットなどの暖房代は月5150円。一人当たりにしますと2575円。やはり省エネに成功している、とみるのは独りよがりなのでしょうか。それにしても現状では室内でオーバーコートを着るぐらい寒いですから、1部屋だけ最新式の電気式ヒートポンプエアコンを導入、家族が1日中、そこで過ごすようにすれば事態はまた変わってくるかもしれません。

  それにしても電気全面頼みが2酸化炭素削減につながるのか、石油ストーブ併用の方が削減につながるのか、まだ計算式はみえてきません。資料収集をさらに進めたい、と思います。皆様もご支援ください。

2010年9月19日日曜日

冬 1人当たり光熱費月5500円

◆清雅坊の地球温暖化対策 その13

  冬の光熱費についてお話します。今冬、1月の電気代は8256円、2月は7038円でした。これに入湯料、往復ガソリン代を加えた光熱費は1月は11536円、2月は10318円になります。石油ストーブなど他の暖房は一切使っていません。2人所帯でこの料金は平均的にみていかがなものでしょう。月に11000円として1人当たり5500円。皆さんのご家庭ではいかがでしょう。具体的に比較する数字を持ち合わせていませんのでなんともいえませんが、電気代が少し使いすぎの感もあります。私の知り合いの家庭は6人家族で各種光熱費の合計が月37000円(冬)。1人当たりで見ると6160円程度です。我が家の努力が月に1000円に満たないものであると考えると何かむなしい感もあります。

  冬の暖房は一切、電気に頼っています。エアコン2台、各部屋に電気ストーブ、こたつ2セット、ホットカーペット2部屋といったところです。以前は石油ストーブを愛用していましたが、2酸化炭素排出、給油のわずらわしさ、排ガスの臭いを考えて電気オンリーに踏み切ったのです。費用的にはどう考えても石油ストーブの方が安上がりです。

  電気代を節約するため徹底した節電対策をとっています。エアコン使用時は別にして電気ストーブだけではとても寒いのです。4,5枚の厚着をしてさらにオーバーコートなどを着込み、外出時と変わらないくらいの重装備です、それでも寒いときは懐炉します。靴下は厚手のものを着用、室内で帽子まで被っています。他人様がみればまさに物笑いの種でしょう。

  これでいかほど2酸化炭素が節減できたか、各種統計資料を当たったのですが分かりません。まず電気1キロワットアワー消費で炭素がいくら2酸化炭素に変わったかが分かりません。供給電力の70%が火力で、原子力22%、水力7%、残りは太陽光、風力などとは分かるのですが、では火力発電所のうち石炭、石油、ガスがそれぞれ供給電力1キロワットアワーにつき2酸化炭素を何g排出するのか公表された資料では計算できないのです。私の知らないところで多分公表されているのでしょうが、どうも巧みに隠されている感じがします。

  従って私の寒さに耐える努力がどこまで評価できるのか、数字上では皆目検討がつかないのです。残念です。ことによったら直接火力を取り出せる石油ストーブの方が電力より発生2酸化炭素が少ない可能性もあります。どなたかその辺の具体的資料をご存知でしたらぜひ一報をください。電気暖房による冬の寒さはこたえます。

A-GAMA@M.EMAIL.NE.JP

2010年9月18日土曜日

風呂は温泉で光熱費削減

◆清雅坊の地球温暖化対策 その12

  光熱費が低額で済んでいるもうひとつの理由。それは風呂にエネルギーを使わないからです。16日付でも説明しましたが、ガス風呂が故障してから風呂は水風呂専用にし、温泉に通い始めました。温泉は我が家から10キロ程度のところにあり、週2回程度通います。夏はこれでは汗が取れませんから水風呂、シャワーを浴びます。入浴料は2種類あり、150円と300円。150円は65歳以上の高齢者料金です。週2回妻と行くと月に高齢者料金で2400円。これにガソリン代がかかります。車の省エネの稿で申し上げたとおり1リッター22キロを維持していますから1回の往復で1リッター弱かかります。

  ガソリン代はプリベートを使用しており、リッター125円前後。温泉へは1回110円程度で往復できる計算になります。月に8回行くとして880円。入浴料と併せて月3280円。これも光熱費に含めるなら電気代3655円(夏)と合算して6935円となります。春秋の電気代は月2800円から2900円ですから、2850円として光熱費は月6130円となります。温泉が利用できる環境に心より感謝しています。

  ただ温泉利用が我が家にとって光熱費の節約につながっているのか自信がありません。ガス風呂を修理し週2回入浴するとしてガス代が3280円もかかるとは思えないからからです。以前のガス代領収書をなくしているので何とも申し上げかねますが、台所分も含め4000-5000円でなかったかと思います。ガスも電気にはないいいところがたくさんあります。地下埋蔵資源には間違いないのですが、炭素量が少なく、家庭では直接カロリーに変えられる、という利点があります。オール電化住宅かガス併用住宅かどちらが2酸化炭素削減につながるのか電力会社、ガス会社は数値で示していただきたいものです。温泉利用は人為的エネルギーがまったく不要ですから社会全体では2酸化炭素削減に大いに役立っています。

  照明器具も球が切れるたびに蛍光灯、電球型蛍光灯に切り替え、省エネを図っています。残る電球は車庫を含め5個。いずれも寿命がきたら電球型蛍光灯かLEDに切り替えます。

   省エネで話題のLEDも1個だけ購入しましたが、これは失敗でした。昼光色と電球色の2種類があったのですが、なんとなく電球色を買ったところこれが予想以上に暗いのです。表示では電球換算で40-30ワット相当とあったのですが、30ワット以下の明るさでした。改めて電気店で昼光色タイプを見たのですが、これは40ワット相当と思われます。皆様も明るさを求められるのでしたら昼光色か白色のものをお勧めします。

    皆様方の生活パターンとはかなり異なっていますから何とも申し上げかねますが、私の生活は省エネルギータイプの生活と自信をもって言えます。明日は冬の光熱費についてお話します。

2010年9月17日金曜日

エアコンストップ

◆清雅坊の地球温暖化対策 その11

  節電の決定打、それは夏にエアコンを使わないことです。今夏は異常猛暑が続きました、鳥取市でも36度を越える日が連続続き、日中は寝ているだけでも汗をかく始末。でも我が家では2台あるエアコンを今夏は一度も使いませんでした。お客様が来たらエアコンは稼動させるつもりだったのですが、エアコンを止めていることを吹聴したため、エアコンが動いていないことを知っている知人、友人、親類の訪問がほとんどなかったのです。これまた寂しい話ですが・・・。

  ではエアコンを稼動させずにどう夏を過ごしたか、それは扇風機です。各部屋に扇風機を1台ずつ置いており、暑くなるとそれをかけっぱなしにするのです。2人家族ですから同時につけるのは多くても2台。1部屋に2人がいる場合は1台のみです。服装も私はランニングシャツにステテコ、妻もそれに準じたスタイルです。屋外仕事で汗をかくと水風呂に飛び込んで体を冷やします。夜寝るときは扇風機にタイマーをセットし休みます。慣れるとこれで十分、1日が過ごせます。扇風機の電気代なんてエアコンに比べれば雲泥の差です。

  また涼感を出すために南側の1部屋だけですが、「緑のカーテン」を設置しました。これは窓際に朝顔を植え、窓を覆う形で網を張ります。そうすると朝顔のツルが伸びて窓にカーテンをつくります。風は結構通りますし、太陽をさえぎってくれます。また朝夕は朝顔に水をやりますので、気化熱で涼しさも感じられます。何より朝顔の涼感が素敵です。ピンクや紫色の朝顔がジョロの水で朝日に輝きますと生命感あふれたものになり、きょう1日頑張るぞ、という気分にさせてくれます。

  環境団体のパンフレットによりますとこれは「緑のカーテン」と名づけられており、植える植物は蔓科の植物ならなんでもよく、ゴーヤ、ヘチマ、ヒョウタンなどを楽しんでおられる方も多いようです。皆様も是非試してみてください。本来なら写真を付けて皆様にご紹介するのですが、残念ながらまだブログに写真を挿入する技術をマスターしておりません。どなたかその方法をご存知の方があればメールをいただきますと喜びます。
                 合掌
  a-gama@m.email.ne.jp

2010年9月16日木曜日

盛夏の光熱費3,655円

◆清雅坊の地球温暖化対策 その10

  待っていた8月の我が家の電気代領収書が届きました。それを基に本日から我が家の省エネ作戦をご紹介します。真夏1ヶ月間の電気代は3,655円。これが1ヶ月間の我が家の光熱費の全てです。電気代の対象期間は7月16日から8月17日。まさに盛夏真っ盛りの期間です。おまけに今年は最高気温36度の日々が続きました。38度を越えた日もありました。知り合いの一家では冷房費がかさんでなんと3万4000円の電気代だったそうです。

  なぜこんな光熱費で済んだのか、どんな省エネ作戦だったのか、冬も含めこれから詳しくお話します。

  我が家は私と妻、それに犬の2人と1匹家庭です。家は鳥取市の郊外にあり南は市道、東西は民家、北側は畑に囲まれています。築30年の2階建て木質系プレハブ住宅。今は時代遅れになってしまいましたが建築当時はペアガラス、断熱材入り壁と冷暖房効率を考えた家でした。エアコンは2部屋に、扇風機と電気ストーブは各部屋に、風呂と台所の熱源は都市ガス、これ以外に浄化槽が電気を消費します。

  さて省エネを考えていなかった6,7年前は夏冬の電気代は7000円から9000円、都市ガスが年間を通じ月3000-4000円でした。春秋の電気代は月3000円前後と記憶しています。

  そんな折、我が家に小事件が発生しました。妻が目を離したすきに天ぷら鍋に火が入り、消火しようとした私は顔に火傷してしまったのです。幸い一晩中顔に水をかけて冷やし、あばた面は何とか避けることが出来たのが不幸中の幸いでした。「ガスは危ない」と直感した私は妻を説得して台所の熱源は電気に切り替え2,3の曲折を経て最終的にIH調理器にしました。

  風呂はガスを使い続けましたが故障したのを契機に水風呂専用にし、約10キロ離れた温泉に通い出したのです。そして4年ほど前、地球温暖化防止運動に参加し始めた私は他人を説得する前に自分を変えなくては、と家庭での省エネに取り組み始めたのです。

  そのときは既にガスは使用していませんでしたから電気代をどう節約するかが焦点でした。まずは小まめな消灯を始めました。これはすぐなれました。家人のどちらかが帰宅するまでは門灯、玄関の両方の照明をつけっぱなしでしたが、どちらかを消して節電。3台あったテレビも節電型の1台のみとし、テレビをつけながらほかのことをする“ながら”族は中止してテレビのつけっぱなしはやめにしたのです。

  妻はテレビの替わりにラジオを愛用、家事をするときはラジオを聞きながら、という生活スタイルに変わっていきました。これは節電効果が相当あったと思います。明日は節電の決定打をお話します。

2010年9月14日火曜日

加速は2500回転まで

◆清雅坊の温暖化対策 その9

  さて長々と清雅坊の省エネ運転の話をしましたが、皆様にとって参考になりましたでしょうか。あまり参考にならなかった、という方の方が多いと思います。皆様の車はオートマチックが圧倒的に多く、エンジンも1000CCから2.500CCの車だろうと思います。オートマチックの方にどうすれば省エネ運転になるかお話したいと思います。

  4サイクルエンジンの特性は大型、小型にかかわらず回転数が毎分2500回転を超えるとガソリン消費料が増えます。特にターボ(過給気)エンジンではこの傾向が強いようです。皆様の車にはエンジン回転計がついていると思いますから、それを見ながらゆっくり発進してください。あとは2500回転を超えないようゆっくり加速、目標の速度までアップします。2500回転では多くの車種で時速60-80キロ前後まで速度が出ると思います。高速道などもっと速度アップしたい道路ならその速度まで回転を上げましょう。

  これだけで燃費は大きく向上します。ただ2500回転ではいかにもまどろっこしく耐えられない気持ちになるはずです。精神との戦いになります。後ろの車にホーンを鳴らされたり、パッシングを食らうこともあるでしょう。片側2車線道路では左側ウインカーを点滅させたり、手で合図して追い越してもらいます。到着時間が遅くなるのでは、と心配される向きもありましょうが、日本の10万人以上の都市ならば信号機はコンピューターにより面制御され、幹線道路を優先道路として制限速度を守る限り、次の信号は青になるはずです。大きな時間差はありません。

  また信号待ちの時間が長い大型交差点ではエンジンを切りましょう。これだけでも3-5%の節約になります。夏や冬は冷暖房が効かなくなるのでその時の判断は皆様におまかせします。プリウスやインサイトにはアイドリングストップ装置や電気走行による特性があるので、ダッシュボードについている学習装置で省エネ運転を学んでください。

  ここまで書いたところで「何のために省エネをする必要があるのか、車を急加速させたり、力いっぱい走らせる楽しみを奪う気なのか」との声が聞こえてきそうです。若いころの私にもその傾向がありました。飛ばしたい人は飛ばしてもよろしい。でも自分も地球号という宇宙船の乗組員の1人なのだという自覚だけは持っていただきたいものです。

         エコ運転、抜いた車と同時着   (清雅坊)


   <あす水曜日は執筆時間がとれません。お休みにさせてください。また次週以降も水曜日はお休みということでご了解ください>

    前掲を除くここまでの主な参考文献

  環境自治体白書 各号 生活社

  連合ニュース 日本語電子版

  国土交通省ホームページ

  経済産業省ホームページ

  メルマガ ダイヤモンド・オンライン

  防衛省ホームページ

  軍事研究 各号 ジャパン・ミリタリー・レビュー

  月刊自家用車 各号 内外出版社

2010年9月13日月曜日

一定速度を守る

◆清雅坊の温暖化対策 その8

  9月10日付の「◆清雅坊の温暖化対策」でリッター当たり22キロの走行距離の場合、地球温暖化対策でマイカーとバスとどちらが有利なのか分からない、という意味のことを書きましたところ、読者の方から貴重な資料の紹介をいただきました。それは国土交通省 総合政策局「交通関係エネルギー要覧2007」と交通エコロジー・モビリティ財団「運輸・交通と環境2007」の2つです。

  それらによりますと鉄道を100としたCO2排出量(g-CO2/人キロ=旅客1人を1 運ぶとき排出するCO2)は営業用バス268、自家用乗用車911となっています。この数字だけでは自家用乗用車に何人乗った場合なのか分かりませんが、単純に計算してみますと約3.4倍マイカーの方が二酸化炭素を多く出すようです。

  この場合の自家用乗用車のリッター当たりキロ数は不明ですが、単純にリッター当たり10キロとしますと私の場合のリッター22キロでは二酸化炭素排出量はバスの約1・5倍となります。仮に自家用乗用車の乗員が1人だとすれば我が家は2人で乗ることが多く、0.75倍となり、バスより私のマイカーの方が地球への貢献度は高くなります。

  このようにマイカーの省エネ運転は時においてバスより地球に優しい結果を生むこともあるのです。鉄道と比べるとやはり鉄道の方が貢献度が高くなります。この数字を見て単独行動のときはなるべく公共交通機関、複数では便利なマイカー使用になるかな、と思っています。

   ところである知人からゆっくり加速は分かったが、最高速度はどうなっている。速度が速くなると燃料の消費量も増えるぞーと言われました。私の場合は規制速度厳守主義です。4速で時速45㌔に達したあと5速に入れ、ゆっくり加速していきます。そしてその道路の規制速度に達したらその速度を維持します。

  昔、車のカタログには60キロ定地燃費というのがあり、現在の10.15モード、あるいはJC08モードというのはありませんでした。60キロ定置燃費というのは時速60キロで走り続けた場合の燃費で、暖機、発進、加速、減速、アイドリングなどは計算されませんでしたから非常に高い数値となっていました。つまり燃費というのは時速60キロー80キロで一定速度を維持しながら走るのがもっとも効率が高いのです。

  私は規制値ぎりぎりで一定速度を守りながら車を走らせます。このことが高燃費につながる一因だと思っています。40キロ以下だと燃費は当然悪くなります。東名高速などでは時速100キロ制限の区間があります。時速100キロになると燃費は下がってくるのですが、私は高速の流れを妨げないため、早く目的地に着きたいために100キロで走ります。この場合は燃費には目をつぶります。これが清雅坊の弱点でしょう。心の深層には速度への満足感があるのかもしれません。


  <資料よりの解説>10・15モードとは平地を一定速度で走行した場合の市街地を想定した10項目の走行パターンの燃費、そして郊外を想定した15項目の走行パターンを加えたのものが10・15モード燃費である。これに対しJC08モードでは、より実際の走行パターンに近い測定法を実施。測定時間も倍近く長くなるほか、平均時速も高められ、最高速度も70km/hから80km/hに引き上げられる。2011年制度化される。

2010年9月12日日曜日

微妙な交差点でのアイドリングストップ

◆清雅坊の温暖化対策 その7


  交差点で信号待ちの間、エンジンをストップすると燃費が向上すると多くの識者が述べています。信号待ちは車が止まっているのですからエンジンを止めれば当然、燃費は良くなるわけです。実際に信号待ちの間、エンジンが止まる車がマツダ、ホンダなど各メーカーから次々発売され、いずれも国のエコ車両に指定されています。

  これらの車はいずれもハイブリッドかオートマチックで、車が停止すると自動的にエンジンも停止、アクセルを踏むと自動的にエンジンが掛かる仕組みで、人間が感知できるほどのタイムロスが無いのが特徴です。一般的にアイドリングストップ機構、アイドリングストップ装置などと呼ばれています。

  この装置が無い車はどうすれば良いのでしょうか・交差点が赤信号の場合、エンジンを止めればそれでいいのですが、すぐ青信号になってエンジン再スターすれば、エンジンスタートの際は濃いガソリン混合気をエンジンに送り込みますからかえって燃費は不利になります。自動車雑誌などによりますと15秒以下では燃費は増えるそうです。

  またバッテリー、モ-ターなどへの負荷、モーターヘの電力供給を考えますと、あまり短時間のエンジンストップは考え物です。このあたりのデータをきちんと記した資料がまだ入手できておりません。読者の方でご存知の方があれば、ご一報くださるとありがたく存じます。

  私の場合はスクランブル交差点で赤信号に切り替わった直後、矢印がある交差点で赤信号になった直後はアイドリングストップしていますが、短時間で青信号になると予想される場合はエンジンを止めません。

  またアイドリングストップは夏の冷房、冬の暖房を止めてしまうことになりますから精神力との戦いになります。交差点でのアイドリングストップは精神力に自信のある方は挑戦されることをお勧めします。燃費への効果は確かにあります。

2010年9月11日土曜日

暖機運転、夏20秒

◆清雅坊の温暖化対策 その6

  さて車の燃費節約はエンジンの回転数を毎分2500回転以下に落とし、ゆっくり加速する方法以外にいくつか方法があります。その一つがアイドリングストップです。アイドリングというのは停車時にエンジンを掛けっ放しにすることですね。アイドリングにはいくつかのパターンがありますが、その一つが暖機運転です。エンジンが冷え切っているとき走行状態の温度までエンジンを回していくのが暖機運転です。特に冬は暖房を得るためにも暖機運転をする人が多いようです。

  今から30年位前までは暖機運転が奨励されていました。これはエンジンを温めるだけでなく潤滑油を十分にエンジンに送り込む必要があったからです。そのころはエンジンの加工精度が低く、コールドスタートするとエンジンの各部位によって材質が違うために熱膨張率が異なり、強い摩擦や逆に隙間が出来てエンジンが早く傷むためでした。またエンジンオイルはエンジン停止後、4時間で完全にオイルパンに落下。この状態でスタートするとオイルがない状態で強い負荷がかかり、エンジンの磨耗が激しくなるためでした。エンジンそのものも温度の高い走行中を前提に設計されているため、低温度のコールドスタートでは各部品がうまくかみ合わなかったのです。

  ところが最近はエンジンの加工精度、材質が向上、昔ほど暖気運転が必要とされなくなりました。ただコールドスタートではオイルが十分行き渡らないため20秒から1分程度の暖機運転はやはり必要なようです。エンジンのためには発進直後はゆっくり走り、水温計が十分上昇するのを待って通常走行するのがいいようです。またギアにもスタート直後は潤滑油が十分に回っていないため、ゆっくりスタートするのがベターでしょう。

  電気とエンジンで走るプリウスの場合、スタート時にエンジンを掛けますが、エンジンと車輪とは直結しておらず、最初は電気だけで走ります。エンジンが適当に温まったころにエンジンと電気を併用する形で走ります。実によく考えられたシステムです。

  私の場合は夏は20秒程度、冬は1分程度暖機運転、ゆっくりスタートで出発しています。燃費のみを考えてコールドスタートするのは考え物ですね。明日は交差点でのアイドリングストップについて考えてみます。

2010年9月10日金曜日

燃料代、バス代の5分1以下

◆清雅坊の温暖化対策 その5


長距離と市街地の平均燃費がリッター当たり22キロ。長距離24キロというのがいかに素晴らしい数字か燃費にあまり興味のない方は分かりずらいと思います。そこでサイト「レスポンス」が調べた実用燃費と比較してみましょう。実用燃費というのは高速と市街地走行を合算したその車(運転者)の平均燃費で、エコ運転でなく普通の感覚による運転による燃費です。9月9日に集計されたデータで、直近60日以内のデータを集計したものによりますと

スズキアルトの実用最高燃費  アルト 660cc(HA24S)MT FF 17.68km/L

でした。私の車のリッター当たり平均22キロと比べると4.32キロも悪いのです。エコ運転がいかに効果があるか、お分かりになると思います。アルトの生産のほとんどはオートマチックで、実質的には14-16キロが多いと思われます。

しかし私も自慢にならない部分があります。一年間の定期整備でサービスマンに言われたことは「松本さんは非常によく乗っていらっしゃいますね。オドメーターは1万4000キロを指していました。軽の場合、一般的には年間7000-8000キロが普通です」。一般の方の倍近く走っていたわけで、これではガソリン節約になりません。私が3,4種類の社会活動をしている結果、他人様の倍近く走らざるを得なかったわけで、トータルではガソリン節約になっていませんでした。生協活動をしている女性が「一番のガソリン節約は乗らないこと」とおっしゃっていたことが印象的でした。

その私も好んで車を運転しているわけでなく、過去1年間でレジャー目的に車を使ったことは一度もありません。それに車を使うときはなるべく複数人で利用していますし、バス、列車など公共交通機関が容易に利用できる時間帯はなるべくそれらを利用しています。

しかしリッター22キロという好燃費だとバス利用はかなり経済的に不利になります。我が家から県庁まで往復するとマイカーのガソリン代は100円弱。バスだと540円もかかります。マイカーはこのほか車の償却費が必要ですが、車の償却費は使っても使わなくても必要なケースも多く、自動車販売店によると1日に1度は車を動かす方が長持ちする、といいます。どちらが地球温暖化防止に役立つかよく分かりません。列車はマイカーとバスの中間料金で、そこそこ利用させてもらっています。都会のように便数が多ければ利用頻度は高くなると思うのですが。

2010年9月9日木曜日

アルト、長距離でリッター24キロを達成

◆清雅坊の温暖化対策 その4

  さて燃費の出し方ですがプリウスなど最新の車には燃費計がついているので簡単に分かりますが、私の車は中古車でそんな便利なものは付いていません。専門家ではメスシリンダーなどを使って厳密に燃費を出すこともありますが、私にとってそれほど厳密なものは必要としません。そこで私が採った手段は満タン法です。これはガソリンを満タンにしてトリップメーターをゼロにします。次回、ガソリンを入れた時に入れたガソリン量をトリップメーターが指し示した走行距離で割ります。そうすればガソリン1リットルで何キロ走ったかが分かります。

  これを積み重ねていくと月間や年間の燃費も分かります。ただ手許不如意なときにガソリンを満タンにしない場合があります。したがって年間トータルなどはそういう場合を除いた数値となります。いったん走行パターンが決まりますとそれに沿って運転しますから、3年間の長距離、市街地合わせた走行燃費は1リットル当たり21キロ前後で定着していきました。

  こうして3年間が経過、愛車ワゴンRの車検が来ました。事前点検で請求されたのがトータルで40数万円の費用。あまりの巨額にびっくりしそれでは新車に乗り換えた方が得、と考え、今度はスズキアルト5段手動変速に変えました。手動の方が燃費がいいと思ったからです。今度の車も回転計はついておらず、前車と同じ時速10キロ、20キロ、30キロ、40キロでシフトアップする走行法を採りました。アルトはワゴンRに比べ車体がかなり軽く、前面の投影面積も狭いこと、新車であることから良い燃費を期待していました。

  ところが最初の燃費計算の日、それは裏切られてしまったのです。なんと出た数字はリッター当たり19.8キロ。1,2キロも悪いのです。はて?と考え込んでしまいましたが、一つのことに気が付きました。それは時速40キロで4速から5速にギアアップしたとき、45キロまでの速度アップ時にゴツゴツという抵抗感があったのです。低回転過ぎる、と感じました。そこで2速から3速、3速から4速は2-3キロ程度、4速から5速は5キロ程度速度をアップしてからギアチェンジすることにしました。

  そうしたところ1リッター当たり22キロを記録したのです。長距離では丁寧な運転をすると24キロも伸びるのです。市街地中心では20キロから21キロで走っています。これは十分満足できる数字でした。そして今年、8月末で丸1年が経過しました。年間を通してみると暖房を使う冬場は積雪や凍結路もあり長距離、市街地併せて20キロ程度です。夏場はなるべくエアコンは使わないことにしているのですが、猛暑の今夏は別。そこそこにエアコンを使った結果、やはり20キロ前後でした。

  それにしても長距離24キロはうれしいものです。プリウスやインサイトの実用燃費とあまり変わりません。私の友人のプリウスは24キロ、同じくインサイトは22キロです。車格はまったく違いますが温暖化問題に対する貢献度には胸を張れる成績です。

2010年9月8日水曜日

毎分2500回転以下で

◆清雅坊の温暖化対策 その3


  省エネ運転してもたった0.6キロしか距離が伸びないことに悩んでいた時、たまたま読んだ自動車雑誌に「省エネ運転には加速ポンプを働かせないこと」とありました。加速ポンプはエンジンの回転数が毎分2500回転以上になると動くようです。同ポンプはエンジンに自然状態より多くのガソリンを送り込んで、出力を増大させる仕組みで、当然、ガソリン消費量は多くなります。


  私のワゴンRにはエンジン回転計はついていません。タイヤの直径、総減速比などから速度に対する回転数を割り出すしかありませんが、計算式がむずかしく手に負えなません。困って取扱書を見ていましたら「5速は40キロ以上」との記事をみつけました。これを足がかりに1速は10キロまで、2速は20キロまで、3速は30キロまで、4速は40キロまでなら2500回転未満であると推測、そのように運転することを決めました。またその数字なら覚えやすく「当たらずとも遠からず」と思ったからです。

  さっそく実践に移しましたがこれが結構難しいのです。これまでも急加速はしなかったのですが。毎分2500回転以下だと文字通りゆったり加速で、後進車が「速く走れ」とばかりにホーンを鳴らしたり、パッシングしてくる始末。これには往生しました。そこで2車線道路では「抜いてくれ」と手で合図したり、左折ウインカーを点灯するなどして道を譲ることにしました。

  そのうちある出来事に気が付きました。それはゆっくり加速し、速度も法定速度で走っていると次の交差点で信号が赤から青に変わるのです。まるで超能力者の気分でした。

  理由はすぐ分かりました。司法記者をしていたころ県警が「交通信号機を系統式に変える」と発表したことを思い出したのです。系統式というのは各都道府県警で呼び名は違うようですが、コンピューター制御によって優先道路を中心に法定速度で走れば、次の信号が赤から青に変わる仕組みです。この法定速度というのがミソで飛ばしていくと当然、赤信号に引っかかるというわけです。交通の流れをスムースにするための措置です。最近の信号機にはたいてい感知器がついていますが、あれも交通の流れをスムースにするための仕掛けです。
 
  理由が分かればあとは簡単です。毎分2500回転以下のゆっくり加速し、法定速度になったらそれを維持する。そうすれば次の交差点に着くときは赤から青に変わり、停車する必要がありません。燃費は一定速度で走るのが一番いいですから信号機で停車しなかったら当然、大きく伸びます。この運転の仕方は交通安全にもつながります。

  この結果、市街地走行でなんとリッター20・1キロを達成したのです。うれしかったですね。一方、高速道路、国道を使った長距離ではエコ運転しようがしまいが、急加速さえしなければほぼリッター当たり22キロを維持しました。これは高速道路などでは信号がないか、少ないため停車、発進という操作がなく本来の燃費が現れたものと考えています。

  こうして毎月のデータを積み重ねていきますと、長距離、市街地走行合わせた平均がリッター当たり21キロ前後を維持できるようになりました。長距離、市街地の走行比率は同じ日にダブルことも多く出しづらいのですが、日数で分けると長距離1に対し市街地8くらいとなるようです。

2010年9月7日火曜日

エコ運転、わずか0.6キロ向上

◆清雅坊の温暖化対策  その2


  私が車の燃費に興味を持ったのは4年ほど前。地球温暖化防止運動に参加し始めたときで、他人様に省エネを説くならまず自分から、と実戦運動を始めたのです。

  当時の愛車は前輪駆動5速マニュアルの軽中古車スズキ・ワゴンR。買って3ヶ月たらずでした。当初の記録では通常運転で市街地走行ではリッター17・5キロ、国道と高速道主体の長距離では22・0キロという数字。長距離では驚異的な高成績だと思いました。

  それまで持っていた3ナンバーの4WD・ホンダCR‐V(4速オートマ)では市内走行7キロ、長距離11キロがやっとでしたから、すばらしい成績です。好成績な理由はエンジン、車体ともCR‐Vに比べて3分の1と小さいこと、2輪駆動であること、マニュアル変速であることに尽きるでしょう。

  すっかり気をよくした私はエコ運転をすればもっと好成績が出るのではないか、と考えました。エコ運転のコツは「急」の字のつく運転をしないことです。急加速、急ブレーキ、急発進などがそれです。

  それまでは1速飛ばしに運転(たとえば1速から3速に、3速から5速に)するなどかなりイージーな運転をしていましたが、きちんと各段を使用、たとえ前車との距離が空いていてもゆっくり加速、40キロ以上は5速で緩やかに加速することにしました。その結果出た数字が市街地走行で1リットル当たり18・1キロ。イージーな運転17・5キロと比べれば1リットル当たり0・6キロの向上となりました。「やればできる」という達成感とともに「たった0・6キロか」という思いも。

  エコ運転は精神面との戦いです。どうしても交差点発進直後などでは前車との距離が空きますj。次の交差点までには追いつくものの、後車の運転手はいらいらしていないか、と気を使います。同時に後車にもエコ運転をさせているのだ、という変な自負も。0・6キロの差をもっと伸ばしたい、という意欲が燃えてきました。

2010年9月4日土曜日

燃費リッター最高24キロ

◆清雅坊の温暖化対策 その1

  皆様、暑いですね。風通しのいい我が家でも温度計は36度をさしています。今年の夏はまさに異常気象そのものでしょう。私の住む鳥取市でもNHKの全国ニュースで「全国1暑い」と報じられたことが何回かありました。そのうち1回はなんと37.2度だったと記憶しています。すさまじい暑さです。

  小学生のころ夏休みの自由研究で「温度調べ」というのをしました。貧乏な我が家には温度計なんてありませんでしたから、毎日、近くの中学校まで出かけて行って柱に架かっている温度計をみて宿題帳に書き込むのです。その当時、30度を越える日はあまりなく、30度を越えた日は子供ながらに「暑いなー」と思ったものです。

  もっとも子供でしたから観測時間はその日のよってまちまち、親に連れられてどっかに行った日は記録なし、という観測でしたから当てにはなりません。それでも暑さの基準が30度にあったことは間違いありません。さてこの暑さ、その原因は自然現象説と人為説の2つがありますが、私はどちらかというと人為説に共感を覚え、4年ほど前から温暖化防止運動に参加しています。

  運動に参加するにはまず自分自身が省エネと取り組まなければ、と考え、車のエコ運転と自宅の省エネ活動を始めました。紆余曲折はあったのですが、現在は車の燃費は最高リッター24キロ、夏冬の1ヶ月光熱費は6000円台を達成することができました。

  夏ということもあり、光熱費から報告したいのですが、8月の電気代領収書がまだ届いておらず、次回から車の燃費についてお話しようと思います。皆様の生活にもきっと役にたつと思いますのでご期待ください。

  <お断り>5,6日は米子出張などが重なり、執筆する時間が取れません。残念ながら次回は7日となります。ご了解ください。

2010年9月1日水曜日

敵地攻撃能力を

 ◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その18

 敵地攻撃能力確保の必要性がお分かりになりましたでしょうか。つまりこうなのです。韓国が玄武、天竜両巡航ミサイルで任意な時に自由に日本の原発を破壊できるのも、自国に日本からの報復がないからです。日本は専守防衛主義をとっていますから。敵が来たら抵抗しますが、敵の発進地は攻撃しません。だから韓国にとって日本はまるで赤子の手をひねるように自由に処理できる国なのです。韓国にも原子力発電所が3個所あります。もし韓国が日本の原発を攻撃し、その見返りに韓国の原発を攻撃されるようであれば韓国は決して日本に手出しをしません。そのために日本は敵地攻撃の能力を持つべきなのです。

  残念ながら陸上自衛隊は渡洋攻撃できる弾道、巡航ミサイルを持っていません。海上自衛隊も本格的な対地巡航ミサイルを持っていません。航空自衛隊の対地ミサイルは短距離用です。おまけに航空自衛隊の爆弾投下装置は内地に侵攻を受けた時に使用するタイプで、大陸を攻撃できる仕掛けにはなっていません。それに対し韓国は陸海空軍いずれもが当然、本格的な敵地攻撃能力を持っています。軍の目的そのものが敵地攻撃能力なのです。韓国だけではありません。日本の周辺国すべてがそうなのです。ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾すべてそうです。

  日本でしなければならないことはまず敵地攻撃能力の必要性を国民に訴え、理解を求めた上で自衛隊の装備改変に踏み切ります。またできれば憲法を改正し自衛権を明記すべきなのです。もちろん現憲法下でも敵地攻撃能力は認められています。「国際紛争解決に武力は使用出来ない」となっていますが、国家としての存在権は当然あります。国家が消滅するかどうかの瀬戸際に相手国を侵略しない形で敵の攻撃発進地をたたく権利は認められているのです。憲法を改正するのがベターなのですが、当面はこの存在権を使って自衛隊に敵地攻撃能力を付与するのが為政者の仕事ではないでしょうか。

  韓国の玄武、天竜両巡航ミサイルによって日本の首根っこが押さられている現状をもう1回直視してください。読者の皆様の反応をお待ちしています。 

     <この稿、終わり>


           合掌   清雅坊

2010年8月31日火曜日

空自の能力にも限界

  ◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その17

  戦闘機による原発防護は効果があるのでしょうか。日本は現在、主力戦闘機のF15を約200機運用しています。これ以外に数は減りつつありますが、F2が約90機、F4も約90機あります。いずれも空対空ミサイルを装備でき、巡航ミサイルに十分、対抗できます。また「バルカン」20mm機関砲を搭載、ミサイルを撃ちつくした後は、この機関砲で玄武、天竜ミサイルを迎撃できます。

  問題はその数なのです。いずれの機も空対空、空対艦、爆弾、補助燃料タンクなどを積むことができますが、積載能力に限界があるため何と何をどう組み合わせるかはその時の状況によります。巡航ミサイル対策を優先させ対空ミサイルを4発搭載した場合、撃墜できるのは最大限4発。あとバルカン砲で何発撃墜できるか、です。

  全機出動させても380機。でも護衛艦の記事で述べたとおり、補給、整備、訓練などがあり、非常時は訓練を中止しても同時に発進させられるのは100-200機でしょう(これには各条件が重なりなんともいえません)。1機当たり仮に3発撃墜できるとして150機出撃で450発撃墜。

  これは理想的条件での話で、各戦闘機が巡航ミサイルをキャッチできた場合のみです。何回も申し上げますが、玄武、天竜ミサイルは海面、地表すれすれを飛びます。地球が球形なため各レーダー基地からみて水平線以下はミサイルをキャッチできません。おまけに内陸部に巡航ミサイルが入り込むと谷沿いに飛びますからレーダー波では把握できません。有効距離の短い戦闘機のレーダーでは索敵作業がかなり困難です。またルックダウン・シュートダウン能力といって下方低空の目標を探知・攻撃する能力が低い戦闘機もいまだにあるとみられます。

  これらの問題を解決するのが早期警戒管制機です。1万数千メートルの高空から飛行機としては巨大なレーダーで空中を監視、迎撃を指示する飛行機です。これを日本海、太平洋、対馬海峡に飛ばし、韓国領や太平洋を監視すれば玄武、天竜発射は一目瞭然で、対応を各部隊に指示できます。ところが航空自衛隊が持っているのはわずか4機。主に北朝鮮対策に使われていますから、とても余裕がありません。しかも補給、整備、訓練が必要ですから実質常時使えるのは1機。3方面にはとても使えません。韓国が原子力発電所1個所に向け数百発の玄武、天竜巡航ミサイルを同時、あるいは連続発射したら日本側はこれを完全阻止することはできないのです。1発でも原発に命中すれば半径200-300キロは死の国になりますから、その韓国よりの発射予告通告だけで日本は即時降伏です。

  ではこの危機を防ぐにはどうしたらよいか、それは日本が敵地攻撃能力を持つことなのです。
  

2010年8月30日月曜日

護衛艦を原発沖に

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その16

   次に護衛艦を各原子力発電所沖に貼り付ける作戦を説明しましょう。前回、述べたとおり、原発を防護できる対空ミサイル積載護衛艦はスタンダードミサイルを積んだ23隻前後です。これに対し原子力発電所は休止中を含めて19個所あります。しかも護衛艦の運用は補給などの必要があり、最大限でも15隻程度しか稼動できないことは前回、お話しました。そうすると4隻分、不足することになります。

   さらに護衛艦を巡航ミサイル潜水艦対策に相当数が割くとなると原発防護は数個所にとどまってしまいます。おまけにミサイルが陸地から来ると迎撃不能になる可能性が強いのです。地対地巡航ミサイルは地形照合システムで飛来します。谷間伝いに来られるとミサイルキャッチがかなり困難になります。

   たとえば中国電力の島根原子力発電所を例に取ります。同原発は松江市鹿島町片句にあります。島根半島の日本海側で、反対側には宍道湖が広がっています。私が韓国玄武ミサイルの指揮官だったら次のような作戦を立てます。島根原発の西側約22㌔には航空自衛隊高尾山分屯基地があり第7警戒隊が配置されています。いわゆるレーダー基地で日本海や中国地方1円の上空を監視しています。

   一方、島根原発西南西約200キロの見島には航空自衛隊見島分屯基地(山口県萩市見島)があり第17警戒隊が配置されています。ここもレーダー基地です。日本海側から攻撃すれば当然、両警戒隊に発見され、迎撃を受ける可能性があります。ところが両警戒隊の中間には中国地方最大の河川、江の川が日本海に流れ込んでいます。地球が丸いことからレーダーは約30キロ先からは水平線下は見えません。江の川河口は両警戒隊からはそれぞれ約110キロ離れており、巡航ミサイルは海面すれすれに飛びますから発見されることはありません。ただ高尾山レーダー基地は海抜328メートルの高地にあり、その分だけ監視距離は伸びます。

   さて韓国指揮官としては海面すれすれに玄武ミサイイルを飛ばし、島根県江津市で江の川河口に飛び込みます。うまくいけばレーダーには発見されません。あとは江の川に沿って広島県三次市に入ります。ここで左折、谷間を走るJR芸備線沿いに飛び、国道54号線から宍道湖に入ります。ここが一番危険なところで、高尾山レーダー基地に補足されてしまいます。レーダー基地では当然、沖合いの護衛艦に情報を伝えます。巡航ミサイルはさらに佐陀川に入ってレーダーから逃れ、一気に島根半島の尾根を越えて島根原発を襲います。尾根越えから島根原発までわずか0.5秒。どうあっても護衛艦のスタンダードミサイルは間に合いません。高尾山レーダーが宍道湖上で発見してからでも命中までわずか18秒。高尾山から情報を得ても護衛艦としては玄武の予想進路を割り出すのは困難です。おまけにスタンダードミサイルは艦が出すレーダー波が目標(玄武)に当たり、その反射波をスタンダードがキャッチしてその方向に飛ぶ、という仕組みになっています。わずか0・5秒では対応の仕様がありません。

 ただ最新のスタンダードは命中する直前にレーダー波を受ければいい仕組みになっており、護衛艦側で進路のコントロールを十分にできれば、あるいは迎撃が可能かもしれません。いずれにしても陸地側から来られれば原発防御は至難の業です。特に一度に100発もの玄武が飛来すれば護衛艦はたちまち弾切れとなり対応のしようがありません。

 このように護衛艦による原発防御には限界があります。では戦闘機ではどうでしょう。

2010年8月29日日曜日

きょうもお休みにさせてください

29日は繁忙となりそうです。原稿はお休みにさせてください。
 
合掌   清雅坊

2010年8月28日土曜日

お休みにさせてください

社会活動をいろいろしていると必ず揉め事に遭遇します。今夜もそれで遅くなり、たった今、帰宅しました。原稿を書く時間がありません。本日はお休みにしてください。

   合掌   清雅坊

2010年8月27日金曜日

非現実的な艦隊1列作戦

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その15


   韓国の巡航ミサイルに対し自衛隊はもう少し抵抗能力を持っていることを示唆しました。実際にはどの程度、抵抗能力を持っているのか、実戦で役に立つのか調べてみたいと思います。巡航ミサイルを撃墜する能力を持つのはこれまで述べてきた陸空自衛隊の対空ミサイルのほか、護衛艦のスタンダードミサイル、戦闘機のF15、F4、F2があります。今回は護衛艦について考えてみたいと思います。

   護衛艦による原子力発電所防御の考え方は2つあります。巡航ミサイルが飛来する日本海や対馬海峡にづらり1列に護衛艦を並べる方法。もう一つは原発の沖合いに1-2席の護衛艦を配置してミサイルを撃墜する方法です。まず護衛艦の能力ですが、護衛艦の持っている対空ミサイルは個艦防御用のシースパローと艦隊防御用のスタンダードミサイルです。シースパローは自艦に向かってくる航空機やミサイルを撃墜するもので、射程は26 km程度。韓国の巡航ミサイルが自艦の真上を通過するならともかく、原発攻撃ミサイルはとても迎撃できません。

   スタンダードミサイルは射程約40~80キロで足が長く他艦に飛来した航空機やミサイルを打ち落とす能力を持っています。護衛艦隊48隻のうち23隻程度がこのミサイルを所持、あるいは搭載可能と推測されます。

  さて護衛艦の運用ですが、通常①実戦配備②半実戦半訓練配備③教育・訓練④ぎ装、補給、修理―の4サイクルを交代で回しています。非常時には教育・訓練を省いて実戦に回せますが、そのスタイルは長く続けられません。

  横1列に日本海、対馬海峡に護衛艦15隻並べると配備するとして、1隻当たりの平均守備距離を90キロとするなら、総延長は1350キロ。これでは西端を済州島沖に置くと能登半島沖で切れてしまいます。これでは迂回コースで自由に日本列島に侵入できます。また韓国は最新鋭の対艦ミサイイルを装備していますから、単艦防御になる護衛艦を1-2隻沈めておいてその隙間から巡航ミサイイルを侵入させることができます。

   実はこの1列配備は非現実的なのです。韓国は巡航ミサイル潜水艦を3隻以上所持しています。同艦に積む巡航ミサイル天竜は射程距離1300キロもあります。海上自衛隊としてはまず対潜作戦に全力で取り組まなくてはなりません。とても横1列作戦に回せる隻数がないのです。

2010年8月26日木曜日

資料紹介とさせていただきます

本日は私にとって重大事が発生、帰宅が午後11時を回りました。とても本稿を執筆する余裕がありません。残念ながら資料紹介とさせてください。

  前掲分を除くここまでの主な参考資料

サイト モリアーチー教授の雑学講座

航空ファン各号 文林堂

サイト さるさる日記

世界の傑作機各号 文林堂

東亜日報日本語電子版

 「シベリア先住民の歴史」 ジェームス・フォーシス著 彩流社

「日本とロシア」 高野明著 紀伊国屋書店

「「ロシアの風」 中村喜和著 風行社

サイト ロシア人のシベリア征服 出羽 弘

2010年8月24日火曜日

たった500発で国土壊滅

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その14


   韓国が巡航ミサイル玄武、天竜を実戦配置したことにより、対日関係において最終決定権を握ったことは皆様、ご理解願えたと思います。これに対抗するには敵地攻撃能力を自衛隊が持たねばならぬこと、それを認める国民の合意、政府の意思決定が必要なことがお分かりになったと思います。これまでの論拠を整理してみますと

  ①韓国民の反日感情は日本人が考えるよりはるかに悪く、韓国政府は毎年のようにアメリカ政府に対し、日本を仮想敵国とするよう求めています。国民もその70%が「1度は日本と戦争すべきだ」と考えています。

  ②そのため韓国政府は対日攻撃用の巡航ミサイル玄武(射程距離1500キロ、1000キロ)、天竜(同1300キロ)を実戦配備、核爆弾装備と同じ効果がある原子力発電所攻撃を準備しています。

  ③それに対し日本側は原発防護の対空手段を一切こうじておらず、対空ミサイル配備の用地さえ確保していません。

  ④仮に陸空自衛隊が手持ちの全対空ミサイルを原発19個所に分散配置出来たとしても、1原発当たりの迎撃能力は20-50発程度(異論は相当あると思います)で、韓国が100発も打ち込めば原発は炉心爆発を起こし半径200-300キロは全滅します。

  ⑤日本を滅亡させるには列島沿いに5個所の原子力発電所を攻撃すれば済みます。1個所だけでも日本は分断され、あとの被害を恐れ降伏するでしょう。

  ⑥茫然自失した日本政府は、韓国が原発攻撃を通告した瞬間に降伏します。

  ⑦日本としての対応策は敵地攻撃に踏み切るしかありません、そのためには国民の合意、政府の決断が必要です。

   以上です。日本国家としてどうすればいいか、皆様もお分かりになったと思います。日本政府の不甲斐無さに落ち込む人もいるかもしれません。次回は実際には自衛隊はもう少し抵抗能力を持っていることをお話し、多少、救いがあるかもしれぬことを明らかにします。


  <お断り>あす25日水曜日は激務で出稿できません。お休みとさせてください。

                                      合掌  清雅坊

2010年8月23日月曜日

韓国全体の気分は反日

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その13


   中央日報の記事は日本人には読みづらく、意味の分からぬ所もあったと思います。記事のうち核の傘については韓国国内の問題であり、考えに入れなくていいと思います。要は韓米定例安保協議会で韓国が米国に対し日本を仮想敵国として扱え、と要求していることなのです。平和ボケした今の日本人は仮想敵国といってもピンとこないでしょうが、交戦国に準ずる国ということで、将来、交戦国となる可能性が高い国、ということなのです。いわば敵国扱いせよ、ということなのです。

   要求を受けた米国側が「一つの価値もないとし断った」ことは今の日米関係から見て、当然のことなのです。ところが日本側はこの重大事について韓国に対し何ら抗議することもなく、事情説明を求めることもありませんでした。毎年繰り返されていることとして気安に構えていることなのか、問題の重要性を認識していないことなのか、腫れ物にさわることとしてあえて問題にしなかったのか、理由は分かりません。日本のマスコミもなぜかこの問題を報道しようとする気構えはありませんでした。

   これが逆の立場だったらどうでしょう。日米安保の協議会で日本側が米国に対し韓国を仮想敵国としろ、と要求したら韓国政府は国交断絶をちらつかせながら、日本に厳重抗議するでしょう。また韓国民も即時開戦、九州占領を叫ぶ反日グループが日本大使館を包囲するでしょう。それほど問題は大きいのです。

   問題の大きさから答弁した大使も「こうした問題が提起されていたとは考えていない」としており、否定も肯定もしない立場を貫いています。韓国政府でさえこんなありさまですから、民衆はもっと反日的です。韓国のマスコミが「一度は日本と戦争したいか」とアンケート調査をしたところ、国民の70%が日本と戦争したい」と答えたそうです。ただ韓国を弁護するなら李 明博大統領が2008年に就任して以来、日本仮想敵国論があまり表面化していません。ありがたいことと思います。でも韓国は状況がそろえば対日開戦する気構えがあることを十分認識、原子力発電所防御の体制作りを一刻も早く整えねばならないと考えるのですが、皆様のご意見をお聞かせください。

2010年8月22日日曜日

日本を仮想敵国に

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その12

   韓国の巡航ミサイル玄武・天竜による日本の原発攻撃を防ぐには日本が敵地攻撃能力とその意思を持つことーと問題解決の処方を示しました。これに対し「韓国が日本に敵対するわけはない」と多くの読者の皆様が考えている、と推測しています。これが日本人の常識的な見方でしょう。

   ところが韓国は毎年のように韓米定例安保協議会(SCM)で、韓国政府が米国政府の『核の傘』提供の削除を求めると共に、日本を『仮想敵国』と表現することを求めています。これはなぜか日本のマスコミはほとんど報道していません。一口で言うと韓国はアメリカに対して日本を仮想敵国としろ、というものです。これに対しアメリカは毎年、一笑に付しているようですが度重なる要求に米国内の反日派議員は心をとめている人もあるようです。そんなことはあり得ない、と考える人のために少し古いですが2006年10月18日の韓国・中央日報日本語電子版の記事を書き写します。このようなことが毎年、繰り返し行われていることに注目ください。少し冗長になりますが我慢ください。

韓国、昨年SCMで米国に「日本を仮想敵国に」要請

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=80903&servcode=200§code=200

 「昨年10月に開かれた韓米定例安保協議会(SCM)で、韓国政府が米国政府の『核の傘』提供の削除を求めると共に、日本を『仮想敵国』と表現することを求めていた」との主張が出ている。

17日に行なわれた駐米大使館に対する国政監査で、無所属の鄭夢準議員が指摘したもの。鄭議員は「韓国政府がそのように主張したが、米国が拒否したと聞いている」と付け加えた。また「韓国政府内にこうした考えを持つ人がいることが心配だ」と指摘している。質疑を終えた鄭議員は「どこで同情報を得たのか」という記者の質問には答えず「そういう発言があったから、調べれば確認できるだろう」と述べるにとどまった。

また、米日同盟などを考えれば韓国政府がこうした意見を出せるだろうかという質問には、「核の傘提供」の削除要請も通常なら考えられないのではないかと反論。続いて鄭議員は「韓半島有事の際に米軍の後方支援を行なえるよう日本が関連法律をまとめており、韓国は支援を受けることになるにもかかわらず、韓国政府内にこうした考え方の人がいるのは非常に心配だ」と語った。

  一方、鄭議員の質問に対し答弁に立った李泰植(イ・テシク)大使は、こうした問題が提起されていたとは考えていないと応えた。だがワシントンの外交消息筋は「鄭議員の話が正しい」と述べた。同筋は「鄭議員はこの日、昨年SCMに深くかかわっていた米国側の人物からそうした話を聞いただろう」とし「当時韓国代表団が、北東アジアにおいて日本の潜在的脅威が大きいとの点を強調し『仮想敵国』に触れると、米国側は一考の価値もないとし断った」と伝えた。

李相逸(イ・サンイル)特派員

2006.10.18 16:53:54

2010年8月21日土曜日

敵地攻撃しても占領はしない

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その11


  韓国の巡航ミサイル玄武、天竜を防ぐには日本が敵地攻撃能力を持つしかない、ということがお分かりになりましたでしょうか。しかし現実には日本はその能力を持っていません。その能力は2つに分けて考えられます。一つは国の意思として敵地攻撃を認めること。もう一つは航空機の爆撃能力や巡航ミサイルを持ち、技術的に周辺国に対し対応能力を持つことです。

  技術的な面は予算さえつけばそれほど難しくはありません。問題は国家意思で専守防衛を捨て必要に応じて敵地攻撃もありうる、とい体制をつくることです。これは憲法解釈問題も出てきますし、新たな法制化も必要かもしれません。場合によっては憲法改正も必要でしょう。

  突破口は「事実上の核攻撃(原発攻撃)を防ぐため敵地攻撃はするが、占領はしない」という前提で国民を説得することです。現憲法では交戦権は認めていないものの、侵略があった場合の国家防衛は認めています。韓国に限らず周辺諸国が特定の原子力発電所に的を絞り100発単位のミサイルを撃ち込めば日本は崩壊してしまうわけですから、それを防ぐために敵地攻撃は憲法上許される、と見るのが一つの憲法解釈です。ただその場合、交戦権は認めていない訳で、敵地占領は出来ぬ、と考えられます。

  専守防衛の考え方は「防衛はするが敵地を占領せぬ」ということですから、敵地攻撃は「積極的な専守防衛」とも考えられます。また憲法学者によっては憲法改正が必要、と指摘する向きもありましょう。それはそれで当然です。憲法解釈で敵地攻撃能力を認めるか、憲法改正で普通の国のように交戦権を認めるか、与党の意思に関わります。

  現在の日本の平和は自衛隊の寄与する部分はわずかで、米軍駐留によるもの、というのが現実ですから、そのアメリカが政策変更すればひとたまりもありません。現に中国の経済力増強に合わせ対中政策が過去に比べ融和的になっています。

   韓国にとって原子力発電所1箇所に100発単位の巡航ミサイルを集中させる、といことはいとたやすいことです。最初に申し上げました通り、巡航ミサイルというものは安価に製造できます。弾道ミサイルやジェット戦闘機に比べれば想像出来るでしょう。100発で日本は降伏するのですからこんな効率的な兵器はありません。しかも「核武装した」と他国から非難されることもありません。日本の一刻も早い政策変更を望みたいものです。

2010年8月20日金曜日

敵地攻撃能力の所持

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その10


  宿題となっていました韓国巡航ミサイル群から日本を守る方法、見つかりましたでしょうか。そうです。日本も「普通の国」になれば済むことなのです。韓国が一方的に日本を攻撃する能力を持ち、日本は韓国に反撃できないその矛盾を解決することが出来れば、日本は韓国のみならず中国、ロシアなど周辺諸国と対等の立場になれます。


  どういうことかといいますと日本も敵地攻撃能力を持つことなのです。韓国が日本の原子力発電所のどれかに巡航ミサイルの集中攻撃をかけると通告すれば日本は降伏してしまいます。韓国にも原子力発電所が5箇所あります。日本も同じようにすればいいわけです。しかし日本の国防は「専守防衛」が国是、となっています。敵のミサイルが飛んでくれば撃墜できるが、敵のミサイル基地は攻撃できない、というのが専守防衛です。昭和20年代に警察予備隊が発足したとき、この専守防衛が決まりました。現憲法と国防政策を矛盾させないための決まりです。

  アメリカに占領されていた時代はそれで十分でした。まさか連合国の意図を破って日本が他国を攻撃することなどは考えられなかったからです。しかもそのころはミサイルも核も米ソを除いてなかった時代です。時代背景がまったく違っていました。でも現在は人口がわずか2000万人の北朝鮮さえ核、中距離弾道ミサイルを所持する時代です。日本だけが周辺諸国から取り残されました。

  それでも米国が責任持って核の傘で日本を守ってくれる約束を履行するならそれはそれでいいでしょう。しかしソ連の崩壊、中国の大躍進、北朝鮮の核武装と運搬手段の確保という変化の中で、米国はイラクやアフガニスタンといったイスラム諸国との対決にエネルギーを割かれています。米国では内心では「日本の防衛は日本自身でやってくれ」と考えていることは多くの識者が指摘するとおりです。まして普天間基地問題にみられるような反米的とも思われるような民主党の対応では「若いアメリカ人の血を流してまで日本を守る義務はない」との声も出てくるのは当然なのです。

  おまけに日米安全保障条約では「日本はアメリカに基地を貸すが、アメリカは日本防衛の責務は存在しない」ことになっているのです。この結果、「スイング(振る)作戦」といって日本にいる米軍がイラクやアフガニスタンに出兵、日本を空にしている期間が長期存在しています。そのいい例が海兵隊です。海兵隊は日本を基地にして紛争地に随時、出撃しています。日本を守るために海兵隊が存在しているわけではないのです。読者の皆様、日本がどうすればいいのかお分かりになったと思います。

2010年8月19日木曜日

射程1300キロの天竜

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その9

  韓国海軍が所持していて日本からあまり注目されていない兵器、それは韓国産の艦対地巡航ミサイル天竜(チョンリョン)のことです。天竜は従来、射程500キロ以上と伝えられ、主として北朝鮮対策の艦対地ミサイルと思われてきたのです。ところが韓国国防省関係者は今年7月、韓国マスコミの取材に対し「玄武3Cはすでに海軍艦艇に配備された射程距離1300キロの天竜を改造したもの」とし「誤差範囲は3メートル以内で正確だ」と説明したそうです。

  玄武3C(射程1500キロ)はこれまで玄武3B(射程1000キロ)の発展型と思われてきました。記者も過去の取材からそう思っていました。ところが艦対地ミサイル天竜は射程500キロ以上というその「以上」は実は1300キロもある長射程巡航ミサイルだと分かったのです。軍関係者が兵器の能力を過小に評価してみせるのは防諜上、日常茶飯事です。それにしても500キロと1300キロでは大違いです。対日作戦用の意図が込められていたことから実際の射程距離を秘密にしていた可能性があります。

  それと同時に天竜の基になったのが米軍のトマホークです。トマホークは各種ありますが、主力は射程1500-2000キロクラスです。500キロクラスを少しづつ改造して1300㌔にしたのなら納得できます。少なくとも3隻以上の駆逐艦に搭載されています。

  この天竜を地対地巡航ミサイルに改造、射程を延ばすのは技術的にそれほど大きな困難はなかったはずです。さらに注目されるのは天竜が潜水艦発射型の潜対地巡航ミサイルにも改良されていることです。2007年以降、投入された3隻の3000トン級巡航ミサイル潜水艦にも配備されていることは確実です。同潜水艦のミサイル発射方法が浮上型か水中発射型かは不明ですが、韓国の技術から見て水中発射型の可能性が高く、周辺諸国は対策に苦慮しそうです。

  この2種類の天竜で日本は大変な苦境に立たされたのです。水上発射型は射程が1300キロもあることから、洋上に出なくても軍港内から容易に日本の全原発が狙えます。洋上でしたら日本の潜水艦や水上艦艇に制約を受けますが、港内でしたら対空ミサイルに守られ安全です。

  潜水艦発射型では例えば三陸沖はるかに潜水待機、必要に応じて天竜を発射します。日本の防空は日本海中心で、早期空中警戒機は4機とも北朝鮮ノドン対策に張り付いていますから、太平洋はがら空きです。三陸沖はるかで発射された天竜は海面すれすれを飛び、航空自衛隊警戒群(地上設置型レーダー)に補足されたときには既に内陸近くに達しています。日本がジェット戦闘機などの迎撃をかけ、対空ミサイル群に指令しても間に合わぬ可能性があるのです。

  何より怖いのが原発1基に的を絞り、玄武B・C、天竜艦対地、天竜潜対地の全てで集中攻撃をかければ日本側はたちまち「弾切れ」となり原発は完全破壊、半径200-300キロは死の国になってしまうことです。韓国側が対日決定権を握ってしまったのです。あなたならこの事態をどう切り抜けますか。

2010年8月18日水曜日

1箇所に集中発射ですべて終了

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その
8

  原子力発電所を韓国・玄武ミサイルから防護するにはパトリオット、03式誘導弾、81式短距離地対空誘導弾(短SAM)、改良ホーク、L-90高射機関砲などを原発に配備すればある程度、有効との話をしました。「ではそれで行こう」と読者の皆様が結論付けられては困るのです。問題は玄武の攻撃方法にあるのです。原発が破壊され炉心爆発でも起こせば半径200-300キロは無人地帯になることは何回もお話しました。韓国が玄武ミサイルで武装することによって核兵器を持ったと同じ効果があるのです。核兵器に比べ玄武は安上がりの兵器です。玄武を何千発も消費しても核武装するよりはるかに低廉なのです。

  1射撃単位(空自パトリオットは1高射隊、陸自03誘導弾は1特科中隊=対空戦闘の最低単位)は20-48基のミサイル発射機を装備しているといわれていますが、仮に韓国が防備の薄そうな原発1基に狙いを定め、たった100発の玄武を打ち込んだら日本側はお手上げです。原発に配備された1射撃単位の全誘導弾を撃ち、全弾が玄武に命中し、高射機関砲で何発が打ち落としたとしても、少なくとも40発以上の玄武が原発に命中します。当然、炉心爆発を起こし、仮に若狭湾の美浜原発なら京阪神、中京は被爆、全滅します。韓国は別に何千発もの玄武を必要としません。1箇所の原発に100発も集中さえすれば日本は降伏します。別に発射しなくても攻撃するぞ、と脅すだけで日本は降伏するでしょう。それだけの威力を玄武は持っているのです。
   
  日本側は数少ない対空ミサイル部隊を19箇所の原子力発電所(休止中を含む)に分散しなければならない(しかもその計画さえありません)のに、韓国側は1箇所だけに玄武を集中発射すれば済むのです。韓国側にとってこんな簡単な攻撃方法はないでしょう。

  それだけではありません。日本の関係者は誰も注目しませんが。韓国海軍はとてつもない対日攻撃能力を持っているのです。玄武と合わせ日本を攻撃すれば日本列島を壊滅させることは、いとたやすいのです。明日は韓国海軍の秘密兵器(実際は公表兵器、関心を持たれていないだけ)を明らかにします。ご注目ください。

2010年8月17日火曜日

自動的迎撃態勢が必要

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その7


  敵ミサイルが襲来した場合、米軍の例ですと1目標に対し2発の迎撃ミサイルを発射しています。湾岸戦争での撃墜率は50―70%。1射撃単位で同一目標に対しこれ以上にたくさんの迎撃ミサイルを発射しても有効なのかどうなのか、レーダー能力、電算能力などが複雑にからみあい、実体は明らかにされていません。ただ日本の場合、1射撃単位で20-48基のミサイル発射機を持っているともいわれ、複数目標に対しは効果的に対処できることは間違いありません。


   これらの対空ミサイルで撃ち漏らした後をカバーするのが81式短距離地対空誘導弾(短SAM 略称 ショートアロー)、改良ホークという2種類の対空誘導弾、それに高射機関砲のL-90です。それぞれの性能、配備状況はインターネットで検索していただければすぐ出ますので、ここではくどくど述べませんが、いずれにしても師団防空などでなく原子力発電所に複数配備して万全を期すのが当然でしょう。あとはこれらの配備を原子力発電所にするかどうか、政治的決断にかかっています。


  また航空自衛隊のジェット戦闘機、海上自衛隊の艦艇もそれなりに有効に玄武ミサイルをたたくことは出来ます。問題は国全体の迎撃決断なのです。たとえば早期警戒管制機などで韓国が玄武ミサイルを発射したことをキャッチした場合、迎撃態勢をいかに早く作動させるか、なのです。北朝鮮の不審船が能登沖に出現したさい、官邸に情報が伝わったのは半日後、との説があります。これでは迎撃命令が間に合うはずもありません。仮に玄武が静岡県の浜岡原発に発射された場合、15分もあれば命中するでしょう。命中すれば関東は無人の地となります。当然、政府も機能しなくなります。最高指揮官の決済を得るのでなく、自動的に迎撃する態勢を確立することが大切なのです。政府の危機管理に対する意識の改善を求めたいものです。

2010年8月16日月曜日

1原発1射撃単位の用地確保

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その6

  国内19原子力発電所(休止中を含む)を韓国・玄武巡航ミサイルから守るにはどうしたら良いでしょうか。読者の皆様も気が付かれたと思いますが、全原発に対空ミサイル配備用地を確保し、いざという時は陸空自衛隊の対空ミサイルを移動、配備すれば問題は相当数解決します。特にレーダー車両を配備する場所は高台でないといけません。素人の悲しさ、レーダー車両とミサイル発射車両とどの程度、離して置けるものか分かりませんが、各原発単位に自衛隊の要求する場所にきちんと空き地を確保すべきなのです。

 出来得れば宿舎も確保、長期配置ができるようにし、さらに北朝鮮コマンド部隊対策として普通科部隊を配備できれば理想的です。さて部隊の配備間隔ですが、陸自の03式中距離滞空誘導弾の射程距離は約50キロ、空自のパトリオットは15-35キロです。パトリオットの射程距離が短いのは弾道ミサイル対策があるためです。若狭湾にある敦賀、美浜など5原発を除いて原発間の距離は数百キロありますから、原発1カ所について最低1射撃単位の配備を必要でしょう。若狭湾についても相互防衛の見地から1原発1射撃単位の配置が不可欠といえます。

  対空ミサイル配置となれば地元では必ず反対運動が起きます。これを乗り越えて用地確保をしなければなりませんが、必要に応じて収用法適用くらいの思い切った対応も必要となってきます。反対運動をしようとしている人が被爆者にならぬためにも説得活動が必要です。忘れてならないのが取り付け道路の建設。射撃単位には大型トレーラー級の車両も含まれます。それらの車両が不自由なく通行できる県道クラスの道が必要です。

  中国電力の島根原子力発電所を例にとりますと、発電所西側の松江市片句の漁港と発電所間の尾根。または片句から佐陀本郷にかけての県道37号線の北側か南側に適地があります。いいことには37号線はほぼ島根半島の尾根筋にあり、眺望がよく効くことです。レーダー設置にはもってこいといえます。37号線は一部1車線のところもあり、往復2車線の拡幅が必要です。沿道は山林で単価的には安く、韓国にも近いことから早期の整備が必要でしょう。

2010年8月15日日曜日

対空ミサイル配置の用地なし

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その5

 射撃単位として空自のパトリオットは24個、陸自の03誘導弾は32個、併せて56個射撃単位が整備されつつある、と前回書きました。それに対し防衛すべき原発は55基あります。1基1射撃単位を配備すれば数は合うのでは、と考えがちですが、実情は大きく違います。原子力発電所には通常、複数の原子炉があり、柏崎刈羽原子力発電所のように7基も持っているところもあります。原子力発電所としての総数は18箇所で、休止中も含めると19箇所あります。休止中のところも原子炉内には放射性物質が入っているので、当然、防御すべきなのです。要は56射撃単位で19箇所の原子力発電所が完璧に守れるか、なのです。1箇所でも失敗すると半径200―300キロは人が住めなくなります。

  さてその射撃単位なのですが、現時点で原子力発電所防御のために配置されているのは1個もありません。首都機能、主要都市防御として配置されており、公式文書には明らかにされていませんが、米軍機能を守るための配置もあるようです。官僚脱皮・政治優先を掲げる民主党政権の国防部門(果たしてそのような組織があるのかどうか疑わしいくらい)では、漏れ承るところによると、対空誘導弾による原発防備の思想はまったくないようです。このあたりのことについて情報をお持ちの方は是非、ご連絡ください。

   繰り返しになりますが韓国の玄武ミサイルは非核弾頭なので命中してもその施設を破壊することだけに留まります。たとえ首相官邸が攻撃されても官邸が破壊されるだけでそれ以上の影響力はありません。しかし原発が攻撃を受けると核攻撃を受けたと同じ惨状になり、炉心そのものが核分裂を起こせば近くの都市は消滅、2―300キロ圏は無人地帯になるでしょう。首都機能防護より原発防護がなにより優先されるべき課題なのです。しかし民主党政権ではそのことを議論した様子もありません。

  幸いなことに陸空とも射撃単位は移動式です。昨年の北朝鮮ミサイル発射実験のさいはパトリオットが船で秋田県に運ばれ発射態勢に入ったことは記憶に新しいことです。非常時には射撃単位を原発に貼り付ければ相当効果がありそうです。記者はこれまで国内18原発のうち島根原発など7原発を視察、見学しました。しかし射撃単位を収容できそうな空き地を所持している原発はありませんでした。射撃単位は発射台トレーラーなど10数両の大型車両で構成されています。さらに発射の時は燃焼ガスが広範囲に噴出されます。どう考えても小学校の校庭の数倍程度の空き地が必要です。秋田県にパトリオットが展開したときも自衛隊の基地(演習地?)内に収容されました。

  またレーダー車両は見晴らしの良い所に配置しないと、地形に沿い地表面すれすれに飛ぶ玄武ミサイルをキャッチすることはできません。各原発にそれらの用地が確保されていることは疑わしいものです。非常時になってあわてて原発近くの松林を伐採するようではとても間に合いません。どうすればいいのでしょうか?

2010年8月14日土曜日

56個しかない射撃単位

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その4


   自衛隊の能力で果したて玄武3B、3Cへの対応能力はあるのでしょうか。自衛隊員の個々の能力、組織力は高いと思われますが、平和ボケした自民党、民主党政権下で絶対数を削減された姿が垣間見えます。巡航ミサイルに直接対処できるのは航空自衛隊のパトリオットミサイル、陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾です。ほかにジェット戦闘機や護衛艦がありますが、これは別途書きます。

   まず空自のパトリオットですが、航空機、大気圏内ミサイルを撃墜するPAC2型と弾道ミサイル相手のPAC3があります。米国の発表では、1990年の湾岸戦争の際のPAC2の迎撃成功率は、イラクからサウジアラビアへ発射されたミサイルに対しては70%、イスラエルへ発射されたミサイルに対しては40%です。PAC3の迎撃率は正式には発表されていませんが、米国の研究者のレポートなどでは、50%とされているそうです。PAC3はまだまだ開発途中の、未完成な兵器なのです。

   パトリオット・ミサイル発射システムはトレーラー移動式のシステムで、1つの射撃単位はパトリオット高射隊(米軍では中隊という)によって運用され、射撃管制車輌、レーダー車輌、アンテナ車輌、情報調整車輌、無線中継車輌、複数のミサイル発射機トレーラー、電源車輌、再装填装置付運搬車輌、整備車輌という10台以上の車両により構成されます。これらの車両が自走して発射拠点に設営後、射撃体勢が整のいます。

   日本では1989年(平成元年)度から航空自衛隊の高射部隊に地対空誘導弾ペトリオットとして配備が開始されました。実働部隊の6個高射群24個高射隊(各高射隊は5機の発射機を有す)と教育支援部隊の高射教導隊が、北は長沼町(北海道)から南は南城市(沖縄県)にかけて配置されています。弾道ミサイル迎撃用のPAC3について2007年3月30日に埼玉県の航空自衛隊入間基地に所在する第1高射群第4高射隊に最初に配備されました。全高射群に配備される予定です。配備される各高射隊の発射機のうち2機がPAC3弾の搭載・運用に対応します。

  弾道ミサイル迎撃用のPAC3は巡航ミサイルに対しては50%程度の迎撃率しかないようですが、改良が続けられており、空自ではもう少し性能がアップしているのではないか、とも言われています。

  陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾は改良ホークの後継として2003年度(平成15年度)に制式化され、陸上自衛隊の方面隊隷下の各高射特科群の高射中隊を中心として配備が進められています。パトリオットと同じような車両構成となっています。射撃単位は1個中隊です。陸上自衛隊の1個高射特科群は4個高射中隊からなり、8個群が03式中距離地対空誘導弾に更新される予定です。これが実現すると32個高射中隊が誕生するわけです。1個群の価格は約470億円で、同規模のペトリオットの調達価格約850億円より低く抑えられているのが特徴です。しかし、21世紀以降の急速な財政悪化による防衛予算の削減で遅々として配備が進まず、巡航ミサイルに対し対応力が危惧される改良ホークからの更新が進んでいないのが現状です。射撃単位としては整備が完了しても陸空合わせて56個しかないのです。さてこの装備で日本の55基の原発が玄武から守り切れるでしょうか。

2010年8月13日金曜日

参考資料の紹介です

盆入りとともに急に忙しくなり、先ほど帰宅したところです。残念ながら原稿を書く時間がありません。未掲載分の参考資料紹介ということで勘弁ください。

前掲を除くここまでの主な参考資料


島根県大百科事典 山陰中央新報社

朝鮮日報日本語電子版

中央日報日本語電子版

現代新百科事典 学研

サピオ各号 小学館

2010年8月12日木曜日

大型トラックに積載可能

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その3



  玄武3Cは韓国軍と国防科学研究所(ADD)が開発し、ADDの探索・体系開発、試験評価を経て、LIGネクスウォン(旧LG精密)が量産を開始した最新型巡航ミサイルです。全長6m、直径53-60cm、重量1.5tで、大型トラックに搭載できる大きさ。飛行機と同じジェットエンジンを搭載しており、速度はマッハ1(時速 1260km)以下で、弾頭重量は450kg程度。目標に対する命中誤差は1-2mとなっており、米国のトマホークに匹敵する性能があります。

  韓国は北朝鮮のようになぜ弾道ミサイルを開発せず、巡航ミサイルを採用したのでしょう。アメリカが韓国の暴走を恐れてミサイルの開発規制を”押し付けた“からなのです。北朝鮮のミサイル発射を受けて2001年に新たに改正された米韓ミサイル合意(ミサイル関連技術輸出規制・MTCR)は、韓国が開発可能な弾道ミサイルを射程距離300km以内に制限する一方、巡航ミサイルについては無人航空機(UAV)と同じ系列に分類し、「弾頭重量500kg」を超えなければ、射程距離に関係なく開発することを認めたのです。韓国国防部としては、北朝鮮全域を制圧できる巡航ミサイルの開発に力を注ぎ、射程1000キロの玄武3Bを2006年ごろ配備しました。

  北朝鮮に対してはこれで十分だったのですが、将来、発生しうる対日戦を考慮、日本列島全域を攻撃対象とし得る射程1500キロの玄武3Cを開発したのです。

  これに対し反応したのは日本でなく中国でした。中国メディアの反応は素早いものでした。韓国メディアによると、中国の環球時報は「今回のミサイル開発により、韓国の戦略的威嚇(いかく)が朝鮮半島を超えた」とし、ミサイル射程距離内に中国の一部が含まれたことについて憂慮(ゆうりょ)を示しました。

    さらに、「韓国の冷静でない態度は、東北アジアから歓迎されないだけでなく、天安艦事件を口実に禁止区域にまで飛び込もうとしているのではないか」「ミサイル開発により、刺激と不安が東北アジア全体に波及する」と韓国のミサイル開発に対し強く批判しています。

  しかし冷静に考えれば韓国が中国を攻撃することは事実上あり得ないのです。あまりにも国力が違いすぎ、もし両国が交戦状態となったら中国は核弾頭付きの中距離弾道ミサイルを韓国にたたきこむでしょう。北朝鮮というクッションがある以上、両国が直接矛を交えることはあり得ません。玄武3Cの狙いはあくまで日本なのです。日本にこのミサイルを迎撃する能力があるのでしょうか。

2010年8月11日水曜日

5基攻撃受ければ国土壊滅

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その2


  韓国が日本列島全域を射程範囲に収めたミサイルを配備したからといって特に緊急な問題でない、と判断される方々があると思います。単純に考えても地上配備兵力は韓国の方が6倍以上も強力ですし、今さら問題にすることもない、日米安保条約がある以上、安心していられるーと考える人もあるでしょう。

  でもこれはそんな単純なものではないのです。実は地上発射型巡航ミサイル「玄武3C」は首都や自衛隊基地を狙ったものではない、ということです。目標はずばり原子力発電所。これを破壊すればチェルノブイリ原発の例に見られる通り半径200-300キロは人の住めない放射能汚染地域になってしまいます。その範囲に住む人の多くは死亡し、産業は壊滅、死の国土となってしまいます。日本にある55基の原発のうち300-400キロごとに1基ずつ計5基破壊すれば日本は死滅します。誰も住めない国土になってしまうのです。韓国とすれば別に核兵器を開発せずとも玄武3Cを発射すればそれで事は足りるのです。

  日韓関係が竹島問題などで決定的にこじれた場合、韓国としては「では原発を攻撃させていただく」と宣言さえすればそれですべては終わるのです。それほどこの玄武3Cはすごい威力を持つのです。アメリカは日本と安保条約を締結しているのと同じように韓国とは韓米同盟を結んでいます。仮にアメリカが世界数箇所で同時に緊張関係に入った場合、日韓が対立しても中立を維持することは国際関係から見て当然あり得ることなのです。せいぜい仲介役を果たすのが限度でしょう。仲介をしたとしても日韓の軍事バランスは圧倒的に韓国に有利なわけですから、そのバランスにそって仲介案はつくられます。たとえば韓国人が主張している対馬の韓国領化です。

   「弾道ミサイルに比べ巡航ミサイルは低速だから撃墜してしまえばいいじゃないの」という人もいるでしょう。実はそれは日本の自衛隊の力を知らぬ人の世迷言なのです。米軍はイラクで数百発(数千発との報も)の巡航ミサイル「トマホーク」を発射しましたが、撃墜されたのはゼロでした。玄武3Cの実力を説明します。

   まず巡航ミサイルと弾道ミサイルの区別についてお話します。弾道ミサイルはテレビ中継で見られるように弾道(放物線)を描いて高速、高空を飛行します。すこし大きなものでは大気圏外(宇宙)を飛び目標に落下、爆発します。発射すればマッハ(音速)30以上で飛ぶので制御がむずかしく、落下地点の誤差が大きいのでそれをカバーするため核爆弾を搭載するのが一般的です。米露中などが持つ大陸間弾道弾や中距離ミサイルがそれで、北朝鮮の中距離ミサイルも弾道弾です。レーダーに捕捉されやすいのが欠点といえるでしょう。

  それに対し巡航ミサイルは飛行機と同じような翼をもち音速、亜音速の低速で地表、海面上すれすれを飛びます。地形に沿い超低空を飛行するため速度が遅くてもレーダーに捕まりにくく、迎撃しづらいのです。ジェットエンジンで燃料は安価なケロシン。最近はエンジン自体をセラミック化することが多く、誘導技術さえ確立できれば安あがりな量産型ミサイルといえます。地対地、地対艦、艦対艦、艦対地、潜(潜水艦)対地、空対地など種類は豊富で、今回韓国が開発した玄武3Cは地上発射型の地対地です。一部報道によれば韓国中部に配備されたようです。米軍のトマホークとほぼ同性能を有することは前回書きました。

2010年8月10日火曜日

ごめんなさい

ごめんなさい。

  昨日は韓国巡航ミサイルその2を出稿しなければなりませんでしたのに、出来ませんでした。夕方、会合があり、そのあと慰労会があったのです。当初は慰労会を早々切り上げて帰宅、巡航ミサイル問題を書くつもりでした。ところが仲間と会話が弾み、1杯が2杯になり2杯が3杯になるうちに原稿のことは完全に忘れ、帰宅したときはグデングデンに酔っ払っていました。それでもパソコンに向かおうとしたのですが、ニョウボ殿に叱られてダウン、結局出稿はできませんでした。要は自己コントロールが出来ていないのです。まことにごめんなさい。

  おまけに10日ほど前からパソコンの処理速度が遅くなり、たとえば「あ」と打っても決定できるのは数分かかる始末。本日は対策としてリカバリーを考えていましたが、ウインドウズXPのSP2はセキュリティーサービスが既に終了していることが分かり、それが原因と勝手に自己判断。あわててSP3にバージョンアップを開始しました。ところが私のパソコンは既にSP3に格上げされていることが分かり???。そのうちセキュリティー対策ツールが古いことが判明、バージョンアップに取り掛かりました。ところがなぜかダウンロードは出来るのですがインストールが出来ません。それやこれやで4時間以上が経過、巡航ミサイルを書く時間的余裕がなくなりました。まことに申し訳ありません。私のパソコン技術が未熟なのが原因です。

   もうひとつおまけに11日は終日、山伏仕事でパソコンに向かう時間が捻出不能になりそうです。なんとか頑張りますが、出稿できないときはお叱りください。なんやかんやのお詫びばかりで平身低頭です。3日連続で読者の皆様にはご迷惑をかけるのはなんとか避けたいのですが、よろしくお願い申し上げます。

    合掌  清雅坊

2010年8月8日日曜日

玄武3C、日本を狙う

◆韓国、日本原発を狙う巡航ミサイルを配備 その1

   7月17日付の朝鮮日報、中央日報など韓国メディアの報道によりますと、韓国軍は射程1500キロメートルの地対地巡航ミサイル「玄武3C」を開発し、年内に実戦配備することが分かりました(既に配備済みとの報道も)。「玄武3C」は設定された進路、目標に自らを誘導する慣性航法装置(INS)と、衛星からの電波で固定目標へ誘導する衛星航法装置(GPS)を結合しており、イラク戦争で威力を発揮した米軍の「トマホーク」級の攻撃が可能だといいます。

  射程距離は1500キロメートルと朝鮮半島を大幅に超える長距離で、日本列島全体を攻撃範囲に納めました。中国の北京(ソウルから950キロメートル)、ロシアのウラジオストク(同750キロメートル)だけでなく日本の東京(同1160キロメートル)もすっぽりと射程に入ります。記者はこれまで実戦配備に対する政府、与党、マスコミなどの反応を注視してきましたが、読売新聞など一部マスコミが事実関係を報じただけで、対応策らしきものは何ら出てきませんでした。記者は2006年秋にインターネット新聞「オーマイニュース」などで「玄武3C」の前段となる「玄武3B」の配備の事実を指摘するとともに「玄武3C」の開発が進行中だと対策を訴えました。しかし政府、与党ともそれへの対応はまったくなく、マスコミも無関心でした。この「◆韓国、長距離巡航ミサイルを配備へ」 の記事では「玄武3C」配備の問題点を改めて指摘したいと思います。


 韓国がこれまで実戦配備していた地対地巡航ミサイルは、射程距離500kmの「玄武3A」、同1000kmの「玄武3B」の2種類で、それ以前に配備していた短距離ミサイルは廃棄されていると思われます。「玄武3B」は韓国東岸に発射基地を置くと北海道と東北の太平洋側を除く日本列島のすべての原子力発電所と東京を射程に収めます。韓国西岸に配備すれば北京、上海など中国沿岸部が射程に入ります。対北朝鮮への配備としては過剰な射程距離で、極東の軍事バランスに大きな影響を与えました。

  今回の韓国の射程1500キロメートルの巡航ミサイル実戦配備は、米国、ロシアに続き世界で3番目となります(一部報道によりますとイスラエルも所持している可能性があります)。問題点は玄武3Cが韓国の主力敵である北朝鮮を狙ったものではない、ということです。北朝鮮に対しては従来の射程1000キロメートル級の玄武3Bで十分であり、たとえ朝鮮半島最南端に玄武3Bを配置しても北朝鮮全土を射程に収める事ができます。つまり玄武3Cの照準は日本、中国、ロシアにある、ということです。玄武3Cに狙われた日本として黙っていてよいものでしょうか。

2010年8月6日金曜日

お休みさせてください

  6日の全国最高気温は私の住む鳥取市の38.4度でした。その超暑さのなか、屋外のそれも重労働を余儀なくされました。抹茶、玉露、紅茶、スポーツ飲料などをたて続けに飲みましたが、疲労感は極めつけの厳しさ。このままでは熱中症になる、と冷房の効いたスーパーに飛び込みましたが、イスに座ってしばらく動きがとれないほど。シャツは真っ白に塩をふいていました。こんな殺人的な暑さのなか、屋外で重労働をさせられるのは私の因縁が悪いから、とあきらめつつ水風呂に飛び込むとその気持ちのよさはまた格別、そのまま水風呂の中で居眠り状態となり、ハッと気づいて飛び出す始末。

  そいうわけで、とても原稿を書ける体力がありません。今日の講座はお休みにさせてください。明7日(土曜日)も朝から屋外作業があります。夕方からは慰労の一杯飲みが控えています。申し訳ありませんが7日も勘弁してください。8日(日)は頑張ります。熱中症にはお互い、気を付けましょうね。

      清雅坊   合掌

2010年8月5日木曜日

原住民に国境自由通行権を

  ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その7

   ロシアはモンゴル国に対してはモンゴル族から奪ったブリヤート共和国とその周辺地域を返還すべきでしょう。また中国に働きかけて内モンゴル自治区をモンゴル国に統一、合併するよう外交交渉を開始すべきです。ただ現在ではブリヤート共和国はモンゴル系諸族よりロシア人の方が人口が多くなってしまい、単純に返還することは不可能です。また内モンゴルについても中国政府の漢族移住政策のため、モンゴル人17%に対し漢族が80%以上を占めているのが現状です。


  これに対し一案としてモンゴル人、ダウール族、エヴェンキ族、オロチョン族、回族・満洲人など原住民にはモンゴル国、内モンゴル自治区、ブリヤート共和国の各国境間自由通行権、自由貿易権を与え、経済的基盤を保証することはどうでしょう。原住民以外にはもちろんこの権利は与えません。中国自身も内モンゴルをモンゴル族から奪った経緯があり、ロシアと同等の原住民優遇策を講じることが必要なのです。これには3国政府と関係住民の協議が必要です。そしてモンゴルに圧制を強いたことをわびるモニュメントをウランバードル市内、ブリヤート共和国、内モンゴルに建設するのが民族和解の本筋となるでしょう。

  ◇狩猟、漁労の独占権を


  またロシアはシベリア原住民に対しては狩猟、漁労の独占権を与え、ロシア人が行っている森林伐採、鉱山採掘について一定割合で補償金を支払うのです。高等教育機関の原住民入学枠を設定し、無料で進学を可能とします。さらに自治体の名誉的な長を実権のない一種の名誉職として先住民族から選ぶのです。名誉的な長の名称は王であってもいいし、汗でもいいし、現地の実情に合わせればいいのです。そして本物の共和国大統領、州知事、各級議会議長、各級裁判所裁判長などの任命式を執り行う権限を与えるのです。


   このようにすればロシアに対するアジア諸民族からの怨念も薄れます。それが第2次世界大戦後にシベリアから撤退しなかったロシアのせめてもの詫び状となるのです。もちろん、以上のことは簡単には実現不可能です。アメリカだって先住民族のインディアンに補償らしきものをしていませんし、おわびもしていません。でもアジア人としてこれらのことをロシアに要求し続けるべきなのですj。そしてそれに対し少しでも誠意を見せるのがロシア人としての努めではないのでしょうか。


   以上、ロシア人に対して厳しいことを書きましたが、実は私自身はロシアびいきなのです。高校2年生の夏休み、学校図書館から借りたドストエフスキーの「罪と罰」をひと夏かかって読みおえました。よく分からぬながらもロシア人の根太さと人への愛、神への思いを知りましたし、熱中した学生演劇ではスタニスラフスキーに傾倒。北村和夫が演ずるチェホフの「桜の園」ではその重厚さに圧倒されました。学生時代には歌声喫茶に流れる「モスクワ郊外の夕べ」「ステンカラージン」などロシア民謡の虜にもなっていました。


  そういう私だからこそロシアが対日参戦を反省し、アジアから奪ったものはアジアに返す努力をして欲しいと思うのです。中国など関係諸国、アジア諸民族とも現状を肯定するのでなく、アイデンティティに目覚めようではないですか。ロシアへの要求運動が国境を越えた高まりとなることを期待します。

                                      この稿終わり

2010年8月4日水曜日

満蒙人のシベリア移住を

 ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その6

  シベリア占領に対する謝罪と補償をロシアはどう実現するか、これを考えてみたいと思います。中国に対しては今となっては外満州を返還するわけにはいかないでしょうから、せめてロシアと中国の共同管理に置かれている大ウスリー島(中国名:黒瞎子島・アムール川とウスリー川の合流点にある島で中ソ国境紛争の係争地となった)を中国に帰すべきでしょう。同時に外満州を奪ったことを謝罪する巨大な石碑を適当な場所に設置すべきです。それはあのアムールスキーの巨像より大きくしなくてはいけませんね。それと同時に満州人(女真人・清人)、モンゴル人、ツングース系諸民族に対しては国籍を問わずシベリア入植を原則無制限に認めることです。

 ◇減少する白人人口◇

  実はシベリアにおけるロシア人(白人)の人口は急速に減っているのです。地図上には名前が残っていても無人集落が激増しています。ロシア人は極寒に強いようでも元々はドン川流域の暖かい麦作地帯の出身で、南方に憧れています。共産政権時代と違い定年退職するとロシア南部に移住する人が増えています。それにも増して産児制限が自由に行われていることから少子化がどんどん進み、白人人口が減っています。資本主義の導入で、職業選択の自由、居住地選択の自由が生まれたところから職の少ないシベリアから工業化が進展しつつあるヨーロッパロシアに移住する若い人が増えています。何よりも共産政権時代はシベリアは割り増し賃金が払われていたのですが、今はウラル山脈の東と西では同一賃金化が進んでいます。にもかかわらず物価は輸送費のかかるシベリアの方が高いのが現状です。


  それどころか工業化が進むヨーロッパロシアの方が賃金が高くなりつつあります。トヨタ自動車が進出したのも日本に近く部品供給の楽な沿海州でなくて、工業集積が進みつつあるモスクワ郊外でした。シベリアでは居住者は公務員とその家族だけ、という町が増えつつあるそうです。つまり軍人、警察官(国境警備隊など)、測候所職員とその家族という町です。白人人口が減るのも当然といえましょう。

  ◇活力失う満蒙民族◇

  こうした空洞化したシベリアに中国、モンゴルなどからの移住者を認めるべきなのです。もちろんそれには漢族、朝鮮人などもともとシベリアに住んでいなかった民族は入れる必要はありません。新植民者の新国籍はロシアでもよく出身国でもよく、場合によっては二重国籍を認めても構いません。要は元の”住民“が帰れるようにすればいいのです。それが被圧迫民族に対する心理上の謝罪といえるでしょう。ロシア人がいなくなったところに帰るのですからロシアとしての痛みも少ないはずです。

  しかしこの案は現実的には成り立たないのかもしれません。それは移住すべき満州人、モンゴル人、ツングース系諸民族が活力を失い、彼ら自身も人口が減少しているのです。清帝国を築いたあの満州人でさえ、文化的側面を残した満州人はわずか数千人との指摘もあります。これではとても新植民地形成は成り立ちません。ではどうすればいいのでしょう。名目的なものでいいですから満州人などの移住を認めるべきなのです。こうすれば心理的にも敵対感が薄れていくでしょう。


  ロシア政府としてもこの案はロシア全体の人口減を食い止める絶好の案なのです。もっともロシア政府内部に「ロシアは白人国家でなければならない」という合意があるなら別ですが、ロシアは建前上「民族差別はしない」ということになっているはずです。名目的な案ならロシアしても受け入れやすいでしょう。ロシア政府の英断を求めたいものです。最終目標は民族間の敵対意識消滅にあるのですから。

2010年8月3日火曜日

政治犯でシベリア開発

  ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その5

  ロシアがアジアから撤退しない理由。それは「渡すべき相手がいないからだ」といいます。征服された諸汗国の後継となるべく実体は現在ではまったく存在しませんし、原住民の数が極めて少ないのです。アムール川沿いに住むナナイ人も総数が1万2000人くらい。これはロシア・ソ連が原住民を抑圧し続けた結果と性病、天然痘など各種の病気を持ち込んだため大幅に人口が減少したといわれます。かつて汗国を打ち立てたツングース、モンゴル系の人々は国を確立するだけの人口が今やないのです。


 ◇肉体労働を実践したロシア人◇

  シベリアに進出したロシア人の特徴は自ら肉体労働を実践したことにあります。アジア、アフリカに殖民した米英仏蘭のやり方はプランテーション(先住民や隷属した有色人種などの安価な労働力を使って単一作物を大量に栽培する大規模農園)経営を行い、自らは肉体労働をしなかったのです。ところがロシア人は森林伐採でも農場開墾でも自ら肉体労働に従事、原住民を奴隷化することはしませんでした。原住民には代わりに毛皮税を課しました。奴隷とするより毛皮を納めさせた方が収益が上がったのです。原住民は自らが着る毛皮も無くなるなど苦しみましたが、自由のある方が民族の誇りを保てました。


  しかしそれでは労働力が足りません。労働力を補うためにロシアもソ連も大量の囚人、特に政治犯を送り込みました。囚人を得るために政治犯を作った、といえるくらい大量の政治犯を送り込んだのです。いわばシベリアは囚人が切り開いた土地ともいえるのです。その囚人は服役後、郷里に帰る術もなく現地に居つきました。それだけにロシア人はシベリアへの愛着が強く、米英仏蘭のように植民地から撤退する発想は皆無に等しかったのです。

   ◇奪い取った領土の返還を◇

  ではロシアは迷惑をかけたアジア諸民族に対してどうすればいいのでしょう。18世紀以前はともかく近代に入って奪った土地は返還すべきでしょう。日本に対しては千島諸島、歯舞色丹を樺太・千島交換条約の精神に戻って返還することです。代わりに日本は南樺太に対する主権は放棄します。終戦後、不法抑留した日本人軍民と財産に対して補償します。これは金融不安下とはいえ石油景気にわく現在しか出来ない事業です。資金がないなら石油。天然ガスなどで物納すれば済むことです。そして日本とロシアの両国に、不法に強制抑留したことを詫びるモニュメントを建立することです。

  明日は植民地を放棄しない代わりに中国、モンゴル、シベリア原住民に対する謝罪と補償について書きますが、これはこれまでどなたも発表したことがない画期的な提案です。それだけにロシアとしてはとうてい受け入れることのできないものでしょうが、ロシアは大国としての度量を示すべきだと思います。明日をお楽しみにしてください。

2010年8月2日月曜日

侵略を誇る巨大な彫像

 ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その4

   ロシアのシベリア遠征がロシア人にとっていかに誇らしいものであるかはハバロフスクの街を歩くと一目瞭然。街には遠征者の巨大な彫像があり、公共施設には肖像画が飾られています。アムール河畔の公園にはアムール以東を清から奪い取ったムラヴィヨフ・アムールスキーの巨像が中国に向かって立てられ、シベリア鉄道のハバロフスク駅にはコサック隊長のエロフエイ・ハバロフ像が街を見下ろしています。アムールスキーの像は街の中心部にあるレーニン像より巨大であることが印象的です。その分、シベリア遠征にかけるロシア人の意気込みを感じました。レーニンよりもアムールスキーの方がここでは偉大なのです。アムールスキーの肖像画は私が訪れたレストランにも飾ってありまた。ロシア人にとってシベリア征服は当然のことで、そこにあった諸汗国やタタール、モンゴル、女真、ナナイなど先住民族への配慮はまったく感じられません。

  ◇街中心部は白人のみ◇

   ロシアでは人種差別はない、といいながらハバロフスク中心部ではアジア系の人々の姿はまったくといっていいほど見受けられませんでした。街の重要部分を白人であるロシア人が占拠している感じで、ボーイなど比較的給与が低い職種も白人が占めていました。タタールなどアジア系諸民族は街の外に追い払われているのでしょうか?

  その白人ばかりの街には主だったところにミグ27、機種は不明ですが大型ヘリコプター、T34戦車など戦中戦後の兵器が飾ってありました。軍事博物館に行くと満州侵攻に使ったと思われる各種重砲や戦車が中庭にずらり。それらを除いて街中では軍事色はあまり感じられませんでしたが、極東軍管区本部が置かれている街でもあり、民間空港ですら写真禁止となっていました。

  ロシア人の極東制覇の意識は非常に高いものがあります。日本海の軍港都市ウラジオストックの意味はロシア語で「東を征服せよ」。時流に合わせて街の名前を変えるのが好きなロシア人はこの街の名前だけは変えようとしません。軍港都市ということを考えると東とはもちろん日本のことです。

  ◇占拠し続ける植民地◇

  さてそのロシア・ソ連はこうして得たシベリアという植民地を第2次世界大戦後、アジア人に返えしませんでした。敗戦国の日独伊をはじめ戦勝国の米英仏蘭がアジア、アフリカからすべて撤退したにも関わらずにです。それどころか日本から奪った南樺太、千島諸島、歯舞色丹に居座り続けています。さいわいソ連軍がいったん占領した満州、北朝鮮はそれぞれの地に共産党政権が誕生したことから撤退しました。ただ日本が現地に営々と築き上げた鉄鋼、機械などの基幹生産設備は根こそぎソ連に持ち帰り、現地共産党政権には渡しませんでした。現地共産党政権には持ち去ることができない炭鉱、鉱山、社会的インフラと個人資産を引き渡したのです。個々のソ連兵士は日本人住宅に銃を構えて侵入、時計、宝石、お金、毛皮製品など個人財産を強盗同然に奪い去りました。それらへの補償はまったくありません。

2010年8月1日日曜日

モンゴルを巧みに分割占領

   ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その3


  ロシアはモンゴル帝国時代にロシアを支配していたモンゴルに対しては慎重な構えを見せました。当時、モンゴルは中国と一部対峙しており、半独立的な立場でした。これを利用してロシアは中国からのモンゴルの一部独立を支援しました。しかし全モンゴル完全独立には組せず、中国には内蒙古を残したのです。その反面、モンゴルの支配地だった現在のブリヤート共和国の土地をロシア領に編入してしまったのです。たくみにモンゴルを分割し、勢力を割くという方法は成功。このためモンゴル諸族はモンゴル国、中国・内モンゴル自治区、ロシア・ブリヤート共和国に分かれて住むことを強制され、さらにロシア、中国の本土にも相当数のモンゴル諸属が分散居住しています。この図式は現在も変わらず、ロシアのしたたかさが感じられます。

  ◇ロシアのアジア侵略を80年間食い止めた日本◇

  日本海に進出したロシアはもちろん日本ともぶつかり、千島、樺太の領有権をめぐり交渉が続けられた結果、平和裏に1875年5月7日、樺太・千島交換条約が結ばれました。ところが明治天皇陛下を「猿」と呼んでいたロシア・ニコライ2世は日本攻略を広言、1904年に両国の間に日露戦争が起こり、ロシアの東亜遠征では初の大敗北。それから約80年間はモンゴル制圧を除いてアジア侵略は休止状態となったのです。日本のアジア民族としての貢献がいかに大きいかが分かります。しかし第2次世界大戦で日本の敗北が決定的となると日ソ不可侵条約を無視して満州、樺太、千島、北朝鮮に突如侵攻、大戦での漁夫の利を得ました。

  同時に多くの日本人民間人を含めた捕虜約107万人を終戦後、強制連行。シベリアなどソ連各地に送り、過重労働を強いました。飢えと極寒のなかで多くの人が死亡、アメリカの研究者ウイリアム・ニンモ著「検証ーシベリア抑留」によれば、確認済みの死者は25万4千人、行方不明・推定死亡者は9万3千名で、事実上、約34万人の日本人が死亡したといいます。また1945年から1949年までの4年間だけで、ソ連での日本人捕虜の死亡者は、37万4041人にのぼるという調査結果もあります。ソ連・ロシアは日ソ国交回復後も樺太、千島は日本に返還せず、北海道の一部である歯舞色丹も占拠したままなのです。ロシアのアジア制圧は依然、続いているのです。


   前掲を除くここまでの主な参考資料

日経新聞各号
「伊庭貞剛物語」、木本正次 朝日ソノラマ、
「日韓2000年の真実」、名越二荒之助編著 国際企画
「木のいのち木のこころ(天)」、西岡常一 草思社
「シベリア先住民の歴史」 ジェームス・フォーシス 彩流社
「日本とロシア」 高野明 紀伊国屋書店
「「ロシアの風」 中村喜和 風行社
サンケイ新聞各号
サイト ロシア人のシベリア征服 出羽 弘
武蔵野市公式ホームページ
新潟市公式ホームページ

2010年7月31日土曜日

アジア諸民族国家を制覇

  ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その3



ロシア人たちはアムール河流域に来るまでユーラシア大陸のアジア諸民族国家、民族を次々制覇しています。まずイワン雷帝の時代(1580年代)にコサックの傭兵隊長エルマックの私兵集団がウラル山脈越えの交通路を切り開きました。付近はタタール人のシベリア汗国の支配地で、同国のクチュム汗の軍隊をうちやぶり、ロシア人によるシベリア支配の第一歩を印しました。その後クチュム汗は反撃してエルマックを敗死させましたが、ロシア人の侵攻は止まりませんでした。

  このあとロシアは南と東でモンゴル系・チュルク系の諸汗国(汗国とは東方系騎馬遊牧民族が打ち立てた国。族長を束ねた大族長が王となった)と次々戦って征服しました。銃と大砲という近代火器に弓矢と剣が主力兵器の諸汗国は太刀打ちできなかったのです。ロシアの圧制に対しツングース系などシベリアの原住民は、時には反乱を起こしたりしましたが、原住民自体が種族ごとに反目していたことと、南の強力なキルギーズやジユンガル国家よりもロシアのほうがより「文化的」であり、原住民にとって「よりまし」なものでありましたからロシアに服属した種族が多かったのです。

  特にジユンガル汗国が清によって滅ぼされたときには、多くの住民や豪族がみずから求めてロシアの保護下にはいり、その代償として毛皮税を支払ったのです。

  ◇清からアムール河以東を奪い取る◇

  ロシア人たちは、17世紀後半にアムール河流域に進出しましたが、当時新興の清朝と衝突しはじめました。これは彼らがシベリア征服を開始していらいはじめてぶつかった強力な相手でした。


  清とロシアとはその後、何回かの衝突、交渉を繰り返し、武力、特に火力に優れたロシアは巧みな外交力を背景に1858年から1860年のたった2年間にに愛琿条約、天津条約、北京条約を清に押し付け、一気にアムール川東岸(右岸)の外満州(東韃靼、沿海州)一帯を清から奪い取りました。アムール川から間宮海峡近くまで広大な土地をわずか数年のうちにロシアが自国領としたのです。それに前後してカムチャッカ半島、ユーラシア大陸東端、さらにはアラスカまで攻め入り、世界最大の領土保有国家となりました。ロシアの清朝圧迫はさらに続き19世紀末には三国干渉を利用し旅順、大連を含む遼東半島を租借、日露戦争の原因にもなったのです。

2010年7月30日金曜日

占領はたった5世代前

  
◆戦後、植民地を返さかったソ連 その2

  日本人捕虜集結の場となったハバロフスク(中国名・伯力)はロシア人が砦を設置してから今年が152年目。わずか5世代ほど前の話です。日本海、オホーツク海沿岸にロシア帝国が拠点を持つのはその少しあと。日本人の感覚では大昔からロシア人が対岸に住んでいた感じがしますが、実態はごく近年のことです。ネット情報によると2008年5月にはハバロフスク市開基150周年記念行事が盛大に行われ、中央部のレーニン広場とその周辺では約1万人が参加する祝賀パレードがありました、式典、祝賀コンサートに続いて夜はアムール川での船上祝賀会と花火大会が開かれ1日がかりのビックイベントだったといいます。駅前広場には花壇が作られ、銅像が整備されるなど記念施設も設けられたそうです。アジア人の土地を奪っておきながら祝賀行事をするとは現代日本人の常識から考えると違和感があります。

◇清の領土を占領

  なぜ白人であるロシア人がアジアにいるのでしょう。ハバロフスクはアムール河(中国名。黒竜江)の右岸中流域に位置し、ウスリー川との合流点のすぐ下流にあります。もともと満州人、ナナイ人などブリヤート系の人々が住んでおりました。満州人が建国した清の領土で、清は間宮海峡近くまでをその勢力圏とし、アムール河の東岸一帯は外満州と呼ばれていました。外満州に住んでいたのは日本人の祖先の一つともいわれるナナイ人、それに女真人(満州人)、モンゴル・ブリヤート系諸民族です。清は女真人保護政策のため、漢族の満州、外満州移住を厳しく禁止していました。

  ◇白人、ウラル山脈を越える

  ところが17世紀ごろから高価だった毛皮を得るためまずロシア人冒険家やいわゆるあぶれ者たちがウラル山脈を越えてシベリアに姿を見せはじめ、あとを追うようにして農牧畜民が移住、原住民から毛皮税を得るためコサック部隊が進出してきました。このハバロフスクにロシア政府が拠点を持ったのが1858年。アムール川を東進してきたロシア帝国部隊が砦(とりで)を築いたのです。17世紀のロシアの探検家エロフェイ・ハバロフにちなんでハバロフカと命名され、その後、ハバロフスクとなったのです。

2010年7月29日木曜日

怨念の町 ハバロフスク

    
   ◆戦後、植民地を返さかったソ連 その1


  「シベリア抑留」「満州最北端から釜山まで大撤退行」はいかがだったでしょうか。ソ連、ロシアという国がいかに日本に対し無慈悲で悪辣な行為をしてきたかがよく分かったと思います。この無慈悲さは日本だけでなく、中国、モンゴルをはじめシベリア先住民族に対しても同じようなことをしてきました。ロシア人の頭の中にはアジア人は猿と同じである、という考えが根付いているようです。

  ではそのロシア人がアジア人の土地であるはずの日本海対岸に住んでいるのか、その対岸も北海道・積丹半島からみればたった350キロしか離れていません。東京を基準して考えると東京・琵琶湖間という短さです。なぜそんなところに白人であるロシア人がいるのか、これについては記者の知る限り誰も問題提起せず、疑問符も投げかけておりません。ロシア人は昔から対岸に住んでいた、という感覚です。くどいようですがシベリアはアジア人の土地で、白人であるロシア人はヨーロッパが本来の居住地です。この異常さが近代アジアの発展に大きな矛盾を与えたのです。

  ◇アジアを侵略したロシア人◇

  ロシア人がなぜ対岸にいるのか、当たり前の話ですが、ロシアがアジアを侵略したからなのです。侵略し、植民地にしてしまいました。ところで第2次世界大戦参戦国は終戦後、戦勝国、敗戦国のいずれを問わず植民地から撤退。植民地は独立したのに対し、ロシアのみが殖民地を手放さなかったのです。なぜロシアのみが植民地を維持し続けるのか、それを解明するのが本稿の目的です。これが理解できれば立派な国際派日本人といえるでしょう。

  すこし昔になりますが記者は2007年7月上旬、4日間の日程でロシア・ハバロフスク市を訪問しました。シベリア抑留日本兵犠牲者の墓参と犠牲者の解脱供養法要参拝が目的だったのですが、ロシア・ソ連のシベリア侵略の実態をわずかながらも垣間見ることができました。

  ハバロフスクは東経135度の子午線上にあり、ちょうど兵庫県明石市の真北に当たります。ウラジオストックと並ぶシベリア最大の町で、人口約60万人。極東連邦管区が置かれ、軍事的には極東軍管区本部があります。いわばロシア連邦の極東支配の中心都市で、一時は軍管区が海軍である太平洋艦隊をも管轄していたこともあります。それだけ重要な都市といえます。第2次世界大戦末期の対日侵攻には総司令部的な役割を果たしました。終戦後は満州、北朝鮮、樺太、千島、歯舞色丹から集めた日本人軍人と民間人捕虜の集結地となり、ここからソ連全土に送り出して強制労働につかせました。極寒、飢え、重労働により日本人捕虜は次々死亡。さらに侵攻による戦死者、行方不明者、暴行され自決した女性などを含めれば日本人約32万人が死亡したといわれます。日本人にとっていわば怨念の町なのです。

2010年7月28日水曜日

朝鮮保安隊に捕まる

  ◆満州最北端から釜山まで大撤退行 その4

 平壌から北朝鮮・韓国との軍事境界線(38度線)まで約240キロ。南下途中にあった年寄り夫婦の朝鮮人民家で軍服と作業衣を交換、南下を続けましたが5人ともあっさり朝鮮保安隊に捕まり平壌駅まで連行されてしまいました。ソ連軍将校の前に突き出され「服を脱げ」と命令されます。フンドシ1枚になるとフンドシの注記は日本語。日本人とばれてしまい女学校の炭小屋らしきところに入れられてしまいました。フンドシまで交換することは思いよらなかったのです。監視のソ連兵の動きを観察していると20分ごとに見回りにきます。炭小屋だから脱出はそれほど難しくはないとにらんで、ソ連兵を逆監視しました。

   ◇ 脱走!南へ逃避行◇

  2日目、ソ連兵のすきを見て窓を音がせぬよう壊して5人とも脱走、南へ、南へと向かいました。時計も磁石もありませんから太陽の位置をみて南を判断。谷あり、山あり、ジャングルありの中を歩き続けました。まともな食料はなく谷水をすすりました。16-17日くらい歩いた時でしょうか、夜間、山上から下を見ると、河があり両岸とも車のライトが走っています。南岸のライトはジープらしきライトで米軍のものと判断。河を渡ることにしました。もちろん橋らしきものはなく、5人とも服を脱ぎ、間隔をおいて泳いで渡りはじめました。しかし東京出身の一人はソ連兵に発見され銃撃を受けました。そしてとうとう泳ぎつけませんでした。
 
   ◇ 米軍に遭遇、自己申告◇

  残された4人はやむを得ず歩き続け、現在は北朝鮮となっている開城を過ぎ、沙里院を通過、汶山で米軍の天幕を発見。近づくと米兵が5,6人いて、英語を話せる田口君が事情を話しました。パン、チョコレート、牛乳などをもらい、そのおいしさに感激。さらに米軍軍用車でソウルまで送ってもらったのです。平壌のソ連軍とは応対が大違いです。ソウル市内の日本寺院で5泊し、朝鮮総督府で引揚証明を発行してもらい、米軍列車で釜山港に到着。引揚船で九州・博多に上陸、山陰線経由で無事、郷里の鳥取に帰れたのは昭和20年10月25日。日本の秋は目にしみる美しさでした。

  ソ連侵攻当時の関東軍は約70万人。そのほとんどがシベリア抑留となり極寒と重労働、栄養失調から6万人とも30万人ともいわれる将兵が帰らぬ人となりました。一般邦人155万人のうち20万人が死亡し、満蒙開拓団約24万人のうち7万人前後が死んでいると想像されます。その結果、栄養失調にかかった多くの日本人孤児が発生、そのうち錦河省壷濾(コロ島)に集結できた孤児はたった300人余り。米軍の工作船で日本各地に送還されたといいます。ソ連軍の残虐な行為と暴民化した中国軍民の仕業で孤児のほとんどが行方布明になり、いまだにその消息は分かりません。日ソ戦争は日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、宣戦布告が日本側に伝わるのを阻止した上で侵攻したソ連に最大の責任があります。

  岩本さんらの中隊の相当数の人が日本に無事帰れたのも中隊長の「1歩でも日本に近いところへ」という判断があってのことです。軍命令に従って交戦、残留を続ければ無残な抑留兵となって飢えと寒さと重労働で多くの人が死んだでしょう。中隊長の英断は公式記録には残されていません。しかしそういう生き方をした人もあったということを我々は記憶に留めておきたいものです。

  「満州最北端から釜山まで大撤退行」終わり


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